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最前線だからこそ晒される脅威と苦難。だが、そこにも根を下す人々がいた――。

国境の人びと―再考・島国日本の肖像―

山田吉彦/著

1,404円(税込)

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発売日:2014/08/29

読み仮名 コッキョウノヒトビトサイコウシマグニニホンノショウゾウ
シリーズ名 新潮選書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 287ページ
ISBN 978-4-10-603754-2
C-CODE 0331
ジャンル 地理・地域研究
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,123円
電子書籍 配信開始日 2015/02/20

北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで、東は南鳥島から西は与那国まで、世界で六番目に広い「海」を持つ日本。その国境はすべて海の上にある。紛争の最前線たる北方領土、対馬、竹島、尖閣諸島をはじめ、九十九に上る国境離島のことごとくに足を運び、自らの目で確かめた著者が、そこで暮す“人”を通じて問い直す「この国のかたち」。

著者プロフィール

山田吉彦 ヤマダ・ヨシヒコ

1962年千葉県生まれ。学習院大学卒業。東海大学海洋学部教授。海上保安体制、現代海賊問題などに詳しい。著作に『日本の国境』、『海賊の掟』(新潮新書)、『海の政治経済学』(成山堂書店)、『日本は世界4位の海洋大国』(講談社+α新書)、『海洋資源大国 日本は「海」から再生できる』(海竜社)、『日本国境戦争』(ソフトバンク新書)、『驚いた! 知らなかった 日本国境の新事実』(じっぴコンパクト新書)などがある。

書評

波 2014年9月号より 国境で生きる人々を通して見た最前線リポート

足立倫行

著者は東海大学海洋研究所において、日本の国境や隣国との関係を研究している。
北は択捉島から南は沖ノ鳥島、東は小笠原諸島、西は与那国まで、日本の領域の境目となる離島を数多く訪れ、そのたびに「この国は国境で生きる人々により守られてきた」と実感した。本書は、そんな人々の生活を通して見た、現在の国境問題のリポートである。
当然、懸案の竹島や尖閣諸島(どちらも上陸できないので関連の島根県隠岐の島町や沖縄県石垣市)などが登場するが、意外な場所が「国境」として取り上げられている。
例えば、津軽海峡だ。狭いところで幅約二〇キロ、長さ約一三〇キロの海上交通の要衝であり、マグロやイカの好漁場でもある。この海域で近年外国のコンテナ船や貨物船の航行が急増している。地元の漁師は「危なくて漁もできねェ」と言い、青函フェリーの船長も、「大きな事故が起きる前に外航船を管理できる体制を」と訴える。
というのも、津軽海峡では海峡中央部を公海と定め、国家主権が及ばないからだ。ロシアの北極海航路の開設などで船舶通過数は増加の一途だが、公海のままでは分離通航帯の設置も速度規制もできない。著者は、日本漁船の生活の場を守るためにも、また安全保障上も、公海を廃止し領海幅を一二海里に拡大、海域管理を徹底すべきだとする。
あるいは、沖縄本島から東方へ約三六〇キロ離れた南大東島と北大東島。一般には、より南方に沖ノ鳥島があるので国境とは思われにくいが、広大な排他的経済水域の基点なので間違いなく「国境」だ。この二島が今、存亡の瀬戸際にある。
台風や塩害に抗して栽培できる作物はサトウキビしかなく、二千人足らずの人口の八五パーセントがサトウキビ関連で生計を立てている。ところが、TPP(環太平洋連携協定)による農産物輸入自由化の脅威。TPP導入で関税が撤廃されれば、日本のサトウキビ生産は消滅する。島民が言うように、「島には人が住まなくなる」のだ。
「国境」の島が無人になればどうなるか?
日本領の竹島は隠岐島の漁民が漁業基地として使っていたが、定住していなかったため、戦後の混乱期(一九五二年)に韓国に武力で奪われ、現在も占有されたままだ。日本領の尖閣諸島は、最盛時約二五〇人が居住しカツオ節工場で働いていたが、戦争の影響で一九四〇年に無人島化。しかし近海に海底油田の存在が確認されるや、一九七一年に台湾・中国が突然領有権を主張し始めた。
南北の大東島が無人島になれば、その広大な排他的経済水域を含め「他国に占領されてしまってもおかしくない」のである。
日本は世界で六番目に広い海域を所有する国だが、近隣諸国との間に海域と資源を巡り対立が生じている。「国境」の人々と共にどう対処すべきか? 著者の提言はどれも具体的だ。

