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のさばるエセ「被害者」に気をつけろ! 現役精神科医が一刀両断!

「心の傷」は言ったもん勝ち

中嶋聡/著

734円(税込)

本の仕様

発売日:2008/06/16

読み仮名 ココロノキズハイッタモンガチ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-610270-7
C-CODE 0210
整理番号 270
ジャンル 科学
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

「心に傷を受けた」と宣言したら、あとはやりたい放題。詳しい検証もなく、一方的に相手を加害者と断罪する――そんな「エセ被害者」がのさばっている現代日本。PTSD、適応・パニック障害から、セクハラ、痴漢冤罪、医療訴訟まで、あらゆる場面で「傷ついた」という言い分が絶対視されている。そう、「被害者帝国主義の時代」が到来したのだ。過剰な被害者意識はもうたくさん! 現役精神科医が示す処方箋。

著者プロフィール

中嶋聡 ナカジマ・サトシ

1955(昭和30)年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。医学博士。精神科医。1996年、沖縄県に「なかまクリニック」を開業、現在に至る。著書に『「心の傷」は言ったもん勝ち』『眠れぬ夜の精神科 医師と患者20の対話』『「新型うつ病」のデタラメ』など。

目次

はじめに
第1章 朝青龍問題と「心の病」
朝青龍はサボったのか/疾病利得とヒステリー/解離する意識/「心の病」の大膨張/新顔の「PTSD」/世の中のものさし/「心の傷」は大問題なのか/朝青龍の責任能力
第2章 軽症ヒステリーの時代
病名が患者を増やす?/「しっかりしろ」は禁句か/軽症ヒステリー患者たち/「適応障害」は後づけ/「心療内科」への誤解/「ギャンブル依存症」は存在しない/自助を助ける
第3章 セクハラは犯罪だろうか
セクハラに関する疑問/息苦しい論理/増殖する「ハラ」/相手が嫌なら「セクハラ」か/被害者がすべてを決める/ふざけてはいけないのか/単純化する思考
第4章 理不尽な医療訴訟
医療訴訟の問題/医師の説明責任をめぐって/治療の押し売りはできない/医師の裁量が認められない/患者と司法が医師を殺す
第5章 被害者帝国主義
「でっちあげ」の恐怖/「傷ついた」の万能性/「被害者帝国主義」の誕生/被害者の圧倒的有利
第6章 「辺縁」を生かす
ナースキャップが消えた/消された理由/本当に不要だったのか/消え行く名称/賭け麻雀は違法か/「辺縁」を考える/「お」が付くか/裁量を許す社会/患者様
第7章 精神力を鍛えよう
強い個人になるために/西本育夫君の話/「にもかかわらず」の能力/精神力を鍛える七つのポイント
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年7月号より 過剰な「心の傷」はもうたくさん?

