ホーム > 書籍詳細:私の日本古代史(下)―『古事記』は偽書か――継体朝から律令国家成立まで―

「中国・朝鮮との関係を見つめ、記紀神話の敗者に寄りそう――弱い者の立場に立つ“上田史学”の集大成」梅原猛

私の日本古代史(下)―『古事記』は偽書か――継体朝から律令国家成立まで―

上田正昭/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2012/12/21

読み仮名 ワタシノニホンコダイシ2コジキハギショカケイタイチョウカラリツリョウコッカセイリツマデ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-603721-4
C-CODE 0321
ジャンル 日本史
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2013/06/28

古代史とは「日本」の深層を探ること――日本という国号はいつ成立したのか? 大王家はなぜ天皇へと変わったのか? 万世一系に断絶はなかったのか? そして最大の謎、『古事記』は果して偽書なのか? 縄文以前から国家としてのシステムが整う天武・持統朝まで、通史として俯瞰し見えてくる新たな歴史像!

著者プロフィール

上田正昭 ウエダ・マサアキ

(1927-2016)1927年兵庫県生まれ、歴史学者。京都大学文学部史学科卒業。京都大学教授、大阪女子大学(現大阪府立大)学長、島根県立古代出雲歴史博物館名誉館長などを歴任。東アジア全体を視野に入れた古代史研究で知られる。著書に『日本神話』(岩波書店)、『上田正昭著作集 全八巻』(角川書店)、『私の日本古代史 上下』(新潮社)など多数。2016年没。

書評

我も彼も生きるための「必生」の古代史

井上満郎

 日本史の、それも古代史というサブジェクトに沿う叙述が、社会的に果たしうる役割、つまりは読む人々にもたらすものとは何であろうか。千年とか千五百年とかも前に起きた出来事で、起こったことへの好奇心、つまりは自分で確かめることのできない事象を知ることができたという満足のほかには、そこから暮らしに役立つ具体的な何かを学べるというわけでもない。
 ではそれはただ過ぎ去ってしまった時間であり、我々とは無関係なのかというと、そうではない。著者が古代史研究に情熱を燃やし続けて現在にいたっている理由でもあるのだが、それは過ぎ去った古代を「生ける古代」として構築することである。ある意味楽でもある象牙の塔的世界に閉じこもることなく、得た成果の社会への還元をたえず目指して、本書は「列島文化のあけぼの」から「国家のシステムがととのう」八世紀ころまでを対象として叙述されている。たしかにこの時代ははるかなる古代ではあるが、それは「現在の日本国家のありようにつながっている」のであり、今の国家や社会の原点となっており、この時代を見極めることが現代・未来を築くためのエンジンになるという確信のもとでの執筆であるといえよう。
 叙述の態度は、極めて実直かつ公平で、根拠のない推測、いわゆるロマンなどとはもとより一切無縁である。それは著者の終始一貫する研究態度であるが、本書に則して例示すれば、まずは国際的環境への広く深い視野があろう。今や常識だが、先鞭をつけたのはまぎれもなく著者であった。本書でも朝鮮・韓国史や中国史の成果が正確に吸収されており、周到な眼差しが注がれている。尽きることのない飽くなき探究心と知識欲がそうさせるのであろうが、よくもここまで国内外の調査・研究情報に目を配り得たと思えるほどである。日本の古代は海外、特に東アジア世界との豊かな交流・交渉のもとで形成されてきたが、それがただ理屈のみでいわれるのでなく、実証によって語られている。珠玉の古代史といってよい。
 神話・伝承についても豊富な叙述がなされている。歴史研究者がともすれば避けがちなこの課題に著者が早くから取り組んだこともよく知られているが、それを史実の反映、あるいは逆に空想所産と単純に見るのでなく、透徹した史眼でもって神話・伝承と史実の行き交いの様相が分析される。
 ところで著者はまたこの度の戦争に大きな負債感を持ち、戦後沖縄について「いったい幾人が、その痛みをわが痛みとしてうけとめることができたか」と述べ、終戦時の「十九歳の虚脱と懐疑をスタートとして」、つまりはその克服から始まった歴史研究であることを正直に告白している。古代にけっして沈潜・耽溺することなく、たえず現在におけるその社会化に渾身の力を今もささげ続けている著者の、我も彼もが必ず生きようとする覚悟をこめた文字通りに「必生」の作品であろう。

(いのうえ・みつお 京都産業大学名誉教授)
波 2013年1月号より

目次

はじめの章 『古事記』は偽書か
偽書説とその検討/『万葉集』にも書かれたその存在/「勅語」、「誦習」、「撰録」/修史のプロセス/『日本書紀』のなりたち/藤原不比等の役割/『記』と『紀』の違い/異なる両書の受けとめられ方/『帝紀』と『旧辞』/天皇記と日本国の紀
第I部
第一章 王権の動揺
飯豊女帝は実在したか/伝承の差異/飯豊女王と角刺宮/近飛鳥の宮は大和ではない
第二章 継体新王朝の血脈
大悪大王とはだれか/血脈の矛盾/王統断絶の危機/継体大王の即位/なぜ河内で即位したのか/三種の神器はもと二種であった/朝鮮半島南部の情勢
第三章 大王家の重大事変
国造制の展開/筑紫君磐井の乱/辛亥の変/皇室ゆかりの武寧王陵の発掘成果/人物画像鏡銘の「男弟王」/本当の継体天皇陵はどの古墳か/北摂の三嶋
第II部
第一章 仏教の伝来
朝鮮三国と仏教/冊封体制と崇仏論争/受容の実相
第二章 欽明朝から推古朝へ
対外関係の変化/蘇我大臣の動向/組織の矛盾/大王家の軍事力と祭官層
第三章 飛鳥文化とその時代
崇峻暗殺と推古女帝の登場/廐戸皇子の実像/内政と外交/朝鮮三国との関係/斑鳩宮と「和」の文化/大和の飛鳥/飛鳥寺と四天王寺/法隆寺と葛野秦寺/播磨の斑鳩/渡来の僧たち/渡来系才伎の活躍
第III部
第一章 改新の前提
上宮王家の滅亡/第一回遣唐使/百済大寺の建立/乙巳の変
第二章 改新の政治
新政のはじまり/改新の詔/官人制度の整備と実権者/斉明朝の内実/蝦夷と遣唐使
第三章 天智朝の改革
百済の滅亡/白村江の大敗/甲子の宣と庚午年籍
第四章 律令国家への歩み
天智朝の意義/大津遷都/大王から天皇へ
第IV部
第一章 日本国の登場
壬申の乱/遣唐使と新羅使/浄御原宮の造営/日本国家の成立
第二章 天武朝の政治
富本の思想とその政策/『記』・『紀』の編纂/天つ社と国つ社/神統意識と官寺仏教
第三章 天つ罪・国つ罪と七夕の信仰
天つ罪と国つ罪/アマテラスの神格/七夕の信仰
第四章 律令と白鳳文化
飛鳥浄御原令と大宝律令/渡来の波と日本版中華思想/天武・持統朝の歴史的意義/白鳳文化の再検討
あとがき
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