ホーム > 書籍詳細:日本語の奇跡―〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明―

日本人が創り上げたたぐい稀な言葉の世界! かつてない視野から描く日本語誕生の壮大な物語。

日本語の奇跡―〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明―

山口謠司/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2007/12/17

読み仮名 ニホンゴノキセキアイウエオトイロハノハツメイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 186ページ
ISBN 978-4-10-610244-8
C-CODE 0281
整理番号 244
ジャンル 言語学
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/11/25

「五十音図」に代表される論理的な〈カタカナ〉、いろは歌に代表される情緒的な〈ひらがな〉、そして中国から渡来した漢字。これらを巧みに組み合わせることで、日本人は素晴らしい言葉の世界を創り上げてきた。空海、明覚、藤原定家、行阿、本居宣長、大槻文彦……先師先達のさまざまな労苦の積み重ねをわかりやすく紹介しつつ、これまでにない視野から、日本語誕生の物語をダイナミックに描く。

著者プロフィール

山口謠司 ヤマグチ・ヨウジ

1963(昭和38)年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部准教授。博士(中国学)。フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て、現職。『妻はパリジェンヌ』『日本語の奇跡』『ん』『てんてん』『名前の暗号』『となりの漱石』など、著作多数。

山口謠司・公式HP (外部リンク)

目次

序章 〈ひらがな〉と〈カタカナ〉
優秀な語学的センス/先斗町も八重洲も/膠着語は文明と文明をつなぐ架け橋/今は「あいうえお」だが/子音と母音が整然と/システムと情緒
第一章 国家とは言葉である
漢字伝来の年代は誤りだが/『論語』と『千字文』/呉音は最も古い漢字の読み方/聖徳太子の時代になると/『十七条憲法』から『大宝律令』へ/大伴家持は和歌も漢文も/顔氏一族の業績
第二章 淵源としてのサンスクリット語
表音記号と表意記号/鳩摩羅什はバイリンガル
第三章 万葉仮名の独創性
漢字の音を漢字で示すには/漢文風に読んでしまうと/「ささ」は「つぁつぁ」/「借訓」と「借音」/『万葉集』だけではなく
第四章 『万葉集』が読めなくなってしまった
漢詩は政治的教養/国風暗黒の時代の到来/遊びを超えた真剣勝負/恋の歌は女性のためだけではない/言葉の意味すら
第五章 空海が唐で学んできたこと
長安の文化を求めて/中国の役人も驚く語学レベル/模倣から「実」へ/反骨・最澄の正論/陀羅尼と言霊信仰/中国語から日本語による理解へ/大きな革命/菅原道真と遣唐使の廃止
第六章 〈いろは〉の誕生
三つの母音が消えてしまった/朱点(ヲコト点)の登場/西大寺と日本語の深い関係/色は匂へど/空海の作ではない
第七章 仮名はいかにして生まれたのか
実名は伏せて/漢字を簡略化する/漢字の一部を利用する/仮名の「仮」とは/姿だけは漢語/外来語を消化する過程で
第八章 明覚、加賀で五十音図を発明す
現存最古の五十音図は/日々研究に没頭/なぜ薬王院温泉寺に/五つの母音を決める/法華経を読経するために
第九章 藤原定家と仮名遣い
歌学者たちの考察/御子左家の一人として正統を問う/「れいぜん」が「れいぜい」に/揺れる解釈をも含めて/あの定家でも/言語は変化する/体言から用言へ/「行」という考え方
第十章 さすが、宣長!
五十音図の横の列/「ヰ、ヲ、ヱ」はどこに/国語学史上の一大発見/現代の方法と変わらずに/復古神道
終章 素晴らしい日本語の世界
消えた「いろは引き」/大槻文彦の自負/新しい精神/情緒よりシステムの構築/「あ」から始まり「ん」で終わる/両輪で言語的バランスをとる
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年1月号より 〈アイウエオ〉と〈いろは〉  山口謠司『日本語の奇跡―〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明―』

山口謠司

「せっかく楽しいこの世の中を、固い理屈で無が無に刻む。野暮じゃ、先生ちょとふりむいて、こちらの花をも見やしゃんせ」
 我が国に言語学(当時は「博言学」)を移植した上田萬年は、こんな都々逸をよく口にしていたという。彼は明治二十三(一八九〇)年にドイツに留学して言語学を修め、東京帝国大学文科大学博言学講座教授、帝国大学文学部長を経て、貴族院議員なども務めた。小説家・円地文子の父親、また『広辞苑』の新村出、国語学者・橋本進吉の恭敬の師である。
 上田以前、「国語」は「日本語」を指す言葉ではなかった。江戸時代、「国語」と聞けば、人は中国春秋時代の八カ国の歴史を綴った『国語』という漢籍を連想した。それまで、「日本語」は「和語」と呼ばれていたのである。
「漢語」に比べると、「和語」は優しい言葉に過ぎるきらいがある。実際、太安万侶は『古事記』を編纂するに当たって、「和語だけでは冗漫になりすぎる。かと言って、漢語では日本的な情感を書き表すことが出来ない」といった意味のことを記している。
 この悩みは、世界水準で新しい「国家」を創ろうとした明治時代においても、言語に関わった人々の脳裡に去来したに違いない。
 はたして、上田は「国語は帝室の藩屏なり。国語は国民の慈母なり」という言葉を遺している。そこで思い起こされるのが、孔子の言葉である。『論語』によれば、「師よ、もし一国の政治を任されることになったら先ず何をなさいますか?」という子路の質問に対して、次のように答えたという。
 ――必ずや、名を正さんか!
「名」とは「言葉」を意味する。上田の言葉に通じるものがあるのではないか。
 言葉は生きている。それぞれの国で、その国の言葉は時代とともに変化する。しかし、時代とともにある変化を許してもなお不変の血脈のようなものが「国語」には流れているのではないか。
 拙著『日本語の奇跡―〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明―』は、「カタカナ」の〈アイウエオ〉と「ひらがな」の〈いろは〉を通して、日本語における「不変の血脈」を探ったものである。
 同書で詳しく論じたことだが、五十音図に代表される〈アイウエオ〉は日本語のシステムを司り、「いろは歌」に代表される〈いろは〉は日本語の情緒を底辺で支えてきた。
 戦後の教育は〈いろは〉を教えなくなったが、上田の「国語」には、〈アイウエオ〉と〈いろは〉を軸とする日本語の精神が生きている。
 思うに、上田が冒頭の都々逸を口にしたのは、西洋的思想である言語学という「理屈」、情緒を培う繊細な日本語という「花」、その両輪を忘れないための自戒ではなかったのだろうか。


(やまぐち・ようじ 大東文化大学准教授、中国文献学)

蘊蓄倉庫

「五十音図」と「いろは歌」

 我々が小学生の時に習う「五十音図」はいつごろ誕生したか、ご存じでしょうか。ほぼ現在の形になるのは江戸時代ですが、すでに十一世紀、天台僧の明覚がその原型となるものを発明しています。彼は子音と母音の組み合わせによって日本語の音韻体系が成り立っていることを発見し、今日の基礎を築いたのでした。ちなみに「いろは歌」の誕生は百年ほど早いとされています。

掲載:2007年12月25日

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