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今こそ日本人に読まれるべき指導者論!

危機の指導者 チャーチル

冨田浩司/著

1,404円(税込)

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発売日:2011/09/22

読み仮名 キキノシドウシャチャーチル
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-603687-3
C-CODE 0323
ジャンル ノンフィクション、世界史
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,123円
電子書籍 配信開始日 2012/03/02

ヒットラーの攻勢の前に、絶体絶命の危機に陥った斜陽の老大国イギリス。その時、彼らが指導者に選んだのは、孤高の老政治家チャーチルだった。なぜ国民はチャーチルを支持したのか。なぜチャーチルは危機に打ち克つことができたのか。波乱万丈の生涯を鮮やかな筆致で追いながら、リーダーシップの本質に迫る力作評伝。

著者プロフィール

冨田浩司 トミタ・コウジ

1957年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。1981年に外務省に入省し、総合外交政策局安全保障政策課長、同局総務課長、在韓国日本大使館公使、在英国日本大使館公使を経て、2009年から北米局参事官に就任(日米安保関係等を担当)。英国には、研修留学(オックスフォード大学)と2回の大使館勤務で、計7年間滞在。

書評

波 2011年10月号より 外交官の描いたチャーチル

阿川尚之

米国の首都ワシントン市内、英国大使館わきの歩道にチャーチルの銅像が立つ。右足を大きく踏み出し、高く掲げた右手でVサインを示しながら、強い視線で遠くを見つめる。ワシントンに数度住んだ私は、この場所を車で何回も通り過ぎた。雨の日も雪の日も、銅像は微動だにせず立っていた。
冨田浩司氏の『危機の指導者 チャーチル』は、第二次大戦中に英国首相として対独戦を戦い勝利をもたらした、この特異で魅力ある人物の評伝である。著者自身が「書き尽くされた政治家」と認めるチャーチルを、多くの日本人は無意識のうちにある程度知っているように思いがちだ。しかし本書は最新の研究成果を踏まえ、少数の研究者と読書家以外にはあまり知られていない、青年、家庭人、政治家、軍事指導者、実務家、著述家・画家、最高指導者としての彼の生涯を多面的かつ平易に描いて新たな情報を提供する。そして読者自身に多くを考えさせる。青年チャーチルが、貴族としての人脈と美貌の母の影響力まで総動員し、地位と名声を得るためにいかに奮闘努力したか。過剰なまでの自信をもったこの野心家がもし自分のそばにいたら、相当閉口すると思う。
しかし様々な欠点があり、実際それがたたって何度か政治生命を断たれたかに見えたチャーチルを、第二次大戦で存亡の機を迎えた英国は必要とした。その勇気、信念、歴史観、楽観、決断力、実務能力、雄弁、ユーモアといった資質が危機にあたって一気に発揮され、国民は彼の指導のもと団結して戦う。チェンバレンが辞任した時、対抗馬のハリファックス卿がチャーチルに次の首相の座を譲り、この政治家を必ずしも評価していなかった国王ジョージ六世も同意する個所は、著者の指摘どおり、「英国の政治制度の強靭さ」を示す。
本書は著者の処女作であるが、それはこの本が新人の作であることを意味しない。チャーチルの首相就任直後、イタリアと交渉を行いドイツとの和平の可能性を探るかどうかをめぐり戦時内閣で激論になった際、チャーチルはあくまで妥協せず戦うことを主張し決断する。著者は双方の主張を詳細に分析し、この決断が逆境における英国民の強さへの信頼に基づいていたと結論づける。
こうした分析は責任ある外交官であれば常に行っているはずのものであり、著者は現代の日本が下さねばならない外交・安全保障上の重い決断をも意識しながらこの本を書いていると思う。英国民の粘り強さを過小評価してこの国を敵に回し、真珠湾攻撃の際チャーチルに「結局のところ我々は勝ったのだ」と言わせてしまった先輩たちの失敗をかみしめ、3・11以降の難局を思いながら。
冷静な分析を行いながらも、著者は明らかにチャーチルが好きである。そうでなければ外交官としてイギリス在勤中にこれだけの作品を書けない。同じくこの政治家の雄弁とユーモアを愛する者として、著者に大きな敬意を表したい。

(あがわ・なおゆき 慶應義塾大学教授)

目次

序にかえて
終の日の風景/危機の指導者チャーチル
第一章 生き急ぐ若者
運命観と野心/「将星」への確信と国政進出の夢/軍功を求めて/敗北と栄光/勇気、先見性、エネルギー
第二章 はしごと行列――チャーチルの政治観
チャーチルが背負った十字架/保守主義の流れの中で/体制擁護と国民福祉の両立/大英帝国への思い/議会制度への信頼/政治的遺産「チャーチル・コンセンサス」
第三章 パグ犬と子猫ちゃん――チャーチルの夫婦愛
血脈/出会いと結婚/政治家の妻として/家族の肖像/旅路の終わり
第四章 ダーダネルスの亡霊――軍事戦略家としてのチャーチル
チャーチル不信の淵源/作戦の背景/ガリポリ半島を確保せよ/暗転/作戦家としての限界/政治と戦略のはざまで
第五章 迫り来る嵐――チャーチルと歴史
歴史の創造者/回想録の周辺/軍事の失敗/外交の失敗/ミュンヘンの悲劇/二つの国家観
第六章 一九四〇年五月――運命の月
世界を変えた一ヶ月/激動の前夜/戦端開く/ノルウェー討議のドラマ/二分間の沈黙/ダンケルク/戦時閣議の攻防/非理の理
第七章 「即日実行」(Action This Day)――戦争指導者チャーチル
全局を総覧する/体制・人事・情報/地中海戦略/特別な関係/輝ける弁舌/戦後設計への取り組み/勝利の中の挫折
最終章 指導者とは
最後の内閣/危機の指導者像――三つの資質/人治の国で
あとがき

チャーチル年表

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

担当編集者のひとこと

今こそ日本人はチャーチルに学ぶべき

この本を読んで、私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、震災危機への対応に右往左往する菅直人前首相の姿でした。
 外務省の現役幹部である著者が5年の歳月を費やして書いた本書は、純然たるチャーチルの評伝であり、菅内閣や日本政治に対する論評は一言も書いてありません。
 それにもかかわらず、私が前首相の姿を思い浮かべ、「まさに未曾有の国難に向き合う現在の日本人のために書かれた本だ」と強く感じたのは、この本が、チャーチルの波乱万丈の政治人生を追うだけではなく、「危機におけるリーダーシップ」について普遍的かつ実際的な洞察を行っているからに他なりません。
「今さら、チャーチルの大時代な政治スタイルに学べなんて……」と疑問に感じる方もいるかもしれません。しかし、本書の議論は、現役官僚ならではのリアリズムに貫かれており、極めて今日的な内容です。いわゆる懐古趣味的な「強いリーダー」待望論とはまったく次元が異なりますので、ぜひご一読下さい。
「今こそ日本人はチャーチルに学ぶべき」――自信を持って、強くお薦め致します。

2016/04/27

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