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木の文化は今も生きている――。その深い智恵、その恐るべき技術。

木に学ぶ

早川謙之輔/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2005/02/20

読み仮名 キニマナブ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 184ページ
ISBN 978-4-10-610106-9
C-CODE 0272
整理番号 106
ジャンル 産業研究、サイエンス・テクノロジー、手芸・クラフト、趣味・実用
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/07/27

木の文化は今も生きている――。木曾檜はなぜ特別なのか。針葉樹と広葉樹はどこが違う。木目はいかにしてできるのか。縄文時代の技術レベルは。鋸の普及していない奈良時代に板はどうして作ったのか。「木挽き」や「剥ぎ師」のすごさとは。伊勢神宮の御木とは。奈良の寺の古材から何がわかるか。音と木の関係とは。……木工四十余年、現代の名匠が木と人の長い歴史を考える。

著者プロフィール

早川謙之輔 ハヤカワ・ケンノスケ

1938(昭和13)年岐阜県生まれ。木工。1969年、恵那郡付知町に「杣工房」を設立。1981年、建築家・白井晟一の依頼により静岡市立芹沢銈介美術館の天井張りを手掛け、広く注目される。著書に『木工のはなし』『木工の世界』『黒田辰秋 木工の先達に学ぶ』などがある。

目次

はじめに
I 姿を仰ぐ
 1 檜あるいは木曾檜について
 2 大檜との出会い
 3 老杉を敬う
 4 楠をめぐって
II 歴史に触れながら
 1 縄文遺跡と栗
 2 伊勢神宮の御木
 3 法隆寺と東大寺の古材
 4 姫路城の心柱
 5 旧家の材
III 「割る」と「挽く」
 1 割って板にする
 2 正倉院の厨子を手掛かりに
 3 鑿・鋸・鉋
IV 根も葉もある話
 1 目を見る
 2 根の力
 3 樹皮は死なず
 4 葉、花、そして実
Ⅴ 木の時代は過去のものか
 1 コンクリートに変わっていく
 2 小屋が鳴る
 3 灰に至るまで
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

神坂大檜の千年

早川謙之輔

 私の住む付知町(岐阜県)から車で中津川市に向かうと、小さな峠を越えて市街に出る直前、目の前に恵那山の偉容が大きく広がる。
 標高二一九一メートル。以西のどの山よりも高いという。前田青邨画伯は前山を隔ててその姿を仰いだ。熊谷守一画伯は二十五キロ北の付知から遠望した。作家の島崎藤村は長野県の馬籠側から間近に見ている。
 名古屋・岐阜方向から見ると、この山は和船を伏せたような姿をしているので、「舟伏山」ともいわれる。しかし、北側から見ると、東中腹から富士見台と呼ばれる稜線がのびていて、木曽山脈に連なることがわかる。
 富士見台の鞍部に、東山道の難所、日本武尊も難渋したと伝えられる神坂峠がある。今日では、車で折れ曲がる山道を抜けて峠まで行くことができるし、その下には中央自動車道のトンネルが穿たれている。
 この峠のやや西に推定樹齢千年という大檜がある。近年になって発見されたもので、「神坂大檜」という。命名者は作家の高田宏さん。地名の「みさか」に檜の古名「ひ」を組み合わせたもので、今ではその名で定着している。この檜については新著『木に学ぶ』のなかで詳しく触れているが、はじめて見た時は、その巨きさに声も出ないほどであった。
 馬籠も含んでいた旧・神坂村は昭和三十三年に長野県山口村と岐阜県中津川市神坂に分かれたのだが、この二月に、わが付知町も含め、中津川市に合併された。山口村にとっては越県合併ということになる。
 長野県の人々の思いは複雑だろう。馬籠は藤村の郷里であり、その藤村を県民は誇りとしている。岐阜県に手放したくなかったに違いない。
 付知町で長く生きてきた者にとっても、老年に中津川市民ではしっくりとこない。高田宏さんのエッセイに、大聖寺が加賀市となり、育った土地の名が失われた話があるが、今にしてその無念のほどがわかる。町には合併反対の動きもあった。ただ残念なことに、それは熊谷守一さ(「さん」の方言)の郷里云々とは無縁のものであった。

 暖冬と伝えられていたが、昨年末にいきなり雪がきた。晩秋になると、この話も前掲書に書いたことだが、朴の落ち葉で雪占いをする。祖母に教えられたもので、なかなかに当たると思っているが、この冬は多雪と出ていた。
 恵那山も今は雪をかぶって白い。神坂大檜も深い雪に埋もれて立っていることだろう。
 付知町はこの二月まで恵那郡だった。幕末までは尾張領だった。しかし、江戸時代の六百年も前にこの神坂大檜は生きはじめているのである。

(はやかわ・けんのすけ 木工)
波 2005年3月号より

蘊蓄倉庫

山から広葉樹が消えていく

 桃太郎のお爺さんは山へ柴(小さい雑木)刈りに行く。折り焚く柴の木はおそらく広葉樹。折りやすいし、火力もあるからである。枝は炭用材として、葉は堆肥として活用されてもきた。人にとってだけではなく、山にとっても大事な木で、落ち葉は土を肥やし、保水を助けるし、根は土壌を保全する。
 しかし、柴刈りも炭も堆肥も世の中から姿を消して久しい。不要になった広葉樹に代わって、山には檜や杉などの針葉樹が植えられることになった。緑が深くとも、その山が健全とは言えなくなっているのである。

掲載:2005年1月25日

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