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文士の私生活―昭和文壇交友録―

松原一枝/著

748円(税込)

発売日:2010/09/17

  • 新書

昭和戦前から戦後――。肉声、日常、秘話でつづる、幻の文学史。

戦後作家を輩出した伝説的同人誌「こをろ」とその時代、阿川弘之はじめ若き文士の卵たちとの交友にはじまり、広津和郎、坪田譲治、川端康成ら文豪たちとのざっくばらんな付き合い、白洲次郎、森茉莉、安部公房、亀井勝一郎、遠藤周作、有吉佐和子、そして宇野千代まで、昭和史を彩った文士たちの素顔、肉声、そして秘話――九十四歳女性作家がつづる貴重な証言録。

目次
献辞
第一章 同人誌「こをろ」とその時代
辰野隆の極上のオーバー/矢山哲治の文学めきき/阿川弘之さんのこだわり/大様な中村地平/阿川さんと麻雀同人たち/古谷綱武との輪講会
第二章 文士たちの横顔~戦時下にて
円地文子はただの奥さん/宇野さんは存在そのものがいい/坪田譲治の「家計簿」/儲けにならん方の小説家/広津和郎の萬暦赤絵皿/菊池寛の「中央公論」撲りこみ/文士たちの戦地徴用/戦時色強まるなかで/隣組の文化人たち
第三章 文士たちの横顔~戦中から戦後へ
月刊誌の編集者に/瓢箪から駒の処女出版/坪田譲治の妄想/エレベーターで見送った川端康成/甘粕正彦との邂逅/「髯の戦車隊長」と司馬遼太郎/一高が縁で結婚/東京大空襲を焼け残る/「こをろ」同人たちの復員/白洲次郎のコーヒー
第四章 戦後作家の人間模様
下北沢の文化人たち/森茉莉の純な心/中村汀女の平手打ち/安部公房と「現在の会」/島尾敏雄と「藤十郎の恋」/思想的立場を超えた友情/帰国した阿川夫妻と志賀直哉邸へ/亀井勝一郎と年始の宴会/狐狸庵先生の母親崇拝/間違って文芸批評家に/有吉佐和子の慟哭
第五章 女流・宇野千代、男女のこと
中村天風の講演会/山口県人は嫌い/重苦しいぐらい世話焼き/梶井基次郎、末期の懇願/宮田文子を書けない理由/女は常に愛する側に/北原武夫との別離の真相/スタイル社の破産と借金/鳩山一郎の秘密の子/「生きていく私」
附記

書誌情報

読み仮名 ブンシノシセイカツショウワブンダンコウユウロク
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610386-5
C-CODE 0295
整理番号 386
ジャンル ノンフィクション
定価 748円

蘊蓄倉庫

同人誌が支えた昭和文学

 本書で描かれている同人誌「こをろ」は、阿川弘之、島尾敏雄、小島直記など多くの戦後作家を輩出。同じように、全国津々浦々の同人誌が、新人登竜の場として昭和文学を支えました。しかし平成以降は、新人賞の乱立、ネットやケータイ小説の流行などもあり、衰退の一途をたどっています。物書き同士の容赦ない批評、思想や立場を超えた友情など、同人誌を介した文壇交友も、やがては幻となるのかもしれません。
掲載:2010年9月24日

担当編集者のひとこと

生身で語る異色の昭和文学史

 文壇もの、といわれるジャンルの本は、文芸評論家や編集者の手によって数多く刊行されています。しかし、前者の主調音が文学史であり、後者の場合は、どことなく作家を介した手柄話であったりするのは、いたしかたないところでしょう。
 本書は1930年代から1990年前後にかけて、昭和期に光彩を放った作家たちとの付き合いのなかで、著者自身が実際に見聞きしたエピソードを中心につづられています。
 文学史に名を残した文士たちの肉声、また文名高きを離れての日常とは、どのようなものだったのか――昭和戦前から戦後にかけて約半世紀、前著『幻の大連』が話題になった94歳女性作家による、もう一つの時代への証言です。

2010/09/24

著者プロフィール

松原一枝

マツバラ・カズエ

1916(大正5)年、山口県生まれ。大連で少女時代を過ごし、同人誌「こをろ」で文筆活動を開始して以来七十余年。『お前よ美しくあれと声がする』で田村俊子賞受賞。主な著書に『改造社と山本実彦』『大連ダンスホールの夜』『中村天風 活きて生きた男』『幻の大連』など。

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