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国益を守る世界、既得権益を守る日本。

反グローバリズムの克服―世界の経済政策に学ぶ―

八代尚宏/著

1,296円(税込)

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発売日:2014/10/24

読み仮名 ハングローバリズムノコクフクセカイノケイザイセイサクニマナブ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-603758-0
C-CODE 0333
ジャンル 経済学・経済事情
定価 1,296円
電子書籍 価格 1,037円
電子書籍 配信開始日 2015/04/17

「輸出は得、輸入は損」「日本企業は善、外国資本は悪」という反グローバリズムの誤解が、日本経済の再生を妨げている。非生産的な「既得権益」に固執するのではなく、大多数の国民の利益に資する「国益」を追求するには、どのような経済政策が必要なのか。各国の構造改革の事例から、グローバル時代を生き抜く戦略を考える。

著者プロフィール

八代尚宏 ヤシロ・ナオヒロ

1946年、大阪府生まれ。国際基督教大学客員教授・昭和女子大学特命教授。国際基督教大学教養学部、東京大学経済学部卒業。経済企画庁、OECD事務局、上智大学国際関係研究所教授、日本経済研究センター理事長等を経て、現職。メリーランド大学博士(経済学)。専門は労働経済学・日本経済論。主な著書に『現代日本の病理解明』(日経・経済図書文化賞)、『日本的雇用慣行の経済学』(石橋湛山賞)、『新自由主義の復権』など。

書評

波 2014年11月号より 「実学」にもとづく「公智」によって

清家篤

私たちは今大きな変化の時代を生きている。それは少子高齢化やIT革命など、人口や技術といった社会や経済を基本的に規定している部分の変化だ。その中で、経済の国際的相互依存性もますます深まる、国際化の進む時代である。
本書はそうした変化と国際化にどのように対処すべきかについて、明快な処方箋を示している。一つは経済のグローバル化を推進するということ、そしてもう一つはそのためにも、国内の規制緩和を徹底的に進めるということである。例えば、今大きな外交問題にもなっているTPPで言えば、それを早期に取り結ぶ。そして農業などは思い切った規制緩和によって高付加価値化を図り、国際競争力をつけることができる。
もちろんそうした方策については、国内で大きな反発もあるが、それらは、部分的な利益を反映したものであり、日本全体の利益を考えれば著者の示すシナリオが最善であるということを強調するのが、この本のタイトルの示すところでもある。
本書の魅力はそうした著者の主張が一貫した経済学の論理によって導かれているところだ。著者の経済学的な知見は、本文だけでなく数多くのコラムにおいても遺憾なく発揮されている。
ところで大きな変化と国際化ということでいえば、明治維新前後の日本もまたそうであった。封建の江戸時代に生まれ維新を経て明治を生きた同世代人を福澤諭吉は「恰も一身にして二生を経る」と表現したが、この時代はまた日本が二世紀以上の鎖国を解いた国際化の時代でもあった。
そのような大きな変化と国際化の時代には、過去の延長線上でものを考えたり、問題を解決することは難しくなる。そこで福澤は「学問」、とくに福澤自身が「サイヤンス」とルビをふった「実学」の大切さを説いた。事物を虚心坦懐に見て、それを論理と実証によって説明し、それに基づいて問題を解決するということである。
また福澤は、あらゆることにはプラスとマイナス、トレード・オフ(二律背反)の関係があり、その中でより重要なことを先に、そうでないことを後にする見識を「公智」と言って大切にした。その見識の基盤になるのが論理と実証による「実学」ということである。
現在の変化と国際化に対応する場合にもそれは大切な視点だ。新しいこと、あるいは海外の事例はなんでも良いというのは、これまでのもの、日本のものは何でも良いというのと同じく間違っている。何を変え、何を変えないかは、論理的、実証的に現状を理解し、その上で相対的に大切なことは何かを選び取るのでなければならない。
本書は著者に必ずしも賛成しない人にも、きちんとした論理と実証に基づく議論の共通土俵を提供してくれている。その意味で、著者の論に賛成の人にも、また反対の人にも必読の書であるといえると思う。

(せいけ・あつし 慶應義塾長)

