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「分かったつもり」でいた日本人のための必読書!

教養としてのゲーテ入門―「ウェルテルの悩み」から「ファウスト」まで―

仲正昌樹/著

1,404円(税込)

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発売日:2017/01/27

読み仮名 キョウヨウトシテノゲーテニュウモンウェルテルノナヤミカラファウストマデ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 252ページ
ISBN 978-4-10-603795-5
C-CODE 0395
ジャンル ノンフィクション
定価 1,404円

『ウェルテル』は単なる〈妄想青年〉に過ぎないのか。『親和力』はなぜ〈私の一番の本〉と評されているのか。『ヴィルヘルム・マイスター』は何の〈修業〉をしているのか。『ファウスト』に出てくる〈ワルプルギスの夜〉は何を意味しているのか。「教養の代名詞」とされてきたゲーテ作品の〈ツボ〉がはっきり分かる完全ガイド。

著者プロフィール

仲正昌樹 ナカマサ・マサキ

1963年広島生まれ。金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史。東京大学教養学部理科I類を経て、東京大学教育学部に進学。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。著書に『集中講義! 日本の現代思想』『集中講義! アメリカ現代思想』『いまこそハイエクに学べ』『今こそアーレントを読み直す』『ハイデガー哲学入門』『カール・シュミット入門講義』『〈ジャック・デリダ〉入門講義』『精神論ぬきの保守主義』他多数。

書評

現代人にこそリアルに響くゲーテ

斎藤哲也

 どんな分野であれ「入門書」と銘打った書籍は多いが、それだけにハズレを引いてしまう確率もけっこう高い。入門書といいながら門外漢を寄せ付けないような難解な本、それとは逆に、あまりに薄っぺらい解説に終始するだけの本。どちらも入門書としては失格だ。
 そのなかにあって、著者の手がける入門書の安定感は抜群。とりわけアレント、ハイデガー、ジャック・デリダなど、難解な思想家のテキストを噛み砕いて解説する手さばきは、思想界随一といっていい。
 そんな著者が、今回取り組んだのがドイツの文豪ゲーテの入門書である。
 文学者の顔のみならず、科学者や政治家の顔も持つゲーテとはどのような作家なのか。著者は「市民社会の視点から『人間』を描こうとした文学者」とゲーテを特徴づけたうえで、代表的な著作を読み解きながら、ゲーテの文学・思想のエッセンスを摘出していく。
 取り上げられる作品は、『若きウェルテルの悩み』『親和力』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』『ファウスト』『タウリスのイフィゲーニエ』の六作。手際のよいガイドに従って読み進めていくにつれ、ゲーテが描こうとした、近代市民社会を生きる「人間」が浮き彫りになってくる。その構成の妙にまず感服する。
 あらすじはもとより、時代背景、作品のテーマ、ゲーテの人生との関係、先人の読解例など、個々の作品に対する解説のテンポや深度も、入門書としていい塩梅だ。読解面では、『若きウェルテルの悩み』にルソーの影響を読み取ったり、『親和力』をデリダの「エクリチュール」と「パロール」の緊張関係から読み解いたりと、随所に見せる著者ならではの思想的解釈が本書の読みどころだろう。文学好きだけでなく、人文科学、社会科学に関心をもつ読者にとっても刺激的なトピックが詰まっている。
 著者によれば、ゲーテは「自分自身が割り切れない存在であり、長く生きるほど自分自身が分からなくなってきたという人に、お勧めの作家」だという。いまや私たちは、近代の理想を素直に信じることができなくなった「割り切れない」社会に生きている。とすれば、ゲーテが描き出した、近代人に巣食う矛盾の数々は、近代のどん詰まりで右往左往する現代人にこそリアルに響くのではないか。
 本書の読後、評者は、長らく書棚の肥やしになっていた『ファウスト』を取り出し、読み始めた。原典を読んだ気にさせるのではなく、読みたい気にさせる。いい入門書は、次の一冊へ手を伸ばす好奇心を掻き立ててくれるのだ。

(編集者・ライター)
波 2017年2月号より

目次

はじめに
第一章 ウェルテルの「悩み」とは?
『若きウェルテルの悩み』はどのような小説か/教養市民ウェルテル/ウェルテルの身分意識/身分の壁/貧しい人達へのまなざし/「自然」と「社会」と「革命」/エディプス・コンプレックス?/青年の妄想を描く文学
第二章 人間関係における「親和力」とは
『親和力』はどんな小説か/自らに呪いをかける人間/親和性の法則/作品としての日記:自己のエクリチュール/「仲介者」の残酷さ
第三章 「教養小説」における「教養」とは
『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』はどんな小説か/市民社会と演劇/演劇の経済学/演劇の現実/市民社会における選択とハムレット:近代人の自意識/修業の終わりと「塔」の結社
第四章 諦念の文学
ヴィルヘルム・マイスターは何のために「遍歴」するのか/絶望と悟りの中間状態:ヤルノとの再会/教育州の理想/アメリカという希望(?)/フェーリクスの恋
第五章 近代の悪魔
戯曲『ファウスト』は何をテーマとしているのか/錬金術と近代科学/ワルプルギスの夜/地下の富と紙幣と文学/紙幣の魔力/悪魔を“欺く”宗教
第六章 ファウストが見出したもの
「母たち」の脅威/古代のワルプルギスの夜/ファウストの挫折/“自然”を手に入れるために「自然」を破壊する/野蛮を利用する文明/文明の根源
終章 ゲーテに何を期待すべきか
不可解なキャラクター/ゲーテのどこがすごいのか/ゲーテと日本人
あとがき

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