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二大科学誌から問い直すニッポンの科学力!

科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか―

竹内薫/著

1,188円(税込)

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発売日:2011/12/22

読み仮名 カガクギライガニホンヲホロボスネイチャーサイエンスニナニヲマナブカ
シリーズ名 新潮選書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-603695-8
C-CODE 0340
ジャンル ノンフィクション、科学読み物
定価 1,188円
電子書籍 価格 950円
電子書籍 配信開始日 2012/06/29

なぜ米国が「科学の覇権」を握ったのか? 福島原発事故を世界の科学者はどう見ているのか? 一流科学者も嵌った捏造・盗用・擬似科学の罠とは? 世界に君臨する二大科学誌「ネイチャー」「サイエンス」を舞台に、科学者たちが繰り広げる熾烈な競争の現実から、なぜ科学力が日本の興亡の鍵を握るのかを読みとく。

著者プロフィール

竹内薫 タケウチ・カオル

1960(昭和35)年東京都生まれ。サイエンス作家。理学博士。東京大学教養学部、同理学部を卒業。カナダ・マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻)。科学や数学の案内人として活躍し、主な著書に『99・9%は仮説』『数学×思考=ざっくりと』などがある。

竹内薫オフィシャルサイト (外部リンク)

書評

科学誌から問う日本の科学リテラシー

村上陽一郎

 東京・世田谷の一角で高い放射線値が観測された時、専門家と称される方がメディアで、福島から雨で運ばれて、落ち葉などに濃縮された可能性があると、語っているのに一驚した。案の定、古い線源が見つかって、話は一段落したが、今の社会の放射線に対する姿勢は、いささか異様である。
 と思っていたところに、サイエンスライターとして名高い著者の最近作が刊行された。本書の最終章、第11章は、現代の風潮のなかでは、勇気が要る発言かもしれないが、原子力発電所の事故を巡る世論(パブリック・オピニオンではなく、ポピュラー・センチメント)を是正するものとして、貴重である。
 もっとも本書本来の目的は、他のところにある。イギリスで刊行され、科学界を席巻する最大の学術雑誌になった「ネイチャー」誌(N誌)と、アメリカの全米科学振興協会(AAAS)が刊行し、同じように全世界の科学者が論文を載せたいと願う「サイエンス」誌(S誌)とを、基本の座標軸として取り上げ、そこに現代科学史上の幾つかのトピックスを載せながら、科学への理解を深めようというのが、著者の壮大な目論見である。この二つの雑誌には共通するところと、異なるところがはっきりしている。第一に週刊誌であることは共通、N誌が商業ベースであるのに反して、S誌は(アメリカの)科学者共同体の手による刊行である。しかし両者とも、厳しいピア・レヴュー(同僚評価)によるレフェリー制度によって、論文掲載は非常な「狭き門」になっている。N誌は日本に支社を造り、独自の展開をしているが、S誌にはそのような動きはない。
 著者は、こうした両誌の成り立ちから筆を起こす。そして現在、どのような仕組みで雑誌の刊行が行われているか、という点を、筆者ならではのインサイド・レポート的な面も含めて、第3章までで伝えてくれる。
 第4章からは、現代科学史上の幾つかのトピックスが、両誌と絡めながら説明される。例えば、二重ラセンの発見を巡って、ひどい仕打ちを受けたR・フランクリンの問題、あるいは、ES細胞(胚性幹細胞)を巡って隣国で発生したデータ捏造問題など、どちらかと言えばスキャンダラスな話題が扱われる。特に後者は、N誌もS誌も、どちらも問題の論文を掲載する媒体になっている。また北朝鮮から送られた横田めぐみさんの遺骨と称されるもののDNA鑑定についても、N誌の議論も含めて、かなり踏み込んだ記述がある。
 これ以上内容を紹介する紙数がなくなったが、今日本社会にはびこっている科学不信が、根拠のないものであり、それは正されなければならない、という問題意識だけでなく、日本社会が科学リテラシーを高めるために考えるべきことを提案するという積極面も読み取れる好著である。

