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あなたも思い込みに囚われている! さまざまな経済現象の「真実」を数字で読み解く。

日本はなぜ貧しい人が多いのか―「意外な事実」の経済学―

原田泰/著

1,296円(税込)

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発売日:2009/09/25

読み仮名 ニホンハナゼマズシイヒトガオオイノカイガイナジジツノケイザイガク
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 284ページ
ISBN 978-4-10-603648-4
C-CODE 0333
ジャンル 経済学・経済事情
定価 1,296円

日本の地方にはなぜ、豪邸街がないのか? 本当に北欧は日本より年金制度が充実しているのか? 子供が減ると国力も衰退するか? 世界金融危機の影響はなぜ日本で大きいのか? 経済政策、後期高齢者制度、少子化と人口減少、国際競争力、教育問題、年金制度についての通説や思い込みを、統計データと経済学的思考で「逆説的」に覆す。

著者プロフィール

原田泰 ハラダ・ユタカ

1950(昭和25)年東京生まれ。早稲田大学政経学部教授(2012年4月より)・東京財団上席研究員。1974年東京大学農学部卒。経済企画庁、財務省、大和総研などを経て現職。著書に『日本の失われた十年』『デフレはなぜ怖いのか』『日本国の原則』(石橋湛山賞受賞)など。

書評

波 2009年10月号より モデル化とデータの説得力

若田部昌澄

原田泰という名前は、『波』の愛読者にはまだなじみが薄いかもしれない。氏は多数のエコノミストが輩出した経済企画庁(現在の内閣府)出身で、民間に転じてからも健筆をふるう著名エコノミストの一人だ。かつて「企画庁の文豪」というニックネームを得たように、氏の著作は多数にのぼる。おそらく単著だけでも三十冊はくだらないのではないか。昨年は『日本国の原則』(日本経済新聞出版社)で石橋湛山賞を受賞している。
本書は原田経済学への入門書として適切である。原田経済学の魅力は第一に、経済学に支えられた旺盛な好奇心である。ざっとタイトルを眺めるだけでも、貧困、犯罪、教育、雇用、社会保障、少子化、景気、中国経済など実に多くの話題が取り上げられている。昔ながらの経済学に親しんだ人は、なぜエコノミストがかくも多彩なことに興味をもち発言できるのか、不思議に思うかもしれない。だが、原田氏が言うように経済学とは「社会のあらゆる事象をインセンティブの体系と捉え、それをモデル化し、統計的手法で分析する学問」なのである。そうした観点からはローマの劇作家テレンティウスの言葉ではないが、「人間に関わることなら何でも自分に無縁であるとは思わない」こととなる。経済学を押さえていることは強い。たとえば世の中の多くのことが「懐が寂しくなること」(景気低迷)で説明がつくし、少子化の原因も子どものコストという観点から読み解くことができる。
第二に、「意外な事実」を発見する上での統計数への著者のこだわりだ。よくぞここまでと思うくらいのこだわりの背景には、データによってこそ議論の質を高められるという著者の信念がある。本当は増えていない少年犯罪への対策を強化するのは税金の無駄である。教育についても思い込みから議論をするととんでもないことになる。日本では政策についてデータ・証拠に基づいた議論が少ないと氏は嘆く。このたび誕生した民主党政権にも、政策にデータ・証拠を取り入れる方向での変化を目指してもらいたいものだ。
そして第三に、ところどころにちりばめられた、ドキリとさせるような機知に富んだ小気味よい文章と語り口である。政党政治家は党利党略で動くのが当然、といった発言は時として警句風でもある。
読者は、本書のあそこのデータの説得力は十分なのか、別のところの議論は違う視点から検討した方がよいのではないか、という疑問を抱かれるかもしれない。あるいは原田氏の率直な物言いに反感をもつ方もおられるかもしれない。
だが、それでよいのである。もっとデータを、もっと理論を、と読者が望むとき、それはその人がすでに原田経済学の魅力にはまった証拠である。常識をなぞるだけの本は面白くもなんともない。本書が刺激に満ち、面白いことだけは保証できる。

(わかたべ・まさずみ 早稲田大学政治経済学術院教授)

