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「自分の力」で小説を読む能力が身につく! 最良のテクスト読解入門。

学生と読む『三四郎』

石原千秋/著

1,296円(税込)

本の仕様

発売日:2006/03/17

読み仮名 ガクセイトヨムサンシロウ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-603561-6
C-CODE 0395
ジャンル 評論・文学研究、教育学
定価 1,296円

ある私大の新学期、文芸学部・石原教授の授業「近代国文学演習I」に十七人の学生が集まった。「いまどきの大学生」が漱石の『三四郎』を教科書にして、講義の受け方、文章の書き方、資料の収集など文学研究の基本を一から学んでいく。実際のレポートと辛口の採点結果を交えながら、テクスト論の実践が理解できる一年間の“物語”。

著者プロフィール

石原千秋 イシハラ・チアキ

1955年生まれ。成城大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程中退。東横学園女子短期大学助教授、成城大学文芸学部教授を経て、2017年5月現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。日本近代文学専攻。現代思想を武器に文学テキストを分析、時代状況ともリンクさせた“読み”を提出し注目される。著書に『秘伝 中学入試国語読解法』『学生と読む『三四郎』』『秘伝 大学受験の国語力』『漱石はどう読まれてきたか』(以上、新潮選書)、『近代という教養――文学が背負った課題』(筑摩選書)、『読者はどこにいるのか――書物の中の私たち』(河出ブックス)、『なぜ『三四郎』は悲恋に終わるのか――「誤配」で読み解く近代文学』(集英社新書)、『反転する漱石 増補新版』(青土社)、『漱石入門』(河出文庫)、『教養としての大学受験国語』(ちくま新書)などがある。編書に『生れて来た以上は、生きねばならぬ――漱石珠玉の言葉』(新潮文庫)など。

書評

波 2006年4月号より いまどきの『三四郎』たち  石原千秋「学生と読む『三四郎』」

長山靖生

 石原千秋といえばテクスト論者で、漱石研究の第一人者だ。それが学生たちと『三四郎』を読む。きっとすごく斬新で、面白い漱石論だろうと思って読みはじめたら、ひとあじ違う。なにしろ本書は、高等学校を卒業した三四郎が、東京に向かう列車のなかで居眠りをするところからではなくて、東京は成城の桜並木からはじまるのだ。
そうだった。石原先生は教育問題・国語教材のエキスパートでもあった。それにもちろん、大学で教鞭を執る現役の「先生」だ。しかもどうやら、辛口の先生らしい。その真面目な姿勢は誰かに似ている。はて、誰だろうと思ったら、夏目漱石だった。漱石は学生を鍛え上げることが、教師の職務だと考えていた。それにちゃんとついてくる学生が、当時はいた。いや、今でもいる。そのことを石原先生はわれわれに教えてくれる。厳しいことで有名な石原ゼミには、鍛えられることを求める若者たちが集う。「いまどきの若者は」なんていうのは、ただの大人の手抜きのいいわけなのだろう。ちゃんと向き合えば、今も昔も、大人も若者も、一人の人間としてしっかり生きている。少なくとも、そうありたいと願っている。
この本は、広田先生ならぬ石原先生という「偉大なる暗闇」が見つめたいまどきの、もうひとつの、そして永遠の『三四郎』たちの物語でもある。つまり石原先生に「読まれている」のは『三四郎』だけではなく、現代の大学生たちであり、大学という現場のあれこれであったりする。もっとも、ここにいるのは三四郎ばかりとは限らない。美禰子さんみたいな女子大生たちの青春の一齣もまた、鮮やかに活写されている。先生と学生たちが織りなす「学問」と「人生」の光景は、夏目漱石の時代、『三四郎』に描かれた「あの青春」と、本質的には変わっていない。
そういえば明治四十一年、『三四郎』の新聞連載に先立って、こんな予告が出された。
「田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入った三四郎が新しい空気に触れる、そうして同輩だの先輩だの若い女だのに接触して色々に動いてくる、手間はこの空気のうちにこれ等の人間を放すだけである、あとは人間が勝手に泳いで、自ら波瀾が出来るだろうと思う、そうこうしているうちに読者も作者もこの空気にかぶれて、これ等の人間を知る様になる事と信ずる、もしかぶれ甲斐のしない空気で、知り栄のしない人間であったら御互いに不運と諦めるより仕方がない、ただ尋常である、摩訶不思議は書けない」
そう。ここにも摩訶不思議なことは書かれていない。ただ魅力的な「尋常さ」があるだけだ。私はいつのまにか、『三四郎』と現代の若者たちの世界とが生き生きと解け合う重層的なテクストに呑み込まれる快感を堪能していた。

(ながやま・やすお 文芸評論家)

目次

はじめに
第一章 今年も新学期が始まった
第二章 国文学科のカリキュラム
第三章 最初の授業で申し渡すこと
第四章 まず文章を書く練習からはじめる
第五章 大学生が読む『三四郎』
第六章 夏休みには書店を回ろう
第七章 学生たちの秋
第八章 学生たちの『三四郎』
あとがき

担当編集者のひとこと

学生と読む『三四郎』

「小説に作家はいらない」
――こう考えると「漱石」が断然面白くなった!
S大学でのゼミを再現した、最良のテクスト読解入門。


「小説は作家によって書かれた」というのは自明なこと。たとえば、鴎外は『舞姫』を書きましたし、漱石は『坊っちゃん』という作品を執筆しました。
 しかし、だからといって「作家はなぜこのように書いたのか」という見方ばかりに縛られていては、小説の読解を自ら狭めることにならないでしょうか。もっと挑戦的な言い方をすると、そんな「作家の意図」によりかかった読み方は、果たして小説にとって「真実」なのでしょうか。もっと、「小説自体の世界」を楽しむ方法はないのでしょうか? ――このような問いから石原千秋先生は、授業を受けている学生のレポートに「作家には言及しないこと」というルールを課します。作品に書かれていることだけを頼りに、自分自身で見つけた解釈の方法で、小説を「読む」ことこそが、文学研究の基本ではないかと問い直すのです。この本は、そんな課題を負わされた学生たちが、厳しい先生の指導を一年間受けながら、文学研究のイロハを学んでいく「成長物語」。読みながら「テクスト論」の実践が理解できてしまう、生き生きとした講義録です。

2016/04/27

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