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冥王星はなぜ外されたのか――。最先端の天文学で解き明かされた惑星たちの謎!

新書で入門 新しい太陽系

渡部潤一/著

929円(税込)

本の仕様

発売日:2007/11/19

読み仮名 シンショデニュウモンアタラシイタイヨウケイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-610238-7
C-CODE 0244
整理番号 238
ジャンル 宇宙学・天文学
定価 929円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/03/30

太陽系の果てに位置する九つ目の惑星、冥王星が、二〇〇六年の夏、惑星から外された。だが、一体なぜ降格されたのか……。今では準惑星として数えられる冥王星は、実は周辺に位置する多くの太陽系外縁天体の一つにすぎなかったのである。電子撮像技術による観測の飛躍的な進歩、あるいは種々の惑星探査機の活躍により、次々と明らかになっていく太陽系の天体たち。カラー写真23点と共に、壮大なる惑星たちの神秘的な相貌を最先端の天文学で解き明かす――。

著者プロフィール

渡部潤一 ワタナベ・ジュンイチ

1960(昭和35)年福島県生まれ。国立天文台天文情報センター長。東京大学理学部天文学科卒。専門は太陽系小天体の観測的研究。2006年、国際天文学連合「惑星定義委員会」の委員となり、冥王星の惑星からの除外を決定した最終メンバーの一人。

目次

はじめに
第一章 プロローグ
技術革新による新たな発見1――天体望遠鏡/技術革新による新たな発見2――天体力学と星図/技術革新による新たな発見3――写真撮影技術/技術革新による新たな発見4――電子撮像技術
第二章 大家族の中心にある“ストーブ”――太陽
太陽系の親玉――天体の運動を支配する核/引力に衛星までも支配される/“ストーブ”としての存在――温度環境を支配する恒星/X線、紫外線で見えてきたもう一つの顔/風が届く範囲までが太陽圏
第三章 ストーブの周りを駆け回る走者――水星
高速で駆ける短距離ランナー/コペルニクスも見たことがなかった?/探査機で明かされた最小惑星の素顔/2:3のゆっくりとした自転周期/熱い惑星の冷たい秘密
第四章 美しき女神の名を持つ“妹”――金星
黄金色の輝きの秘密/厚い雲の正体を暴く/金星に硫酸の雨は降るか/灼熱地獄の謎/兄、地球に礼を尽くす双子星/探査機で明かされたその素顔/まだ生きている惑星/美人のシルエット姿
第五章 青色はぐれ星――地球
地球は宇宙のどこにあるのか/一番の特殊性は水の存在/水惑星が誕生した過程/特別な大気の下、生命が生まれた/温室効果の影響――いつまで現在のままでいられるか/球状星団に存在する「青色はぐれ星」/地球の公転は1年ではない/地質活動を行う生きている天体
第六章 身近にありながら謎の多い衛星――月
心象風景としての天体/異常に大きな衛星、その原因は/いつも同じ模様の起き上がり小法師/1年に3センチ遠ざかっていく/クレーターの起源
第七章 不気味に赤く光る軍神――火星
6万年ぶりの大接近/「火星人襲来」騒動/不気味な赤い色の正体/気温の日変化50度、ダイナミックな気象/水の存在を示唆する溝状地形/ついに発見された水の痕跡/生命は果たして発生していたのか
第八章 太陽系の空白地帯に位置するもの――小惑星と彗星
火星と木星の間/“太陽の環”/華麗なるアウトロー・彗星/ニュートンが証明した放物線軌道/「オールトの雲」と「太陽系外縁天体」/彗星、小惑星が地球に衝突する確率
第九章 太陽系惑星の王者――木星
最も巨漢の生徒/刻一刻と変化する縞模様/大赤斑成因の謎/「淡化」「攪乱」――劇的に変化する大気/惑星ラジオ放送局/木星にもある細い環/四つの子分、ガリレオ衛星
第十章 壮大な環を擁する妖しいまでの美しさ――土星
誰もが感動する比類なきリング/美しい環の正体は/環が消失する瞬間/大気が存在する衛星、タイタン/カッシーニ・ホイヘンス探査機の挑戦/水に浮く惑星、その軽さの秘密
第十一章 へそ曲がりの惑星――天王星
自転軸が傾く巨大な氷の星/親に似て衛星たちもへそ曲がり/衝撃的だった環の発見/羊飼い衛星の妙技
第十二章 内部からの発熱で予想外に暖かい――海王星
絶対温度50度で大気活動も/4本の完全な環と無数の衛星/逆行する衛星トリトン
第十三章 太陽系の果て――冥王星と太陽系外縁天体
最果てに位置する奇妙な惑星/予想外の軽さ、小ささ/衛星カロンとの二重惑星?/「惑星のできそこない」/彗星の巣、エッジワース・カイパーベルト/冥王星の仲間たち、太陽系外縁天体
第十四章 惑星の定義――なぜ冥王星は準惑星になったのか
揺らぐ冥王星の位置づけ/定義はもともとなかった/惑星よりも大きな小惑星の発見/ついに見つかった外縁天体エリス/「国際天文学連合・惑星定義委員会」/プラハの暑い夏――IAU総会/総会での採択/採択された定義の問題点/最後に――
(資料)国際天文学連合:惑星の定義

