ホーム > 書籍詳細:「常識」としての保守主義

政治とは、難儀なものである。「国政に不満を持つ人こそ読むべき書」――石破茂氏絶賛!

「常識」としての保守主義

櫻田淳/著

799円(税込)

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発売日:2012/01/16

読み仮名 ジョウシキトシテノホシュシュギ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-610452-7
C-CODE 0231
整理番号 452
ジャンル 政治
定価 799円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/07/20

保守主義とは何か。頑迷に旧いものを守る思想ではない。右翼やタカ派とイコールではない。ましてや、特定の国や人種を排除する偏狭な姿勢でもない。伝統を尊びつつも、柔軟かつ大胆に新しいものを取り入れ、中庸を美徳とする――その本質を、成立の歴史や、ド・ゴール、吉田茂等の代表的保守政治家から学び、これからの可能性を探る。混迷を極める政治状況を考えるうえで必要な視点を提示する、濃厚かつ刺激的な一冊。

著者プロフィール

櫻田淳 サクラダ・ジュン

1965(昭和40)年宮城県生まれ。政治学者。東洋学園大学教授。北海道大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。第1回読売論壇新人賞、第1回正論新風賞。著書に、『国家への意志』(中公叢書)、『漢書に学ぶ「正しい戦争」』(朝日新書)など。

書評

波 2012年2月号より 大らかな自信を

谷垣禎一

子供の頃、父親に手を引かれて、どこかの桟橋に南氷洋に出航する捕鯨船を見送りに行ったことがある。捕鯨船は日章旗を掲げ、見送る人たちも日章旗を振っていた。
なぜ捕鯨船を見送るのか。若い人には、もはや分からないだろう。昭和二十年代の日本はまだ食糧難にあえいでいた。また、敗戦による逼塞感のようなものも国民には強くあった。
そんな時に、貴重な蛋白源である鯨を獲りに遠方に行く捕鯨船団は、一種の希望の象徴だった。日の丸を掲げた船の姿は、子供心にもどこか誇らしく思えたものである。
若い頃から「革命」「革新」という言葉やスタンスに違和感があったのは、こんな体験があったからかもしれない。
今もそうだろうが、私が大学生だった昭和四十年前後において、「保守」という言葉のイメージは決して良いものではなかった。保守主義の祖とされるエドマンド・バーク(英国の政治家・政治思想家)も、当時の大学生には決して受けのいい存在ではなかった。
もちろん若者が権威に反発、反逆するのは不自然なことではない。しかし一方で伝統や郷土愛、祖国の歴史を簡単に否定するような立場には賛同しかねた。それはあの船を見送った体験と、何となくそぐわないものだったのである。
当時も今も「革新」は一見格好がいい。ともすれば、一つの政策や方針が、旧弊を一掃する万能薬であるかのような幻想が振りまかれることがある。近年でいえば「政権交代すれば全てがうまくいく」というのが代表例であろう。
もちろん大規模な変革が必要な時はあり、それを為すのも政治の役割である。だが、それだけで全てうまくいくほど社会は単純ではない、というのが保守主義の立場である。
民主党が政権交代を実現させた背景には、過去の否定という面が多分にあった。その全てが間違いだったとは言わない。彼らなりに感じた問題点を変えようとしたのだろう。
そうして生れた鳩山内閣と次の菅内閣のアイデンティティは「自民党と違うことをやる」、すなわち「反自民」であり、その点では良くも悪くも一貫していた。その象徴が鳩山氏の「最低でも県外」発言である。
ところが野田内閣においては、深刻なアイデンティティ・クライシスに陥っているように見える。自民党から代わったものの、もはや何をしていいのか分からない。「反自民」というアイデンティティは喪失してしまっている。かといって、それ以外の核は存在していない。目下の政権の混迷は、このクライシスによるものだと考えていいだろう。
大震災により、日本は大きな挫折を味わい、自信を喪失している。このような時にこそ保守主義は改めて大きな意味を持つ。それは本書で取り上げられている指導者たちに対する後世の評価が示している。ド・ゴール、チャーチル、吉田茂といった先人達は祖国の挫折の後に手腕を振るい、素晴らしい実績を挙げた。彼らの思想の基本には保守主義があった。
保守主義とは、自国のアイデンティティを尊重し、その価値を謙虚に見つめ直す振る舞いでもある。「伝統を尊重し、郷土やそこに暮らす人たちを愛しながら、改めるところは改めていく姿勢」と言ってもいい。「保守」という言葉に抵抗がある人でも、この姿勢には異論を挟まないのではないか。
今必要なのは、こうした行為から「大らかな自信」を国民が共有することなのである。
「革新」と比べると、「保守」は一言では説明しづらいところがある。それゆえに誤解され、不当な評価を受けることも少なくない。その思想を非常に論理的にまとめた本書を通して、保守主義への偏見がなくなり、多くの人が共有できる「常識」となっていくことを願っている。

(たにがき・さだかず 自由民主党総裁)

