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口のきき方

梶原しげる/著

748円(税込)

発売日:2003/09/20

  • 新書
  • 電子書籍あり

気になる。苛立つ。腹が立つ。巷に溢れる奇妙な言葉を喋りのプロが大解剖!

少しは考えてから口をきけ! テレビ、ラジオに溢れるついつい突っ込みたくなる奇妙な言葉の数々。その背景には何があるのか。耳障りな若者言葉に隠された意外な効用と正しい使用法とは。会話の上手い下手の差はどこにあるのか。アナウンサー歴三十年、喋りのプロが怒って唸って考えた、日常会話から見た日本語論。笑いながら読むうちに、いつのまにか貴方の「口のきき方」が向上しているかもしれません。

目次
はじめに――声に出す前に考えよう
第1章 ブラウン管言葉の「聴き方」
「思います連発症候群」「ほうほう症候群」「こだわり」……テレビから流れてくる奇妙な言葉、耳障りな言葉。その聴き方をお教えします。
第2章 しゃべりの好プレー珍プレー
イチロー、中田英寿の鋭い言語感覚。蓮池薫さんの驚異の適応力。意外なしゃべりの達人たちのファインプレーとは――。
第3章 現代用語の非常識
「自分磨き」「自分探し」「本人の自由」等々、いつのまにか定着している変な言い回しの背景には何があるのでしょうか。
第4章 若者言葉の味わい方
「てゆうかぁ、ぶっちゃけまじやばいみたいなぁ」――うっとうしいけれども、ここには彼らの知恵もあります。真似はしない方がいいですが。
第5章 秘伝・口のきき方
話を聴くにも、口をきくにも技術が必要です。ほんの少しのポイントに気をつけるだけで、しゃべりの能力が向上する秘伝を公開いたします。
あとがき

書誌情報

読み仮名 クチノキキカタ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610033-8
C-CODE 0281
整理番号 33
ジャンル 言語学、政治・社会、ビジネス実用、教育・自己啓発、趣味・実用
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2008/06/06

インタビュー/対談/エッセイ

波 2003年10月号より ぶっちゃけ、やばい  梶原しげる『口のきき方』

梶原しげる

「お会計のほう一万円になります」。
レジでしばしば耳にするこの表現について「気になるか」「気にならないか」を文化庁は平成八年と、十四年の二度にわたって調査を行っています。「お会計は一万円です」と言えばすむものを、わざわざ「ほう」「~になります」と回りくどい表現を加える事で曖昧にするこの言い方。今や所かまわず聞こえてくるこの耳障りな物言いについて、頭の硬い役人が七年も前に注目していたのは意外でした。そしてさらに意外だったのは「気になる」と答えたのが七年前は三割だったのに、最新の調査では五割以上と、ぐっと増えている事です。ここ何年かの「ほう」「~になります」表現のあまりの増殖ぶりにさすがに「いい加減にしろ!」との反発の声が強まった結果でしょうか。
しかし「ほう」「~になります」の勢いは未だとどまるところを知りません。
ある企業で知人を訪ねたところ「はい、A部長のほうは三階になります」。受付嬢は笑顔でそう答えました。彼女にとって「ほう」と「~になります」は使い勝手のいいマニュアル敬語なのでしょう。テレビの世界にもこの言い方は蔓延しています。キャスターと称する連中がフリップ(図示カード)を見せて「場所のほうこちらになります」というのはあたりまえ。先日の「ニュースステーション」では北朝鮮からの脱北者を追跡取材。彼らが身を潜める国境地点に立ったアナウンサーが「こちらがタイ、そしてこちらがミャンマーになります」とレポートするのを見て仰天しました。
『口のきき方』というえらそうなタイトルのこの本では、街や職場やテレビから聞こえてくる「気になる言葉やしゃべり」をチェックしています。
アナウンサー歴三十年の経験と社会人入学した大学で去年書き上げた、若者言葉に関する修士論文をベースに、あらためて「真っ当な口のきき方」を探ってみました。
「正直、からだ的な部分や意気込み的な部分はどうなんでしょう?」とインタビューしている自分が恥ずかしいとさえ気づかない某有名スポーツキャスター。「てゆうか、ぶっちゃけ、やっぱやばいっすよね」と、上司にこんな口をきく新入社員。「九九八円ちょうどからおあずかりしまーす」と言っている自分に疑問を感じない店員。「私とかは? 何気に? 自分探ししちゃう人じゃないですかあ。逆に言うと?自分へのご褒美? ってあったりするわけじゃないですかあ」と? の際の語尾上げ及び、あるじゃないですか連発のOL。
彼らにとって不幸なのはその「口のきき方」の誤りを適切に指摘されなかった事です。口のきき方とは口をきく技術、すなわちテクニックです。生まれついての人柄や性格を修正する事はなかなか困難な事。しかし技術の問題ならちょっとした努力、訓練で克服できるはずです。本書でお伝えしたいのはこのことなのです。

