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尼さんはつらいよ

勝本華蓮/著

770円(税込)

発売日:2012/01/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

知られざるオンナの世界。渡る尼寺は鬼ばかり――。現役尼僧がその“素顔”を告白。

尼さんは、清く、正しく、美しい――なんてイメージは大昔の話。その実像は大きく掛け離れたものである。絶滅の危機に瀕している尼寺、女同士のドロドロとした人間関係、残念な修行生活、男僧に狙われる尼……。志ある尼さんは今、理想と現実のギャップに悩み、居場所を求めて彷徨っている。男尊女卑の仏教界、受難の歴史、今どき出家する女性のタイプなど、現役の尼僧が知られざる素顔に迫る。本邦初の現代尼僧論!

目次
まえがき
尼さんは歩く文化遺産/私も尼寺から「出家」した/尼寺は女の終着駅/間違いだらけのイメージ
第一章 尼さんとは誰のことか――尼僧の歴史と現状
尼さんは「お坊さん」じゃない/悪条件をのんで比丘尼僧団ができた/僧団メンバーになるための受戒儀式/日本尼僧史はいばらの道/石をなげても尼さんに当たらない/名ばかり尼さんと休眠尼僧/本格派の尼僧をめざすなら/で、尼さんとは誰のことなのか?/仏教界は男女共同参画社会ではない/絶滅の危機に瀕する尼寺
第二章 お寺と縁のない家に生まれた――在家の頃
前世の因縁、かもしれない/偉くなりたい/オンナ三界に家なし、ならば一人で/デザイナー修業時代/ハワイの青空と輪廻/独立後、仏教に引き寄せられ
第三章 仏縁に導かれて出家したものの――出家と得度
「在家のお坊さん」との出会い/いろんな不可思議体験/独学で仏教の勉強を始める/会社をたたんで出家の道へ/インド仏跡参拝旅行/比叡山が私をよんでいる/ひとりで自己流の修行/得度へ
第四章 尼になるための修行――比叡山での日々
自分で頭を丸める/比叡山行院での“修行”/行院生活は体力勝負/世間の常識はお捨てなさい/修行は、お坊さんの職業訓練だった/出家後の進路
第五章 渡る尼寺は鬼ばかり――尼寺の虚像と実像
尼寺を手伝う/尼寺に「営業」は欠かせない/由緒ある尼寺に入る/「精進料理」は冷凍庫の中/籠の中の尼寺生活/行儀作法は世間以下/渡る尼寺は鬼ばかり/物言わぬは腹ふくるるわざなり/尼寺からの出家/尼寺と縁を切る/尼僧から仏教研究者へ
第六章 尼さんはつらいよ――尼僧をめぐる諸問題
家の都合で尼さんになる/ピンチのときの中継ぎ尼さん/寺庭婦人という立場/尼僧も結婚してよい/お坊さん好きで、尼さんに/イケメン坊主を誘惑する尼さん/お坊さんに狙われやすい尼さん/色眼鏡でみられる若い尼さん/師僧の奥さんは「上司」/有名寺院も楽じゃない
第七章 今どき尼さんになる人――尼僧の傾向と対策
(1)【デモシカ系さんへ。現実逃避ではムリ】
住職はお寺の中の絶対権力者/後継者難でも弟子はとらない/弟子を追い出すのは簡単/尼さんの老後は安泰じゃない/「癒されたい人」より「癒す人」が必要
(2)【ナルシカ系さんへ。アナタは伝統継承者】
本業は占い師か霊能者/密教の修法を使う尼さん/まるで陰陽師の世界/気がついたら、何となく尼僧/主婦だけど、ときどき尼さん/寺庭婦人だけど、尼さん
(3)【ヤルシカ系さんへ。道は自分で切り開け】
学問好きが高じて尼さんに/海外の僧院に飛んでいく尼さん/「ガラスの天井」どころじゃない
第八章 「ヤルシカ系尼さん」へのヒント――新・尼僧の生き方
仏教の修行とは何か/上座仏教の瞑想、大乗仏教の坐禅/修行共同体とリトリートの流行/瞑想センターを、ちょこっと体験/スリランカで「ナーモーアミタポー」/上座仏教の比丘尼僧団復興の動き/チベット仏教と比丘尼僧団/尊敬される台湾の尼さん/経済的自立と学問のすすめ
あとがき

書誌情報

読み仮名 アマサンハツライヨ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610453-4
C-CODE 0215
整理番号 453
ジャンル 宗教
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/07/20