目次

 プロローグ
第一章 保守主義とはなにか
保守主義の意義/エドマンド・バーク/右翼と保守は同じではない/自由主義との親和性/守るべき「美風」とは/憲法の肝は第一章である
第二章 保守主義の条件
条件I・「自由」の擁護
自由とはなにか/独立自尊の精神/小野塚喜平次の原則/「カワイイ」の意義/政治とは難儀なもの/嫉妬が自由を蝕む

条件II・「柔軟性」と「ダイナミズム」
「変革」より「適応」を/老舗企業の姿勢/経験と智恵/硬直性が身を滅ぼす/草食系男子の脆さ/変わらなければならない理由

条件III・「中庸」の美徳
「……しさえすれば」の安直さ/排他的ではいけない/白黒を決めつけない/名誉価値と福祉価値/左翼の言説はなぜ粗雑なのか/「甘み」と「苦み」を基盤に

国を統合するものは何か
統合とは何か/日本の安定性/国家における三つの体系/差別は統合を阻害する/統合を考えない日本人/皇室は統合の中核
第三章 保守政治家の肖像
シャルル・ド・ゴールの「偉大さ」
フランスの偉大さ/アルジェリア独立戦争/国民に対する信頼/「暴力」は誰のために/外交における自律性/文化を資産に/財政再建と経済復調/質素な晩年

ウィンストン・チャーチルの「適応力」
辺境から生まれた宰相/変節漢だったか/なぜ「最も偉大な英国人」なのか/チェンバレンへの批判/田園生活への愛着/挙国一致の意味/冷戦への適応/大英帝国の落日

ロナルド・レーガンの「楽天性」
自信と善意の復活/米国における自由/誰を範としたか/「強い米国」の統合/米国の保守主義が持つ怖さとは/レーガン・デモクラット/正義の保安官/新自由主義は敗れたのか

吉田茂の「野趣」
「帝国」と「帝国」以後を結ぶ存在/長谷川如是閑の吉田評/自由主義への志向/財閥への同情/異質な他者を取り込む/軍事を軽視せず/日本民族は優秀である/明治の再現という試み

コンラート・アデナウアーの「誠実」
四つの体制を生き抜いた政治家/ナチスの総括/小さなドイツ/奇跡の経済復興/西側社会のメンバーとして/再軍備の論理/再統一に着手/誠実と率直
第四章 保守主義の可能性
「敗北」と「挫折」を背負い/庭園師のように/聖典を作らず/「信頼」と「懐疑」の狭間/思いやりは難しい/「権謀術数」の意味を説けるか/作法の重要さ/求められる視野の広さと感受性/日本的「無常観」の意義/「統治者」としての強烈な自覚を/観念と戯れない
 エピローグ――謝辞に代えて

担当編集者のひとこと

勝手に期待して勝手に失望しない

 日本の首相がコロコロ変わることを他人事のように批判するメディアには違和感があります。だって発足したときに期待できるようなことを言っていたのは、あんたじゃないか、と思うのです。政権交代後は特にそういう違和感をおぼえる機会が増えました。政権交代すればオールオッケーみたいなことを言っていた人が、同じ口で「民主党は力不足」「官僚をうまく使え」などと言うのが信じられません。
 このへんのことに触れて、『「常識」としての保守主義』では、次のように書いています。

「近時の政治評論には、民主党内閣二代に対する評価が典型的に示すように、『政治家に対して勝手に期待し、勝手に失望する』風情のものが矢鱈に多いのである」「政治を観察するためには、保守主義を含めて、一つや二つの『視点』の意味を理解することが、その『作法』として大事になる」

 原理原則を持たぬ政治家が多いのと同様、原理原則を持たぬメディアや評論家が多いために、「勝手に期待し、勝手に失望」という不毛なことが繰り返されるのではないでしょうか。
 本書は、保守主義の成立、歴史から代表的政治家の足跡、そしてこれからの可能性について述べた骨太の入門書です。
 この一冊を読むと、一つの「作法」が確実に身につきます。
「○○さえすればオールオッケー」といった安易な政治家とその提灯持ちにウンザリという方には、ぜひ一読をお薦めいたします。

2012/01/25

蘊蓄倉庫

ド・ゴールの晩年

 フランスのシャルル・ド・ゴール元大統領は、引退後、パリから260キロ離れた小さな村の二階建て木造住宅に隠居しました。首相や大統領を歴任した立場から得られるはずの恩給はすべて辞退し、陸軍准将としての年金だけで暮したそうです。『大戦回顧録』等の著書による印税は全て自ら設立した障害児福祉財団に寄付していました。
 辞めたあとも無駄に生臭い人や、辞めるといって辞めない人とはえらい違いです。
『「常識」としての保守主義』には、ド・ゴールの他、ウィンストン・チャーチル、ロナルド・レーガン、吉田茂、コンラート・アデナウアーといった保守政治家の足跡がまとめられています。
掲載:2012年1月25日

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