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時代の寵児から、魂の国民画家へ。
人気画家の真の姿に迫る決定版!

ミュシャ―パリの華、スラヴの魂―

小野尚子/著 、本橋弥生/著 、阿部賢一/著 、鹿島茂/著

1,944円(税込)

本の仕様

発売日:2018/02/27

読み仮名 ミュシャパリノハナスラヴノタマシイ
シリーズ名 とんぼの本
装幀 アルフォンス・ミュシャ《スラヴ叙事詩》より「スラヴ式典礼の導入」部分 1912年 プラハ市立美術館蔵/カバー表、筒口直弘(新潮社写真部)/カバー表撮影、大野リサ/ブックデザイン、nakaban/シンボルマーク
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 158ページ
ISBN 978-4-10-602279-1
C-CODE 0371
定価 1,944円

ベル・エポックのパリで活躍したイラストレーターは、なぜ祖国で「時代遅れの巨大歴史画」に命を懸けたのか? スラヴ民族への祈りに満ちた畢生の大作《スラヴ叙事詩》全20点を完全掲載。最新知見も加えて、気鋭の研究者がその魅力を徹底的に解き明かす。パリ時代の傑作やチェコガイドも収録した、決定版作品集。

著者プロフィール

小野尚子 オノ・ナオコ

1981年山口県生まれ、兵庫県立美術館学芸員。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。国立国際美術館研究員補佐を経て、現職。2006〜2009年のカレル大学(チェコ)留学時には、《スラヴ叙事詩》をはじめとするチェコ時代のミュシャについて学ぶ。著書に『ミュシャのすべて』(角川新書、共著)。

本橋弥生 モトハシ・ヤヨイ

1974年東京都生まれ、国立新美術館主任研究員。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程中退。2003年の国立新美術館設立準備室の創設以来、同館に勤務。これまで担当した主な展覧会に、「スキン+ボーンズ――1980年代以降の建築とファッション」(2007年)、「MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事」(2016年)、「ミュシャ展」(2017年)など。

阿部賢一 アベ・ケンイチ

1972年東京都生まれ、東京大学准教授。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。立教大学准教授などを経て、現職。中東欧文学、比較文学を専門とするほか、翻訳の分野でも活躍。主な著書に『複数形のプラハ』(人文書院)、『カレル・タイゲポエジーの探求者』(水声社)、訳書に『約束』(イジー・クラトフヴィル著/河出書房新社)など。

鹿島茂 カシマ・シゲル

1949年横浜市生まれ、仏文学者。明治大学教授。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。共立女子大学教授などを経て、現職。専門は19世紀フランス文学。主な著作に『職業別パリ風俗』(白水社)、『オール・アバウト・セックス』(文春文庫)、『失われたパリの復元―バルザックの時代の街を歩く―』(新潮社)など。

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目次

読み解き《スラヴ叙事詩》
文=小野尚子
(1)原故郷のスラヴ民族
(2)ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭
(3)スラヴ式典礼の導入
(4)ブルガリア皇帝シメオン1世
(5)ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世
(6)東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン
(7)クロムニェジーシュのヤン・ミリーチ
(8)グルンヴァルトの戦いの後
(9)ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師
(10)クジーシュキでの集会
(11)ヴィートコフ山の戦いの後
(12)ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー
(13)フス派の王、ポジェブラディとクンシュタートのイジー
(14)ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛
(15)イヴァンチツェの兄弟団学校
(16)ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々
(17)聖アトス山
(18)スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い
(19)ロシアの農奴制廃止
(20)スラヴ民族の賛歌
Column
“スラヴ”とは何か?
国境を超えて広がる《スラヴ叙事詩》の舞台
《スラヴ叙事詩》から見えてくるミュシャ
解説=本橋弥生
ムハをめぐる複数の文脈
プラハ、スラヴ、そしてフリーメイソン
文=阿部賢一
パリのミュシャ
【傑作選】乱れ咲きのパリ時代
ミュシャが演出した“目覚めたつもりの夢”
文=鹿島茂
ざっくり分かるパリのミュシャ
【チェコガイド】ミュシャを追いかけて
アルフォンス・ミュシャ略年譜

インタビュー/対談/エッセイ

《スラヴ叙事詩》を巡る旅

小野尚子

 私が初めてミュシャの《スラヴ叙事詩》と対面したのは、2005年のことだった。当時大学院生だった私は、この知られざる名作を直に見たいと思い、初めてチェコを訪れた。
 この時《スラヴ叙事詩》はまだ、モラヴィア南部の小さな町モラフスキー・クルムロフにあったが、日本で情報を集めようにも限りがあり、まだチェコ語を話すこともできない一学生にはなかなか難易度の高い旅行だった。日本からチェコへは直行便がないため、オーストリアで小型のプロペラ機に乗り換えてプラハに入る。それから電車で3時間以上をかけて最寄駅まで向かい、さらにバスに揺られること約10分。ようやく作品が展示されていた美術館が見えた時には、心底ほっとしたものだ。これほど「奥地」にあるものだから客足もまばらで、作品をほぼ独り占めできるような環境だった。この12年後に「極東」の日本で全20点が大々的にお披露目され、約66万人の人々の目に触れるなど、どうして想像できただろう。
 これが、《スラヴ叙事詩》を巡る私の旅の始まりだった。作品のことを知るためにはミュシャの足跡を追わなければならないし、作品に描かれた土地のことも調べなければならない。その後プラハのカレル大学に留学してからも、プラハやパリ、ウィーンの図書館に足を運び、ミュシャが生きた時代の新聞や雑誌に片っぱしから当たった。その多くはマイクロフィルムに収められていたため、少しずつ出してきてもらっては目を通す。いつの間にか、画面いっぱいに並ぶ言葉の中から“Mucha”を見つけることが得意になってしまった。また、ドイツやオランダ、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、セルビアなど、《スラヴ叙事詩》の舞台になった周辺諸国も訪れた。中でもチェコからバスで27時間かけて訪れたブルガリアは思い出深い。もの静かで慎み深いチェコ人とは異なり、人々が陽気で温かく、距離感がとても近いのだ。アルコール度数が40%以上もある食前酒ラキヤを飲み、ほとんどの食べ物にヨーグルトをかけ、それを大勢で楽しむ。常に笑顔と話声が絶えない彼らだが、一方でよく教会に入っては厳かに祈りを捧げるという敬虔な正教会の信者としての顔も見せていた。ソフィア大学の校舎の中に、国内で発掘されたマンモスの骨格標本が鎮座しているのを見た時には、どんなものでも取り込んでいく懐の深さを感じた。約100年前に南スラヴを訪れたミュシャも、こうした感銘を受けたのだろうか。
 本書で私は、《スラヴ叙事詩》全点の解説を担当したが、こうした現地調査で得た情報に加え、近年の研究で明らかになった知見や、昨年行われたミュシャ展で作品に再会した際に気付いた点も、積極的に盛り込んだ。まだまだ訪れるべき場所、集めるべき資料は残っており、ミュシャという人はどれほどやっかいな仕事を残してくれたのだろうと恨みがましく思うこともあるけれど、ミュシャを巡る旅の現時点での報告として読んで頂きたい。

(おの・なおこ 兵庫県立美術館学芸員)
波 2018年3月号より

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