(あだち・のりゆき ノンフィクション作家)

目次

はじめに――この国の「かたち」を知る試み
第一章 「紛争の現場」最前線 今、そこで何が起きているのか
狙われた美しき国境の島――尖閣諸島、「海洋保護区」への提言
韓国色に染まる青い海と緑の山――対馬「仏像盗難事件」の理由
福江島中国漁船団襲来事件――遣唐使の最後の寄港地、五島列島
竹島に最も近い漁師集落――隠岐と日本海の可能性
奪われた島々――北方領土返還「第三の道」
第二章 離島で生きる知恵 “周縁”だからこその独自な活力
世界遺産のボニンアイランズ――小笠原から日本の海を守る
最西端、絶海の孤島――与那国島を台湾との交流拠点に
サトウキビの島とTPP――大東諸島を無人島にさせないために
『古事記』にも描かれる国境の地――壱岐の漁業で日本の海を守る
第三章 忘れ去られし島々 “国のかたち”さえ変える過疎化の波
海上安全保障上最大の問題とは――海の要衝・奄美の末期的過疎
徐福も流れ着いたという中国の対岸――不便さが生んだ甑島の名酒
北朝鮮からの密入出国ルート――拉致海岸と「あばれ祭り」、能登
教科書選定騒動の裏に潜むもの――「多島行政区」竹富町の苦悩
第四章 国境の未来像 “外”に向かう新たな模索
海峡内に横たわる公海の存在――津軽海峡にある国境線
広大な海を持つ最南端の孤島――沖ノ鳥島の海洋権益を守れ
東シナ海の平和の鍵、日台漁業協定――尖閣周辺海域新展開
日本人に見せるための「虚構の島」――ロシアの切り札、国後島
終章 海外から日本の国境を見る

担当編集者のひとこと

国境の人びと―再考・島国日本の肖像―

脅威に晒される「国境」の今日的意味を問う「国境」、つまり「国の領域の境目」という概念はいつの時代から始まったものか、ご存知でしょうか? それは一七世紀のヨーロッパに遡ります。当時、ヨーロッパは全土にわたりカソリックとプロテスタントとの間で激しい宗教戦争が行なわれていました。いわゆる「三十年戦争」です。この戦争を終結するにあたり結ばれたのが、一六四八年のウエストファリア条約でした。この条約の締結国は、相互の領土を尊重し内政への干渉を行なわないことを約束し、「国家」としての単位が明確化されました。ここに初めて主権国家が誕生したのです。以降、主権国家は限界を定めた領域=領土を持つことになり、その領土としての国境線が引かれることになりました。人びとは紛争を収めるために領土を定め、国境を定めたということなのです。
 しかし近年、隣国の脅威を目の当たりにして、改めて私たちは自らの国境を顧みざるをえない状況にあります。沖縄県の尖閣諸島、島根県の竹島、あるいは北方領土……。陸上に境界を持つ国とは異なり、島国日本の国境はすべて海の上にあり、普段、国境などあまり意識する機会は多くはなかったのに、何とも皮肉なことです。ただ皮肉なことではありますが、私たちが今一度、日本という国の姿をきちんと捉えなおす、いい機会ともいえるのかもしれません。
 北は択捉島から南は沖ノ鳥島、東は南鳥島から西は与那国島まで、「世界四位の海洋大国・日本」には、国境離島の数が九十九にも上るとか。そして、そこにも多くの人びとが暮らし、社会や文化を築き上げてきた姿がありました。境界だからこそ晒される脅威と苦難、いったいそこではどのような人びとが、どんな風に生活しているのか――。本書は、国境離島のほとんどに足を運び、自らの目で確かめた著者が、“人”を通じて「この国のかたち」を問い直す試みです。

2016/04/27

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