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その「同意します」――クリックして、本当にいいんですか?

ビッグデータの罠

岡嶋裕史/著

1,188円(税込)

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発売日:2014/11/27

読み仮名 ビッグデータノワナ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-603759-7
C-CODE 0336
ジャンル IT
定価 1,188円
電子書籍 価格 950円
電子書籍 配信開始日 2015/05/22

ビッグデータはいいこと尽くめじゃない。電話番号、スケジュール、写真、ドキュメントなど、クラウドに委ねることが当たり前となった時代、膨大なデータを誰がどう管理・活用しているか知っているだろうか? 無料、便利さと引き換えに少しずつ浸食される個人の情報。プライバシーを脅かす「新たな監視社会」に対する警鐘の書。

著者プロフィール

岡嶋裕史 オカジマ・ユウシ

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。富士総合研究所勤務を経て、現在、関東学院大学経済学部准教授、同大学情報科学センター所長。著書に『構造化するウェブ』(講談社ブルーバックス)、『実験でわかるインターネット』(岩波ジュニア新書)、『アップル、グーグル、マイクロソフト』(光文社新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ネット炎上 職場の防火対策』(日経プレミアシリーズ)など。

目次

まえがき
第一章 アカウントと人格
ドラえもんとメガネのちがい/スマホに渡してしまったもの/記憶が「外」にあることの意味/アカウントの乗っ取り=人格の乗っ取り/どんどん内に入ってくる
第二章 増殖するデータ
デジタルは完璧に消えてしまう/技術者にとっての悪夢/情報が漏れやすいインターネット/各所を通過していくパケット/安全性より利便性/クラウドは何をしている?
第三章 監視されてもいい
最大多数の最大幸福/便利と引き換えに/居場所を公開するSNSも/注文前に発送/どこまで許すのか
第四章 情報革命の次の潮流
ビッグデータはなぜを語らない/どんなデータでも保存できる/ヤフーの恐るべき選挙予測/ビッグデータに命をあずけられるのか/コンピュータ将棋の戦法/浸透するビッグデータの活用/最も期待される医療分野/アマゾンの売り方
第五章 被監視者が監視者になる時代
利得は損失を上回るか/必要以上に収集される個人情報/利用者を煙に巻く利用規約/匿名化の罠/骨抜きにされる匿名化/匿名ではなかった2ちゃんねる/利用者による利用者の監視
第六章 私たちは「危うさ」をどれだけわかっているのか
利用者の負担増、事業者の怠惰/パスワードを使い続けるのは、事業者の都合/説明は利用者の視点で語るべき/すべてのコピーを消すことは不可能/忘れられる権利/個人情報を保護するための新しい発想
あとがき
参考文献
索引

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年12月号より [新潮選書『ビッグデータの罠』刊行記念インタビュー] 無料のものを甘く見ない方がいい

岡嶋裕史

――ビッグデータを使えば、具体的にどんなことが可能なんでしょうか?
現在のセンサーやコンピュータは、これまで不可能と思われていた量のデータ収集と計算を可能にしました。膨大(ビッグ)な情報を使うと、今まで知ることのできなかった関係が見えてきたり、予測できなかったことが予測可能になったりします。たとえばヤフーは国政選挙の際、検索数と得票数の相関からプロ顔負けの予測結果を公表しました。また、東日本大震災時、避難する車のカーナビのデータから、渋滞がいかに起こったか、また、起こらなかったかが分かるようになりました。アメリカのある町では、犯罪者のデータから犯罪がどこで再発しそうかを地図に示すサイトがあります。

――アプリなどをダウンロードする際、ユーザーは説明文を熟読せずに、「便利だから」「タダだから」などという理由で気軽に「同意」をクリックしている現状ですが。
無料のものを甘く見ない方がいいでしょう。サービスの対価としてお金を払わない場合でも、ビジネスですから「何か」は差し出しているわけです。サービスと交換されているものは、個人情報であることを肝に銘じておくべきです。
数千万円でマンションを購入する際の重要事項説明は、どんなに退屈でも読みますよね。でも、無料のアプリなどの利用規約は、熟読する人はほとんどいません。しかし、規約は利用者とサービス提供者間の契約であることは間違いありません。利用規約にはその事業者の姿勢が表れます。煙に巻くような利用規約を書く企業は、きっと顧客を煙に巻きたいのだろうし、わかりやすい利用規約を提示する企業は、顧客にも真摯だと思われます。私たちは、個人情報をぞんざいに扱う企業は、信用に値するかどうかを再考すべきです。

――匿名で登録したつもりが、簡単に個人が特定されてしまう話は驚きました。どういう仕組みで、そうなるのですか?
電子マネーなどのデータの場合、住所と氏名を削除しても、乗降駅、乗降時間、物販履歴などの周辺情報を重ねていけば、特定の人に行き着いてしまうケースがあります。また、単体のデータが安全そうに見えても、他のデータと照合されると匿名性が怪しくなっていきます。

――LINEなどのハッキング被害が一時期、増えました。ハッカーはどういう方法で人の名義を盗むのですか?
IDとパスワードを入手すれば、LINEに限らずアカウントを乗っ取ることができます(LINEは現在、本人確認の対応策をとっている)。多くの人が複数のサービスで同じIDとパスワードを使い回しているため、どこかで個人情報が漏洩すると、ハッカーは漏洩したID、パスワードを入手して、他のサービスでも試みます。
対応策として、サービスごとに異なるIDとパスワードを用意する方法がありますが、パスワードを推測する手段はたくさんあるので、確実な防御方法はありません。

――「1234」など、大勢の人が同じパスワードを使っているとは驚きました。
ハッカーは使われがちなパスワードのリストを持っています。標的とする人がいれば、そのID(公開情報ですから入手が簡単)に対してリストの上位からパスワードを試していきます。これを防ぐために、「3回パスワードを間違えるとIDが使えなくなる」などの対策があるわけです。
特定の人を狙っているのでなければ、ハッキングはもっと容易です。最も使われるパスワードを、たくさんの人のIDに対して1回ずつ試していくのです。いつかはうっかりした人のIDに行き当たって、アカウントを乗っ取ってしまうことができるでしょう。この場合、1回で行き当たるので「3回だけ」の対策は効果がありません。

――この本で、一番言いたかったメッセージは?
「自分のことは自分で決める権利を留保しよう」ということです。私は個人情報を切り売りしても、かまわないと思っています。ただし、それが個人が決めた結果であれば、です。個々人の自由は認められるべきだし、不都合が生じても自分の選択の結果ですから。
しかし現実はちがいます。どんなリスクがあるのかをよく知らされないまま色々なものを受け入れていたり、身の回りで何が起こっているのか気づけないような社会をデザインしつつあるように思います。選択の自由が奪われて、個人に関わる情報が「機械という名の神」に筒抜けになるような状況は不健全な社会だと思います。

(おかじま・ゆうし 関東学院大学准教授)

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