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眠れぬ夜の精神科―医師と患者20の対話―

中嶋聡/著

814円(税込)

発売日:2010/05/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

「眠れないんです」「会社に行くのが辛い」「知らない人の声が……」病因は? 治療法は? 薬の副作用は? 「心の病」20の疑問にこたえる。

「眠れない」「会社に行くのが辛い」「気がつくと手首を切ってしまう」――さまざまな症状に苦しみ、精神科を訪れる人々。しかし、そこでは実際にどのような「治療」が行われているのか、意外と知られていません。精神科医が、豊富な臨床経験をもとに、診察室でのやりとりを再現。原因は? 治療法は? 薬の副作用は? 誰もが知りたい「心の病」に関する二十の疑問に、医師が本音でこたえます。

目次
はじめに
I 心の病気に関する12の疑問
1 「眠れないんです」――不眠症
2 「ゆううつで、朝起きて会社に行くのが辛い」――うつ病
3 「車を運転していると、突然胸が締めつけられて、死んでしまうのではという恐怖に襲われる」――パニック障害
4 「一人でいるのに、知らない人の声が聞こえるんです」――統合失調症
コラム(1) 依存症について
5 「妻が急におしゃべりになり、また怒りっぽくなってきた」――躁病
6 「人前に出るとドキドキして、顔が赤くなる。会議の日などは逃げ出したくなる」――対人恐怖症
7 「あちこちで何でもないと言われるが、それでも癌じゃないかと心配だ」――心気神経症
8 「馬鹿らしいとわかっていながら、鍵をかけたかどうか気になって何度も確認してしまう」――強迫神経症
コラム(2) 不登校について
9 「最近顔のほてりやのぼせが気になる。更年期と関係あるんでしょうか」――更年期障害
10 「上司との関係がうまく行かず、毎朝仕事に行くのがゆううつ」――適応障害
11 「彼が毎日きまった時間に電話をくれないと、見捨てられた気がして不安。何度か薬をまとめ飲みして救急治療室に運ばれてます」――境界性人格障害
12 「気がつくと手首を切ってしまっている」――自殺念慮・自殺企図
コラム(3) 性同一性障害について
II 治療に関する8つの疑問
1 「僕の病名は何でしょうか」――病名について
2 「原因は何でしょうか」――原因について
3 「治りますか」――転帰について
4 「遺伝しますか」――遺伝について
コラム(4) 沖縄で精神科を開業するということ(その1)[個人的体験編]
5 「薬はいつまで続けるのでしょうか」――服薬について
6 「薬をのんでいて妊娠しても大丈夫ですか」――妊娠について
7 「カウンセリングを受けたいのですが」――カウンセリングについて
8 「今かかっている医師は話をほとんど聞かないで薬を出すだけなので、病院を変わりたいのですが」――転院について
コラム(5) 沖縄で精神科を開業するということ(その2)[精神医学編]
おわりに

書誌情報

読み仮名 ネムレヌヨルノセイシンカイシトカンジャニジュウノタイワ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610367-4
C-CODE 0247
整理番号 367
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

書評

波 2010年6月号より やさしい精神科入門

中嶋聡

私は、沖縄県でクリニックを開業している精神科医です。日々診療していると、患者さんからいろいろな質問を受けます。
質問の多くは、専門家からすればあまりにも当然と思える事柄であるため、心の病について解説している本などにも、その“答え”にあたるようなものは載っていません。つまり、患者さんが本当に知りたいことと、一般的な医学知識とにギャップがあると感じていました。
たとえば、
「睡眠薬はくせになりませんか」
「うつ病は遺伝しますか」
「今かかっている先生は薬を出すだけで話を聞いてくれないんですけど……」
などです。
私は本書で、このような、診察場面でよく聞かれる病因や治療法などについての二十の質問をとりあげ、臨床医の立場から答えました。
精神科の診療というものが実際にはどのように行われるものなのか、一般には知られていません。そのために、精神科の受診に対して不安を感じている方もいることでしょう。診療のひとこまを公開することで、そうした心理的負担の軽減に役立てればと、それらの質問に対して、実際に私が診察室で答えている通りの言葉を使いながら、解説しています。
「うつ病」とか「パニック障害」という病名は、すっかり一般にも知られるようになり、患者さんの方から「ネットで調べたらSSRIが効くと書いてあったので、出してください」などと、薬を指定して希望されることもしばしばです。しかし、専門の立場からみると、必ずしも正確な知識が流通しているとは言えません。
たとえば、最近うつ病が増えたとよく言われます。しかし実際には増えてはいません。増えているのは、本当の意味のうつ病とは言えないような、現代に特有の「抑うつ状態」や「軽うつ」です。それらの多くは「適応障害」と診断するのが適当な病態です。うつ病と適応障害はどう違うのか? それぞれに対して、家族や上司・同僚はどう対応すればよいのか? それは「心の病」なのか、それとも単なる甘えや怠けなのか? 本人のペースを尊重しなくてはいけないのか? こうした疑問にも答えています。
本書を読んでいただければ、精神科の病気と治療について、一通りの知識が得られるものと思います。専門用語はできるだけ使わず、日常の言葉で理解していただけるよう心がけました。精神科を受診したいが迷っておられる方々や、精神医学に関心のある方々、そして医学生にも研修医にも、看護学生にも役立つ内容であると信じています。
本書をきっかけにして、多くの方が精神科を身近に感じ、気軽に受診して相談できるようになることを期待しています。

(なかじま・さとし 精神科医)

担当編集者のひとこと

精神科の“イロハ”を知る

 日本では、平成10年から現在に至るまで自殺者数が3万人/年を超えています。また、うつ病・躁うつ病など「気分障害」の総患者数も増え続け、2008年にはついに100万人を超えたという統計も発表されています。
 このような数字から、いわゆる「心の病」に悩み、精神科の門を叩く人があとを絶たない状況であることは、想像に難くありません。しかし中には、「眠れない」「車を運転していると、突然胸が締め付けられる」「気が付くと手首を切ってしまう……」といった明確な病識があるにもかかわらず、精神科に行くのをためらってしまう人もいるようです。なぜでしょうか? その理由はおそらく、精神科でどのような診察・治療がなされるのか、「体の病院」に比べてよく知られていないからでしょう。「薬を処方されたけど、副作用は大丈夫なのか?」「カウンセリングの効用は?」「病気の原因は何か? 遺伝はするのか?」など、ごくごく初歩的な疑問の“答え”を知りたいという人は多くいるはずです。しかしそれを知る機会は多くありません。
 本書は、現役の精神科医が豊富な臨床経験をもとに、診察室でのやりとりを再現しています。実際の医師と患者の応答が紹介されているので、専門知識を問われることはなく、まさに「本当に知りたいこと」が書かれています。ひとり思い煩うよりは、勇気を出して精神科をのぞいてみよう――通院のハードルを下げ、そう思わせてくれること請け合いの一冊です。

2010/05/25

著者プロフィール

中嶋聡

ナカジマ・サトシ

1955(昭和30)年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。医学博士。精神科医。1996年、沖縄県に「なかまクリニック」を開業、現在に至る。著書に『「心の傷」は言ったもん勝ち』『眠れぬ夜の精神科 医師と患者20の対話』『「新型うつ病」のデタラメ』など。

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