目次

はじめに
第1章 日本は大丈夫なのか
1.日本の地方にはなぜ豪邸街がないのか
2.日本にはストライカーがいないのか
3.人口減少でサッカーも弱くなるのか
4.日本は投資しすぎなのか
5.日本の労働生産性は低下したのか
6.少年犯罪は増加しているのか
7.給食費を払わないほど日本人のモラルは低下しているのか
8.なぜ「新しい世代」ほど貯蓄率が高いのか
9.若年失業は構造問題なのか
10.日本の教育論議は、なぜ「信念の吐露」にすり替わるのか
11.なぜ教育が必要なのかを語らないのか
12.学力格差をどう克服するか
第2章 格差の何が問題なのか
1.世界はいつ不平等になったのか
2.格差問題の本質は何か
3.グローバリゼーションは格差をもたらすのか
4.「均等法格差」は生まれたのか
5.地域間の1人当たりの所得格差は拡大したのか
6.地域間の所得格差は拡大したのか
7.外車販売台数で地域格差を見ることができるか
8.日本の生活保護制度はどこが変なのか
9.日本はなぜ貧しい人が多いのか
第3章 人口減少は恐いのか
1.人口が減少したら1人当たりの豊かさは維持できないのか
2.成長のために人口増と就業者増のどちらが重要か
3.就業率の低下をくい止めたのは誰か
4.子供の方程式で何が分かるか
5.若年層の所得低下が出生率を低下させたのか
6.第1次大戦前、人口が増加する国ほど豊かになったのはなぜか
7.低成長、人口減少時代の年金はどうあるべきか
8.高齢者はいつ豊かになったのか
9.「高齢化で医療費増」は本当か
10.高齢者ほど負担する意志があるのはなぜか
11.増税分はどこに使うべきか
第4章 世界に開かれることは厄介なのか
1.中国のGDPは、本当はいくらなのか
2.なぜ中国は急速な成長ができるのか
3.中国は脅威なのか、お得意様なのか
4.中国の雇用はなぜ伸びないのか
5.円は安すぎるのか
6.経常黒字をため込むことは必ず損なのか
7.経常収支の黒字はどれだけ円高をもたらすのか
8.人口減少に輸入拡大で対応できるか
9.「国際競争力」はどれだけ生活レベルを高めるのか
第5章 経済の現状をどう見れば良いのか
1.世界金融危機の影響はなぜ日本で大きいのか
2.なぜ資本市場と銀行の両方が破壊されたのか
3.企業の利益は、なぜ2007年まで復活していたのか
4.「大停滞」の犯人は見つかったのか
5.1970年代に成長率はなぜ低下したのか
6.アメリカはニューエコノミーになっていたのか
7.19世紀の世界経済はなぜデフレになったのか
8.昭和恐慌の教訓は何か
9.アメリカの大恐慌を終わらせるのに世界大戦が必要だったか
第6章 政府と中央銀行は何をしたら良いのか
1.日銀総裁のパフォーマンスはその出身によるのか
2.日本銀行は何を目標としているのか
3.なぜ低金利が続いているのか
4.日本の物価はなぜ上がらないのか
5.資本注入は経済を救えるか
6.金融機関の破綻は負の乗数効果を持つのか
7.最後の日本人にとって国債とは何か
8.どの都知事が財政家だったのか
9.大阪府はなぜ財政再建できたのか
10.日本は本当に省エネ大国なのか
11.官民賃金格差は地域に何をもたらしたのか
12.離婚と地方の自立はどこが似ているのか
おわりに
初出一覧

担当編集者のひとこと

日本はなぜ貧しい人が多いのか―「意外な事実」の経済学―

大卒女子が出産・子育てすると、いくらかかるか? 人間の直感は鋭く真実を突くこともありますが、それだけでは間違った結論に至ってしまうことも多いのではないでしょうか。統計を見つめ数字をながめてみることで新たな観点を得られることも多いのです。
 たとえば、「大卒女子の出産・子育ての機会費用」を示したグラフがあります(下図)。「機会費用」とは、それをすることによって失うコストのこと、ここでは出産と子育てをすることによって、あきらめなければならない所得を示しています。22歳から働き始め28歳で結婚・出産と同時に退職すると、そこまでで1992万円の所得があります。しかし、2人出産し子育てに専念し、上の子供が6歳になる34歳で復職しパートタイマーとして60歳まで働いた場合、その後26年間で累計2700万の所得にしかなりません。一方、やめずに60歳まで勤め続けた場合は、出産・育児のために34歳まで専業主婦でいることで失う所得2735万と、就業を継続した場合の所得(2億1058万+2700万)を得ることができます。つまり、今の日本では、1人の子供を育てるのに1億1000万円以上かかっているのと同じなのです。
 少子化の原因として、将来への不安、晩婚化、生涯未婚率の増大などが語られていますが、賃金のカーブが右に上がっている(年功序列)社会では、仕事をやめて子育てすることが本当に割に合わないことがわかります。本書『日本はなぜ貧しい人が多いのか―「意外な事実」の経済学―』は、サブタイトルが示す通り、グラフや表=「意外な事実」で、我々を思い込みや通説から解放してくれます。




2016/04/27

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