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だから混浴はやめられない

山崎まゆみ/著

748円(税込)

発売日:2008/10/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

著者です。ご一緒しませんか。混浴のできる温泉、厳選50!

混浴と聞けば日本各地はもちろん、アジア、アフリカ、南米まで世界中の温泉地を求めて回る……そんな女性温泉ライターがその醍醐味を紹介する。豊富な体験談、裸のコミュニケーション論、神話に残る温泉発見伝説や興隆を極めた江戸の銭湯事情など――。明治期まで日本人にとって当たり前だった混浴。そこは何より鬱陶しい日常から解放される場であり、人との関わりを学ぶ場であったのだ。失われし風習を今一度。

目次
はじめに
第1章 そこは恋が始まる場
心ときめく裸の出会い/あつい眼差しの交換/私が惚れたイイ男たち/「私たち混浴で愛を育みました」/仲良し夫婦の秘訣は毎晩の湯/熟年夫婦にもまた恋が/「冥土の土産になったよ」
第2章 主導権を握るのは、やっぱり女性
20代カップルの混浴デート/おばちゃんが若い男を襲う/女子大生が席巻!/妙に意識する妻の大胆さ/男は妄想で、実際に楽しむのは女たち
第3章 失われた原風景を求めて
神話にみる日本人の温泉好き/温泉神社、寺湯と信仰/古代から自然のままに/お江戸の町の混浴事情/初の混浴禁止令/艶めかしい湯女たち/江戸時代、身分によって分けられていた/書物に見る「湯治行」/外国人が見た混浴風景/明治時代、禁止令再び/戦後の「10歳以上の混浴は原則禁止」/文士を育てた混浴風呂
第4章 良質な湯と豊富な量、そこは理想の温泉郷
温泉は生きている/「一期一湯」の出会い/「湯守」の存在/人の生活がある共同浴場
第5章 混浴に学ぶ人としての作法
正しい混浴風呂の選び方/男性が楽しめるしっぽり湯/女性にとっては第一歩が肝心/家族が楽しめる条件は「遊べる」こと/必須道具といえば/絶景に出会える季節と時間/お互いに裸だからされて嫌なこと/粋に見える服の脱ぎ方、着方/江戸っ子のあつ湯好き
第6章 混浴というセラピー
相性を知る/裸の開放感/裸で見上げる星空の贅沢/「疲れた女性を癒してあげたい」/「温泉の主」/田舎の人の義理と人情/台湾にもあった混浴風呂/混浴を学校の授業に/ブラジル移民が感じた日本のソウル
混浴温泉ベスト50リスト

あとがき

書誌情報

読み仮名 ダカラコンヨクハヤメラレナイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610285-1
C-CODE 0226
整理番号 285
ジャンル 国内旅行
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/08/31

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年11月号より 今こそ「混浴復権」宣言!

山崎まゆみ

混浴というと、一般的にはどのようなイメージを持たれているのだろうか? 少なくとも私には、実り多い、人との幸せな出会いの場所である。本書は、そんな混浴への思い入れたっぷりの私が十年に及ぶ全国各地を遍歴した思い出を振り返りつつ、楽しみながら書いた一冊だ。
中身を少しかいつまんで紹介すると――屋久島の海中温泉で女子大生に囲まれてしまい温泉から出るに出られなくなった青年に遭遇した話、屋久島の筋骨隆々の古老から入浴マナーが悪いと野天風呂でどやされた思い出、熊本の山里に湧く素朴な満願寺温泉では少年達と夢を語らい、知床半島の海中温泉では漁師と恋におちた……等々、実際に混浴温泉で起こった出来事の数々、そしてハプニング続きの体験談。
また、混浴の歴史にも迫ってみた。混浴の歴史とは日本の温泉の歴史そのものである。温泉は湯が湧くところに動物や人が入り、湯に浸かり効果を知った者達の口コミで評判が広がり湯船ができた。この頃は当然、湯船は一つで、即ち混浴。
千三百年以上も前の記録『出雲国風土記』には、老いも若きも男も女も和やかに温泉に入ったという描写が残っている。人がたくさん来るからと、自然にお土産物屋や宿が出来ていった。これが現在の温泉街の成り立ちである。もちろん、最初の湯船を中心に温泉街が出来たから宿には風呂などなく、みな混浴の共同浴場に入っていた。大まかに言えば、宿に風呂が付いたのは大正後期に入ってからのこと。今も湯治場に混浴風呂が残るのは、元々の形をそのまま残しているからだ。
では、なぜ、それが現在のような男女別の風呂やプライベート風呂が主流になったのか。
それは幾度となく発令された混浴禁止令による。最初に禁止令を出したのは松平定信。混浴が当たり前だった江戸時代に「風紀の乱れ」という理由で禁じた。しかし人々はお構いなしに、のびのびと混浴を楽しみ続け、結局はそのまま変わらずじまい。しかし幕末になると、開国を求めてやってきたペリーをはじめ多くの外国人が、男女とも混じって風呂に入る姿を「野蛮」と見なした。日本としては西洋を真似て近代国家を目指すために、野蛮な風呂の習慣は排除しなければと、また厳しく禁じることに。その結果、徐々に淘汰されていき、ごくごく数少なくなってしまったのだ。
現在の温泉は本来の楽しみを失ってしまっているように思う。かつて日本人にとって温泉とは、日々の生活を忘れさせてくれる“晴れの場”であり、賑やかな“歓楽”であった。何より男女などという垣根を越えた心の交流の場として存在した。きっと、今温泉に求められる“癒し”などという言葉以上に含みのある場、そしてどんな人も出来事も受けいれてくれる懐深い存在だったのだ。
減りゆく混浴を惜しみつつ、今に残る混浴を少しでも復権できれば、と綴ってみた次第……。

(やまざき・まゆみ 温泉ライター)

蘊蓄倉庫

なぜ混浴は廃れていったのか

『出雲国風土記』には、千三百年近く前の温泉場の風景が記されています。それによると、自然に湧き出た湯に「男も女も、老いたるも若きも」みな一緒になって和やかに浸かっていたのだと……。混浴の歴史とは日本の温泉の歴史そのものといってもいいでしょう。考えてみれば、明治期まで日本人にとって公衆浴場といえば混浴は当たり前でした。
 では、なぜ現在のような男女別やプライベート風呂が主流になってしまったのか。それは幾度となく発令された混浴禁止令によるものでした。最初に禁止令を出したのは江戸後期の松平定信によって、「風紀の乱れ」が理由。しかし、江戸っ子はお構いなしに混浴を続けていたとか。決定的となったのは幕末から明治にかけてでした。ペリーをはじめ多くの来日外国人が、男女が混じって風呂に入る姿を「野蛮」と見なしたのです。日本としては西洋を真似て近代国家を目指すために、野蛮な風呂の習慣を排除しなければと、厳しく禁じることになったというわけです。
掲載:2008年10月25日

著者プロフィール

山崎まゆみ

ヤマザキ・マユミ

1970年、新潟県長岡市生まれ。駒沢大学文学部卒業。新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどで温泉の魅力を紹介するフリーライター。現在まで30カ国、950カ所以上の温泉を訪ねる。2008年には国土交通省が任命する「YOKOSO! JAPAN大使」の一人に。著書に『おひとり温泉の愉しみ』(光文社新書)、『恋に効く パワースポット温泉』(文藝春秋)、『ようこそ! 幸せの混浴温泉へ』(東京書籍)、『だから混浴はやめられない』(新潮新書)、『ラバウル温泉遊撃隊』(新潮社)など。温泉情報をブログで発信中。

山崎まゆみ オフィシャルサイト (外部リンク)

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