(かじわら・しげる フリー・アナウンサー)

蘊蓄倉庫

しゃべってみたい日本語

 テレビで御馴染みの山本晋也監督は相手の名前を忘れてしまった時に、こういうふうに聞き出すのだそうです。
「お宅名前なんてったっけ」「え、ああ、山田ですけど」「何いってんの山ちゃん。上の名前なんか知ってるよ。下の名前」「ああ、五郎です」「そうそう、山ちゃんは五郎だ、五郎だ」……なるほど、これならストレートに「あんた誰?」と聞くよりもはるかに印象がいいのは間違いありません。
『口のきき方』(梶原しげる・著)には、ちょっとした会話のコツ、巷にはびこる奇妙で耳障りな言葉についての分析、有名人たちの言葉のファインプレー等、「しゃべる日本語」についての話題が詰まっています。
掲載:2003年9月25日

担当編集者のひとこと

ブツブツ言う男

 テレビを見ながらやたらとブツブツ言っている人というのがいます。定食屋で見かけたら、気づかれないように離れた席に移動したくなったりします。そういうブツブツ癖のあるタイプは当編集部にもいます。
 私です。
 自分が年をとってきたからなのか、それとも日本語が乱れてきたからなのか、両方なのか、耳に入る言葉が妙に気になることが多くなってきたような気がします。 先日も世界陸上を見ながら、競技を終えた選手に向かって「素晴らしい走りでした」「次はアテネです」と話しかける“インタビュアー”に対して、「それじゃ質問じゃなくてお前のつぶやきだろう」と、深夜一人で突っ込んでいました。
 ニュースでは、他人の言葉に「ふん、ふん」と偉そうな相槌をうつキャスターを見ると、何を威張っているんだと腹が立ってきます。スポーツニュースで、元気いっぱいの女子アナに妙にはしゃがれるとこれまた腹が立ってきます。
 テレビだけではなく、街に出てもひっかかる言葉はたくさんあります(何だか本当に意地悪爺さんみたいですが)。
「一万円からお預かりします」(なぜ“一万円をお預かりします”と言えないのか)
「こちら刺身三点盛りになります」(これからテーブルの上で魚が変身して刺身に“なる”というわけじゃないだろう)
「生ビールのほうお持ちしました」(生ビールしか頼んでないのに、“ほう”って何だよ)
 活字にしてみると、いちいち怒っているこちらにも問題が大いにあるとは思います。問題は他人の言葉使いではなく、いちいちストレスを感じるおまえの性格や私生活の問題ではないかと言われそうな気もします。
 しかし、おそらく皆さんにも、日常生活のなかで「気になる」「耳障りだ」と思っていらっしゃる言葉があるのではないでしょうか。
 こういうものにブツブツと言い続けているうちに、だんだん、自分の言葉使いについても気になってきます。自分の話し方、話の聴き方は大丈夫なのだろうか、偉そうに思われていないだろうか、ちゃんと相手の話を引き出せているのだろうか、と。
『口のきき方』の著者、梶原しげるさんは、アナウンサー歴30年の大ベテランです。しかも梶原さんは、単にニュース原稿を読むだけのアナウンサーではありません。犯罪者から総理大臣まで、あらゆる人にインタビューをした経験の持ち主です。いわば「しゃべりのプロ」でもあるし「インタビューのプロ」でもあります。
 この本では、テレビや街中に溢れる気になる喋り言葉を時に笑い、時に怒りながら鋭く分析していきます。さらに、しゃべりの技術、聴き取りの技術を向上させるための秘伝も公開しています。そのうちのいくつかのポイントに気をつけてみると、普段の「口のきき方」「話の聴き方」が向上するかもしれません。
 以上、私の言葉使いのなかで気になるところが御座いましたら謹んでお詫び申し上げます。

2003年9月刊より

2003/09/20

著者プロフィール

梶原しげる

カジワラ・シゲル

1950(昭和25)年神奈川県生まれ。早稲田大学第一法学部卒。文化放送に入社してアナウンサーとなり、1992年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)、日本語検定審議委員。著書に『口のきき方』『すべらない敬語』『即答するバカ』など。

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