インタビュー/対談/エッセイ

波 2007年12月号より 冥王星騒動――常識が覆されるとき  渡部潤一『新書で入門 新しい太陽系』

渡部潤一

「また、冥王星の件ですよ。」
 筆者が勤める国立天文台の質問受付電話には様々な内容の相談や質問が寄せられるが、冥王星を惑星から「降格」したことについても相当数の質問やクレームがあった。つい先日も長電話になっているのを心配して見に行くと、傍らの係の人が、その内容を教えてくれた。すでに騒動から一年以上も過ぎているというのに、いまだにその種のクレームが途絶えないのは驚きである。もっともほとんどの方は、しっかりと理由を説明すると納得してくれる事は多い。ほとんどは冥王星を単純に追い出した、と誤解している人が多いからである。これはマスコミが、「冥王星、惑星から降格」とセンセーショナルなキャッチコピーをつけ、惑星のリストから冥王星がはずれたことのみを強調する報道によるところも大きいようだ。
 確かに天文学者は、昨年8月、チェコの首都・プラハで行われた天文学者の国際会議において、冥王星を惑星からはずした。しかし、同時に新たに「準惑星」という種族を作り、冥王星はそこに位置づけた。新しい種族の代表になったわけであって、決して単純に降格したわけではない。
 もともと太陽系には、惑星と、それ以外の彗星や小惑星といった小さな天体と、大きく分けてふたつの種族があった。両者を分け隔ててきたものは単純に大きさであった。小天体の中で最も大きな小惑星ケレスは直径が1000km弱、一方、最も小さな惑星である冥王星でも、その直径は2300km。つまり、惑星というのは太陽を巡る天体のうち、大きいものという共通認識だった。
 ところが観測技術が発達し、冥王星の外側にたくさんの小天体が見つかってくると、事態は一変した。太陽系外縁天体の登場である。冥王星と同じような軌道を持つ天体だけでなく、次第に大きな天体も発見されてきた。2003年にはついに“大物”エリスが見つかった。エリスの推定直径は2400km。冥王星よりも大きい。ここで、「惑星よりも大きな小惑星」が誕生するという論理的に矛盾する状況が生まれた。そこで天文学者は、(どのような基準にしたかは本書に譲るが)太陽系の天体を惑星、準惑星、太陽系小天体という三種類の種族に分類し直したのである。これによって冥王星は惑星から準惑星へ配置換えとなった。
 昆虫でも植物でも、新しい世界を探れば、そこに新種が発見され、分類の見直しが必要になることがある。今回もそれと同じと言えるものの、「水金地火木土天海冥」という広く知れ渡った常識が覆された事に対する抵抗感が強い分、納得するまでに時間がかかるのかもしれない。実際、筆者も、ある方と一年以上もこの問題について文通をせざるを得なかった。冥王星騒動でさえ、このような状況なのだから、かつて天動説という常識が地動説に取って代わるまで、百年以上もかかったというのもうなずけるこの頃である。


(わたなべ・じゅんいち 国立天文台天文情報センター長)

蘊蓄倉庫

実は「双子星」だった冥王星の正体

 主に1980年代以降のこと、天体観測の世界ではある画期的な技術革新がもたらされた。電子的な撮像技術、CCD素子の登場である。光を写真のように化学変化による蓄積で現像するのではなく、電子に変えて撮像するため、それまでの写真の100倍近くも感度がよくなり、観測効率が向上することになったのだ。それにより、120億光年台の宇宙の彼方、あるいはそれまで見えなかった微かな天体が見えるようになったのである。
 その結果、太陽系でも驚くべきことが明らかとなることに。最外縁とされてきた冥王星の外にも小惑星がたくさんあることが見つかり、さらには冥王星と同じ規模の天体も複数存在することがわかったのである。しかも何と冥王星には、母惑星の半分以上もの直径を持つ衛星カロンの存在が発見された。この二つの星の重心のバランスは拮抗しており、つまりは「二重惑星」と呼んだ方が適切とされたのだ……。昨年の夏、惑星から外された冥王星。新聞テレビ等でもセンセーショナルに報道されたが、具体的にどういう理由から外されたのか、案外、正しく把握している人は少ないのでは――。

掲載:2007年11月22日

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