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痛みと身体の心理学

藤見幸雄/著

1,430円(税込)

発売日:2004/05/16

  • 書籍
  • 電子書籍あり

痛みは、身体の見る夢。痛む身体は私たちに何を伝えようとしているのか――。

身体に感じる痛みを大切に味わうと知らなかった自分が見えてくる。それは人間関係とどういうかかわりがあるのか。病や死を前に、何が起きてくるのか。他者とのつながりから、老いと死の問題まで、身体と夢を手がかりに「心身の闇」と向き合うプロセス指向心理学の知恵。自分を深く知るためのセルフ・ワークも収録。

目次
プロローグ*身体症状や病が伝えること
第1章 身体と夢の不思議な関係
1 ドリームボディとは何か
 ◆セルフ・ワーク1 ドリームボディを体験する
2 身体の見る夢
 ◆セルフ・ワーク2 ドリームボディ瞑想法
3 POPのドリームボディ・ワーク──ダチョウの夢
4 身体の動きの意味
 ◆セルフ・ワーク3 ムーブメントのワーク
5 心と身体の共時性

第2章 痛みが教えてくれること
1 痛みの「創り手」と「犠牲者」
 ◆セルフ・ワーク4 夢=身体症状・病日記
2 身体症状という物語を生きる──「カエルの王さま」のハインリッヒ
3 「怒り」とつきあう
 ◆セルフ・ワーク5 怒りとつきあうためのワーク
4 光と影をあわせもつ陰陽のダイナミズム
 ◆セルフ・ワーク6 意識していない自分を知る

第3章 人間関係とドリームボディ
1 ドリーム・アップ──夢の力
2 夢身体から夢物体へ
 ◆セルフ・ワーク7 イマジナルな世界への誘い
3 アディクション(嗜癖・依存)
 ◆セルフ・ワーク8 やめられないこと、好きなこと
4子ども時代の夢
 ◆セルフ・ワーク9 人生のパターンを知る子どもの頃の夢
5 〈社会〉という身体──ワールド・ワーク

第4章 死のプロセスを生きる
1 神話的身体と個人的な神話
 ◆セルフ・ワーク10 永遠の身体を体験する
2 昏睡状態への働きかけ
 ◆セルフ・ワーク11 コーマ・ワークの方法
3 POPと死
 ◆セルフ・ワーク12 死のワーク

第5章 ワールド・ワークの体験
1 痛みの「創り手」と「犠牲者」
 ◆セルフ・ワーク4 夢=身体症状・病日記
2 身体症状という物語を生きる──「カエルの王さま」のハインリッヒ
3 「怒り」とつきあう
 ◆セルフ・ワーク5 怒りとつきあうためのワーク
4 光と影をあわせもつ陰陽のダイナミズム
 ◆セルフ・ワーク6 意識していない自分を知る

エピローグ*ドリームボディの知恵
参考文献

書誌情報

読み仮名 イタミトカラダノシンリガク
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 368ページ
ISBN 978-4-10-603538-8
C-CODE 0311
ジャンル 心理学、暮らし・健康・料理
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,430円
電子書籍 配信開始日 2019/07/19

インタビュー/対談/エッセイ

波 2004年6月号より プロセス指向心理学の知恵  藤見幸雄『痛みと身体の心理学』

藤見幸雄

 プロセス指向心理学で使われるドリームボディ(夢身体)という言葉がある。それは、医学が対象とする「物理的身体」ではなく、医学的身体に切り捨てられ異義を申し立てた「私」の身体感覚や身体経験を尊重する「主観的身体」でもない。ドリームボディは医学的身体は勿論、主観的身体をも超え出た「深層心理学的身体」である。
それは、「私」や「主観」を超えた身体、つまり「夢見る身体」である。夢は「私」が生み出したものであるにもかかわらず、そこに登場する怪物、悪魔、鳥、木、石……などを、私たちは自分のこととは考えない。それらは「他者」として現れてくる。したがって怪物、鳥、木、石などの意識や感覚をたどることはできない(と思っている)。私にとってそれは「未知の身体」だ。
それでは、具体的にはどんなふうに現れるのか。
ある小学校高学年の男子生徒が、不登校と頭痛を訴えてカウンセリングにやってきた。彼はこぶしで頭を叩きながら、登校時間になると頭痛がして、不安になるという。カウンセリングでその痛みを表現するために頭のかわりにクッションを叩いてもらうと、男の子は前日に見た夢で、大工が家をたてるために金づちをふるっていた場面を思いだしたと言う。クッションを叩く行為をカウンセリングで重ねて行っているうちに、何と彼は弱いサッカー部を建て直す、という目標を抱くようになり、学校に行くことができるようになったのである! 数ヶ月後には頭痛はウソのように消えてしまった。
この例では「頭痛」という症状は、医学モデルに基づいた身体の見方である。それは身体を「物」として見ている。それに対して「痛い」という感覚や不安という気持ちは、男の子の主観的身体経験である。「こぶしで頭を叩く」動作を行うことは、日常的な見方からすれば、自虐的行為と思われることだろう。しかしドリームボディに慣れた目には、その「痛み」を作り出している動作とともに、そこに、大工が金づちで釘を打ちつけている創造的活動の現れを見抜くのである。
心理療法では頭の痛みや不安という主観的体験をサポートしていく。この例の男の子は、カウンセラーが注意を促すまで、痛みを作り出していた行為に無自覚で、そこに主観的感覚を抱くことはなかった。そのとき彼の身体は頭痛という症状の中に、家やサッカー部を建て直す、という夢を見ていたのである!
本書ではそのような「夢身体」の知恵によるプロセス指向心理学の自己治癒過程を、豊富な臨床例とともに紹介している。
カウンセリングや心理療法、身体論に関心のある読者だけでなく「痛み」に悩んでいる人にも、読んでいただけたらうれしい。新しい自分に出会うきっかけにもなるのでは、と思う。

(ふじみ・ゆきお 臨床心理士)

担当編集者のひとこと

痛みと身体の心理学

「痛い」と思うと、私たちは、それを嫌なもの、だと思います。なくそう、と考えます。なのに、気がつくと、あえて痛いと感じるような動作を繰り返ししていたりします。痛さ、については他人に説明できませんし、自分でも測ることができません。考えてみたら、とても不思議な感覚です。 身体と心、両方にまたがって感じられる「痛み」をきっかけに、自分の身体に何が起こっているのかを考える。そうすると、それが、眠っている時に見る夢ともつながっていることがわかるんです。病気についても、その症状についても、同じように、ただ、なくしたいもの、と考えるのではなく、何かを伝えようとしている、と考えてみる——それが、プロセス指向心理学の考え方です。夢と症状はどんなふうにつながっているのか? それを自分で感じ、考えるためのセルフ・ワークも紹介して、気づいていない自分の内面に隠されたものを知るための手引きとなる本です。——頭痛もちのあなた、慢性的な痛みの症状を持っているあなた、その意味がわかると、痛みは消えて、新しい自分が見えてくるかもしれませんよ。

2016/04/27

著者プロフィール

藤見幸雄

フジミ・ユキオ

1961年生まれ。ニューヨーク州立大学人類学部卒業。トランスパーソナル心理学研究所に学び、修士課程修了。A・ミンデルが創始したプロセス指向心理学のプロセス・ワーカーの資格を取得。臨床心理士として、東京で心理面接室を開業。

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