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司法のしゃべりすぎ

井上薫/著

748円(税込)

発売日:2005/02/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

判決文は蛇足だらけだ! 現役判事が司法の問題点を鋭く突く。

現役判事が司法の抱える問題点を鋭く突く。不要に原告を疲弊させ、理不尽に被告を傷つけ、無駄に裁判を遅延させる「蛇足」の正体とは何か。戦後補償訴訟、中国人の強制連行、ロッキード事件、ロス疑惑、「悪魔ちゃん」事件など、現実の裁判を例にあげて蛇足の弊害を明らかにする。まったく新しい視点から裁判を論じた画期的な提言。裁判を見る目が一変すること間違いなし。

目次
まえがき
第一章 晴らすことのできない濡れ衣
すわ、殺人事件発生
損害賠償請求訴訟提起さる
俺はやってない!
あなたならどうする?
そんなバカな!
濡れ衣の原因
第二章 判決理由とは何か?
話題にすること自体に意義がある
理由とは何か?
理由の始まりと終わり
法律に基づく裁判
判決理由の定義
必要なのは一貫性
理由の強制
狭い裁量権
理由欄には理由のみを記載すべし
書式例で確認する
理由欄の記載の意味
理由欄は評価の対象
第一章の設例で考える
饒舌禍の一例
本書のテーマ
テーマの普遍性
第三章 饒舌禍の実例
無数の実例
ロス疑惑(実例1)
中国人の強制連行(実例2)
花岡事件
戦後補償訴訟
悪魔ちゃん(実例3)
岩手靖国訴訟(実例4)
代筆郵便投票訴訟(実例5)
朝日訴訟(実例6)
ロッキード事件丸紅ルート(実例7)
微罪での勾留(実例8)
制度の不備指摘(実例9)
白鳥事件(実例10)
第四章 蛇足の弊害
1 当事者のマイナス
  蛇足で負けた者の不服
  蛇足の判断はしないのが前提
  判断の価値
  訴訟指揮の失敗
  最高裁でも同じ
  攻撃防御の負担増
  当事者になったときの負担の内訳
  司法離れを招く
  判決の遅延
  被告の応訴の煩わしさ
  早く引導を渡すべし
  司法による人権侵害
2 裁判所のマイナス
  裁判事務の増大
  他の事件の遅延
  蛇足をあてにする訴訟の誘発
  法廷が目的化する
  裁判所の政治化
  訴訟指揮の困難
  裁判所の気の緩み
  要部の雲隠れ
  裁判所の威信の喪失
3 国家全体のマイナス
  無駄な公務の禁止
  蛇足の無駄
  財政難の後押し
  三権分立
  立法と司法
  司法の民主的コントロール
  司法の領分
  蛇足と民主主義
  理由欄における政治活動
  蛇足の判例視
  憲法訴訟の終審
  砂上の楼閣
  法理論の力
  統治機構の破壊
  司法改革の前提
4 社会全体のマイナス
  証人の負担
  裁判員の不利益
  判決の波及効
  倒錯の世界
  裁判官の評価
  司法権の国民生活への介入
第五章 打開策はあるか
1 裁判所内で
  裁判官の意識改革
  理由とは何か・再考
  積極策による自滅
  上命下服でない改革
  国家千年の計
  司法行政の対応
2 法曹全体での打開策
  蛇足慣れを改める
  法曹養成制度の改革
3 学者の新課題
  蛇足を無視すること
  判例を見直すこと
4 マスコミの責任
  マスコミの位置付け
  知的水準のバロメーター
5 大切な国民による監視
  新聞記事による練習
  主権者による司法権の監視

書誌情報

読み仮名 シホウノシャベリスギ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610103-8
C-CODE 0232
整理番号 103
ジャンル 法律
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/01/27

担当編集者のひとこと

蛇足許すまじ

 道路公団が「分室」という名称で、保養所のような施設を多数持っていたことが問題になっています。その少し前には、あちこちに豪華保養所も持ってることも怒りの対象となっていました。
 役所や特殊法人の類の無駄遣いには、マスコミは敏感に反応し、糾弾します。
 ところが、これが裁判所となると、ハコモノのような具体的なものがあまりないので、そういう批判の対象にはあまりなりません。しかし、実際には相当な無駄があるのです。 たとえば、延々と証拠調べをした挙句に、「この件は時効だから、請求を棄却する」というような裁判です。時効かどうかは、訴状を読んだとたんに裁判官には判断できることなのです。それなのに、どういうわけだか、長い時間をかけて事実関係を調べたりするのです。これはもちろん税金の無駄遣いにつながります。行政が訴えられた場合には、その間の弁護士費用だって必要です。その原資はこれまた税金です。
 そんなバカな裁判、滅多にないのでは、と思われるかもしれませんが、大間違いです。ロッキード事件や、ロス疑惑、靖国参拝、戦後補償など、有名な事件にかかわる裁判でもこの種の無駄があるのです。その蛇足分の負担は、回りまわって納税者にツケが来るのです。
『司法のしゃべりすぎ』は、井上薫氏が、この問題について現役判事ならではの鋭い視点で分析した本です。ご一読のあとは、裁判報道を見る目が変わること、間違いありません。

2005年2月刊より

2005/02/20

著者プロフィール

井上薫

イノウエ・カオル

1954(昭和29)年東京都生まれ。東京大学理学部化学科卒、同修士課程修了。司法試験合格後、判事補を経て1996年判事任官。2006年退官し、2007年弁護士登録。著書に『司法のしゃべりすぎ』『つぶせ! 裁判員制度』『狂った裁判官』など。

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