インタビュー/対談/エッセイ

波 2012年2月号より 業深き尼さんの告白

勝本華蓮

「寺の生まれでもないのに、今どき尼さんになるなんて、チーとおかしいわ。業が深いんやな」
これは友人の尼さんが、お寺の近所のオバサンから言われたセリフである。二十年以上前に聞いた話だが、妙にリアルに頭に残っている。まったくその通りだと、その後自分も尼さんになって、“業の深さ”を痛感したからだ。そう、私もチーと……どころか、相当おかしいのかもしれない。
私は、普通のサラリーマン家庭に生まれた。学校を出た後、広告デザイナーになり、二十八歳で独立、順風満帆だったのに、数年後、会社をたたんで、比叡山の麓に引っ込んでしまった。
それもこれも一人の“在家のお坊さん”との偶然の出会いがきっかけだった。私の生きる道は仏門しかないと思い込み、“尼さん”を志した。
それから自己流の修行をして、大学の通信教育で仏教を学び、天台宗の京都青蓮院門跡で得度した。頭を丸めて、比叡山の行院でハードな“修行”もしたが、縁あって、他宗の尼寺に移り住んだ。正真正銘の由緒正しい尼寺である。
ところが、「これが修行?」「これなら在家の方がマシ」という、なんとも残念な経験をして、不本意ながら尼寺から「出家」することになった。
そこから一念発起し、古代インドの言葉(梵語やパーリ語)の勉強を始め、四十歳で京都大学大学院に入学、そして仏教学者になった。
そもそも私は、浄土信仰から仏教と縁ができたが、勉強するうちに、仏教の本源を求め、昔のインドで活動されたお釈迦様を師と仰ぐようになった。先ほどのオバサンの言葉を借りれば、それもきっと、前世の業のせいだろう。
初期仏教と日本仏教では、教義も違うが、寺院のあり方、僧侶の生き方がうんと違う。日本仏教は世界でも特殊なのだ。それは戒律の問題である。
私は、戒律を本格的に勉強したことがあり、二、三の宗派に関わり、尼寺を手伝ったこともある。おまけに上座仏教の本場であるスリランカの僧院に潜りこんで生活したこともある。だからなのか、日本の尼寺の現状や尼さんの問題点を、客観的に見ることができる。
得度して二十年以上。その間に見聞きした尼僧さんのホントの話を、本書で沢山紹介している。お寺に住んでいない私だからこそ、そして今だからこそ書ける話を……。
お寺の中では世間とは別の価値観に縛られる。でも生活は世俗と何も変わらず、尼寺が特段「清く正しく美しい」わけでもない。残念ながら。
人生の苦から逃れたくて、いっそ尼さんの世界に飛び込もうと考えている女性は少なからずいる。でも、そこには「尼さんはつらいよ」の世界が待っている。それをお知らせしようと本書を書いた。
尼僧に憧れる方、尼寺の中を覗いてみたい方、仏教に惹かれる方、本書が何かの参考になればと願っています。

(かつもと・かれん 尼僧)

担当編集者のひとこと

尼さんの告白

 以前からずっと尼さんのことが気になっていました。
「尼寺の中は、どんなところなのだろうか?」
「尼さんは普段何をしているのだろうか?」
「どんな女性が尼さんになるのだろうか?」
 そんなことを知りたいと、常々思っていました。
 日本では古くから尼さんが存在していたし(なにせ日本初の出家者は女性です)、今も有名な尼さんが活躍しています。しかも『宗教年鑑』(文化庁編、平成21年版)によると、仏教の「教師」の資格を持つ女性は全体の約48%と、すでに半数に迫る勢い(この数字にはちょっとしたからくりがあるのですが、詳しくは本書で)。
 なのに、尼さんの実態についてはあまり語られません。
「そのあたりの事情について詳しく語ることのできる人はいないかな」とずっと探していて、ようやく見つけたのが、本書『尼さんはつらいよ』の著者、勝本華蓮さんです。
 勝本さんはお寺にも仏教にも縁のない在家出身。広告デザイナーとして活躍、会社も起業し順風満帆だったのが、さまざまな縁もあり、36歳のときに天台宗で得度、「尼さん」になりました。
 それから道場や尼寺で修行をするのですが、そのときの経験が本書では克明に記されています。
 どうやらその実態は、われわれ外部の人間が考える「清く、正しく、美しく」といったイメージとは、いささか、いや、大きく違うようで……。
 詳しくは本書に譲りますが、そこには尼寺の実情から、「お坊さん」にはわからない苦悩を抱える尼さん、志あるすばらしい尼さんまでをレポートしています。現役尼僧が語るその素顔はいかなるものか――。本邦初の現代尼僧論です。

2012/01/25

著者プロフィール

勝本華蓮

カツモト・カレン

尼僧。1955(昭和30)年大阪府生まれ。デザインの仕事に携わるが、1991年、天台宗青蓮院門跡にて得度。京都大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。専攻はパーリ仏教。東方学院講師。著書に『座標軸としての仏教学』『大乗仏教の実践 シリーズ大乗仏教3』(共著)など。

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