(むらかみ・よういちろう 科学史家・科学哲学者)
波 2012年1月号より

目次

はじめに
失われた科学――日本のお寒い科学事情
第I部 ネイチャーvs.サイエンス
第1章 ネイチャーとサイエンスの創刊
ワーズワースから始まったネイチャー/あの南方熊楠もネイチャーに寄稿/苦難の船出だったサイエンス/天皇陛下も寄稿されたサイエンス
第2章 戦争と科学誌
科学先進国ドイツとアインシュタイン/英米独走態勢へ(ピアレビュー制度の導入)/日本の科学誌
第3章 ネイチャーvs.サイエンス
現在のネイチャーとサイエンス/両誌の基本的なデータ/誌面内容/論文掲載をめぐるバトル/「生高物低」と「化高地低」/名物編集長vs.優等生編集長/ジャーナリズムvs.科学政策/日本での事業展開の差/サイエンスを支えるAAASの「良心」
第II部 科学誌の事件簿
第4章 二重らせんスキャンダル
『二重らせん』の女性蔑視/データ盗用と隠蔽工作/ネイチャーの編集長も騙された?
第5章 ES細胞スキャンダル
なぜ科学者は不正行為にはしるのか/黄禹錫元教授への判決/ネイチャーが鳴らした警鐘/第二の論文(2005年)の衝撃/沈んだ船/パブリッシュ・オア・ペリッシュ/崩れ去ったシナリオ/サイエンスは捏造を見抜けなかったのか
第6章 マリス博士と「遺骨」真贋問題
奇想天外な科学者/日本政府を揺るがしたネイチャーの論評/日本政府の「奇妙」な反応/権威を鵜呑みにするネット社会
第7章 擬似科学というグレーゾーン
擬似科学とは何か/ネイチャーに登場した擬似科学/個人的な擬似科学体験/「寛容の精神」
第III部 日本の科学を考える
第8章 「はやぶさ」で考える日英米の科学土壌
帰ってきた「はやぶさ」/ファラデー対グラッドストン/伝統としての科学/大衆文化としての科学/移民が科学を支えるアメリカ/日本のノーベル賞受賞率は低い/日本独自の科学を目指せ
第9章 科学における英語問題
絶滅する言語、増殖する言語/科学の世界の標準は英語/英語ができないとノーベル賞がもらえない?/湯川秀樹の恩恵/英語公用語化を進めるべきか
第10章 ノーベル賞vs.イグ・ノーベル賞
イグ・ノーベル賞とは?/2度のイグ・ノーベル賞に輝いた粘菌とは?/科学も文化に左右される/ノーベル賞の光と影/科学の本質はワクワクドキドキ感
第11章 原発事故と科学誌
阪神淡路大震災の1400倍のエネルギー/東京に放射能はやってこない/「原発をやめるべき」は正しいか/ネイチャーとサイエンスはどう報じたか/「想定できたはずの人災」は後出しジャンケン/「科学」をよりどころに考える
特別鼎談 科学の役割を問い直す(中川貴雄×中垣俊之×竹内薫)
科学者から見たネイチャーとサイエンス/粘菌の「知性」と最適化/赤外線で拓かれる新たな宇宙史/地球は大環境破壊から始まった/科学は役に立たないと言われると悔しい/他人事の科学/失敗から学ぶ/次世代エネルギーの可能性/科学の借りは科学で返す
おわりに

担当編集者のひとこと

「科学の存在意義」を学べる本

 硬軟自在の科学ガイド「日本の科学ジャーナリストの中で、最近流行りの宇宙論や量子論の意味を、数式レベルまで深く理解できているのは、じつは竹内薫ぐらいしかいない」――これはある科学者から聞いた話です。
 竹内さんと言えば、テレビでお笑いタレントを相手に軽妙なトークを披露したり、ねこ耳少女の萌え絵が表紙になっている不思議な科学本を書いたりと、どちらかと言うとエンターテインメント寄りのイメージが強いかも知れません。
 しかし、じつは東京大学の教養学部(科学史・科学哲学専攻)と理学部(物理学科)の両方を卒業し、さらにノーベル賞受賞者が9人も輩出している名門マギル大学で博士号(高エネルギー物理学)を取得した、元・一流科学者でもあるのです。
 そんな竹内さんに、世界の科学をリードする二大科学誌「ネイチャー」「サイエンス」を読み解いてもらいました。いずれも最先端の科学論文ばかりが並ぶ手ごわい雑誌ですが、竹内さんの硬軟自在のガイドのおかげで、エンターテインメントとして楽しみながら、深いレベルで「科学の存在意義」を学べる本となっております。
 原発問題で明らかになったように、いまや一般人もある程度の科学的見識が求められる時代です。「科学嫌い」のままでは、それこそ「日本を滅ぼす」ことにもなりかねません。ぜひ本書を入り口に「日本の科学のあるべき姿」を考えていただければ幸いです。

2016/04/27

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