中嶋聡

私は、沖縄でクリニックを開業している、精神科医です。
「心の傷」という言葉が、十五年ほど前から、よく使われるようになりました。何か事件が起こると、「生徒たちの心のケアを行いたい」といった校長のコメントが新聞に載ったりもします。
そうした状態で苦しんでいる人は確かにいます。治療を求めて来る人たちにできるだけのことをするのが、私たち精神科医の役割でもあります。
ところで、この「心の傷」、本人からの申告があれば、他人が「そんなはずないだろう」と勝手に言うことはできません。礼儀としてそうだというのではなく、ことの性質上、できないのです。
昨年の夏、横綱・朝青龍が、「巡業を休んでサッカー」問題で出場停止・謹慎の処分を受けた後、一言もしゃべれなくなりました。「解離性障害」と診断されましたが、「記者会見も開けないほどの心の病なのか?」「帰国してしか治療できないほどの状態なの?」と思った人は多かったはずです。でも、ことが心の病だと、「そうでない」という証拠もないし、結局のところ周囲も、本人の自己申告をそのまま通すほかありませんでした。
以前にくらべ精神科の敷居が低くなり、受診しやすくなったせいもあって、「心の病」で休職している人は、皆さんの身のまわりでも珍しくないと思います。その多くは、間違いなく治療と休養を必要としている人です。しかし中には、「本当に病気なのか」「甘えてるだけなんじゃないか」と思われる人がいることも事実でしょう。心の病の境界線は、かなりぼやけています。本書で私は、精神科医としての立場から、臨床現場の実態を紹介・解説しています。
「セクハラ」「パワハラ」「いじめ」等についても、「心の傷」と同様のことが言えます。一方の当事者が「セクハラを受けた」と言い出したら、相手方はいきなり「加害者」にされてしまいます。実態はどうなのかわからないのに、多くの場合、レッテルが独り歩きし、「加害者」は解任など、厳しい社会的制裁を受けます。
「被害者がセクハラと感じたらセクハラだ」と、よく言われます。この言葉は、本当に正しいのでしょうか。被害者の立場が不当に絶対化され、それ以上の議論を寄せつけなくなってはいないでしょうか。私は本書で、このような風潮を「被害者帝国主義」と名づけ、論じました。それは、福田ますみ氏の『でっちあげ』(新潮社)や、周防正行監督の『それでもボクはやってない』が描いたような冤罪問題の温床にもなっていると思います。
これらの問題について、読者の皆さんと一緒に考えることができれば幸いです。

(なかじま・さとし 精神科医)

担当編集者のひとこと

「心の傷」は「聖域」か?

 作家の五木寛之さんは、現代を「鬱の時代」と称して、講演や著書でよく説明をしています。曰く、
「鬱というのは、エネルギーがあり、それが内部にたまっている状態であって、決して悪いことではない。(中略)悩む、嘆く、悲しむ。これまでマイナスといわれたものが、鬱の時代では支えになる」(産経新聞08年3月1日掲載) と肯定的にとらえています。まさに卓見で、ここにはマイナスイメージのある「鬱」をプラスに転じようとさせる賢人の智慧があります。
 けれども、この「鬱」またはその原因であろう「心の傷」を、自身の都合の良いように「利用」する人々がいたら……。 沖縄でクリニックを開業している現役精神科医の著者は、「心の病」を理由に会社をサボる人、ちょっとした上司の注意に「パワハラだ」と騒ぐ部下、何でも「セクハラ!」と主張する女性など、「被害者意識」が過剰でそれを自身の都合の良いように利用して他人に迷惑をかける人々を、自身の臨床経験をふまえて批判的に論じています。
 周囲にこんな人がいたら大変です。「君はちょっと我慢が足りないね」とか「それは結局甘えでしょう」なんて苦言を呈したら、「配慮が足りない」「勉強不足」と激しい調子で反論されるでしょうから。はたして「心の傷」は、いつから「聖域」になってしまったのでしょうか? 過剰な被害者意識を振り回すだけでは、五木氏の言うように、「鬱」をパワーに変えることなんてできません。
 日本人が失いつつある良質な「精神力」を回復させるための処方箋を示し、多くの人が言いたくても言えなかったことを、現役の精神科医が勇気をもって論じたのが、本書『「心の傷」は言ったもん勝ち』です。

2008/06/25

蘊蓄倉庫

消えたナースキャップ

 女性看護師の定番アイテムであったナースキャップ。十数年前から「ナースキャップ廃止運動」というのが全国的に起こり、今ではほとんどの病院の看護師は頭に何も着用していないそうです。汗で汚れやすく不潔になりやすい、点滴に引っかかるなど危険、そもそも機能的に意味はない、というのが表向きの理由だそうです。しかし、その裏にはまた別の理由があったのではないか……、現役精神科医の著者は本書でその理由を推測しています。とても合理的な理由で廃止されたように思えるナースキャップ。しかしそこに隠された意図とは? 続きはぜひ本書を手にとって確かめてください。
掲載:2008年06月25日

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