目次

はじめに
序章 世界経済に何を学ぶか
3つの共通課題/巨大な市場経済の北米/欧州合衆国の夢は破れたか/東アジア経済の多様な発展/世界経済の現状から日本が学ぶもの
第1章 世界のなかの日本経済
日本経済と自由貿易/世界にはなぜ豊かな国と貧しい国があるか/自由貿易の利益とは/自由貿易は発展途上国にとって不利か/日米間の通商摩擦/TPPへの反対論の根拠とは?/包括的なWTO協定の意義/WTOの紛争処理機関としての役割/WTOと地域協定との関係/地球温暖化問題
(コラム1)自由貿易の利益の理論的な説明
(コラム2)市場経済のお手本となるプロ・サッカーの世界
第2章 世界最大の市場経済としての米国
巨大な米国市場/戦後の日米経済関係/「一人勝ち時代」の終わり/米国経済の長期停滞とレーガノミクス/1990年代の米国経済活性化/金融資本主義とバブルの崩壊/サブプライム・ローンとリーマン・ショック/先進国では最大の所得格差/グローバリゼーションの影響/所得再分配政策の役割/米国の医療保険改革の評価/米国の教育制度/NAFTAの効果/「健全な市場経済国」カナダとの対比/米国経済に何を学ぶべきか
(コラム3)米国はいつ日本への「つけ」を清算するのか?
(コラム4)日米雇用慣行の差の影響
(コラム5)金融資本主義は資本主義の末期症状か?
(コラム6)ティーパーティー(茶会運動)の役割
(コラム7)米国の南北戦争の原因は奴隷解放か?
第3章 通貨統合で矛盾が広がる欧州経済
「欧州合衆国」に向けて
1.欧州の市場統合
欧州経済の発展プロセス/欧州の共通農業政策
2.共通通貨の光と影
欧州通貨同盟の設立/通貨統合のコスト/現代のギリシャ悲劇/欧州安定メカニズム/通貨統合と政治統合の優先順位/イタリアの地域格差/共通通貨としての円
3.ドイツ経済の構造改革
一人勝ちのドイツ経済/社会保障改革/労働市場改革/資本市場改革
4.欧州統合と距離を保つ英国経済
大英帝国の没落
5.市場経済原則に基づくスウェーデンの福祉国家 
スウェーデン・モデル/米英型と独仏型の資本主義の違い/欧州統合から何を学ぶか
(コラム8)為替レートはゴルフのハンディキャップ
(コラム9)残業と労働生産性
(コラム10)シュレーダー首相と小泉首相
(コラム11)市場化テストによる官業の効率化
(コラム12)スコットランドの独立問題
第4章 成長する東アジア経済
世界の成長センター
1.東アジアの経済発展
連鎖的な経済発展/海外直接投資の役割/開かれた地域主義/東アジアの通貨危機/アジアの経済発展は幻か/ASEANの「中所得国の罠」/最大の課題としての人口の高齢化
2.中国の社会主義市場経済
世界第2位の経済大国/市場経済の3つの条件/中国の改革開放政策/国有企業改革と国家資本主義/都市と農村との経済格差/中国の少子・高齢化/中国経済の将来性
3.世界に開かれたシンガポール経済
「シンガポール株式会社」/地域金融センターの発展/自立型社会保障
4.アジアの一員としての豪州経済
日本と正反対の産業構造/ホーク政権の構造改革/財政再建の進展/医療制度改革
(コラム13)トウ小平の経済改革と「最後の社会主義国」の日本
終章 世界の構造改革から日本が学ぶもの
反グローバリズムの克服/共通通貨の限界/労働市場改革の重要性/所得格差拡大への対応/人口減少と高齢化への対応/構造改革への契機
おわりに
参考文献

担当編集者のひとこと

反グローバリズムの克服―世界の経済政策に学ぶ―

夏休みの宿題とグローバリズム 社内の会議で、本書のタイトルと内容を説明したところ、出席者の多くから「TPPなんてアメリカの陰謀だろ」「グローバル化のせいで日本はダメになったんだよ」などと強い拒否反応が出て、とても驚きました。普段はいくら企画を説明しても、ほとんど関心を示してもらえないのに(笑)、このテーマに限って、なぜここまで熱い反応が……?
 思うに、「グローバル化」というのは、日本人にとっては「夏休みの宿題」のようなものなのかも知れません。みんな、いつかはやらなきゃいけないと分かっているけど、出来ればやりたくないし、出来るだけ先延ばしにしたい。それなのに、いけ好かない先生や、優等生ぶった級友が、「先のことを考えて早くやった方がいい」などと理屈を述べるものだから、「ちゃんと宿題をやる奴なんか、ろくな大人にならないよ!」などと思わず逆切れしたくなる。今の日本人の心境は、大体そんな感じなのではないでしょうか(まあ、反グローバリズムの人は「全然違うよ!」と言うでしょうが……)。
 ともあれ、本書のセールスポイントの一つは、「グローバル化が国益に適う」という理屈を説くだけではなく、「嫌々ながら“宿題”をやってみたら、こんなに楽しい“夏休み”を過ごせるようになりました」という実例がちゃんと示されていることです。一昔前まで「欧州の病人」と揶揄されていたドイツは、なぜV字回復を達成できたのか。「アメリカの陰謀」にからめとられたはずのカナダが、なぜ国民皆保険と健全財政の下で繁栄を謳歌しているのか。他国の構造改革の事例から、グローバル化のメリットとデメリットについて冷静に学ぶことができます。
 本書を読めば、日本人も「早めに宿題を終わらせようかな」という気になること請け合いです。ぜひご一読下さい。

2016/04/27

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