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「孤独死」から「自立死」へ。おひとりさまでもなぜ最期まで元気なのか?

ひとりで死んでも孤独じゃない―「自立死」先進国アメリカ―

矢部武/著

734円(税込)

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発売日:2012/02/17

読み仮名 ヒトリデシンデモコドクジャナイジリツシセンシンコクアメリカ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-610456-5
C-CODE 0236
整理番号 456
ジャンル 社会学、地理・地域研究
定価 734円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2012/08/17

身体が悪くなっても、子供が近くにいても、アメリカの老人は最期まで極力ひとりで暮らそうとする。個人の自由と自立こそ、彼らが最も重んじている価値だからだ──。高齢者専用住宅、配食サービスのNPO、複数世帯がつかず離れずで暮らすコーハウジングなど、独居老人と社会の紐帯を確保するためのさまざまな取り組みを紹介すると共に、「自立死」を選ぶアメリカ人の姿から、日本の高齢者支援のあり方も考える。

著者プロフィール

矢部武 ヤベ・タケシ

1954(昭和29)年埼玉県生まれ。1970年代の渡米以降、日米の両国を行き来し、取材・執筆活動を続けている。米ロサンゼルスタイムス紙東京支局記者を経てフリーに。著書に『アメリカ病』『ひとりで死んでも孤独じゃない―「自立死」先進国アメリカ―』などがある。

目次

プロローグ
第一章 一人で生きることを前提にした社会
配食サービスのボランティア/サービス受給者は「クライアント」/配食サービスが安否確認の手段に/高齢者専用アパートで自立して暮らす人たち/ニューヨークでは半数以上が一人暮らし/大都会の自殺率は低く、田舎は高い/葬儀の生前予約をする人も
第二章 独居死、必ずしも「孤独死」ならず
社会底辺層の人々が集う場所/ソーシャルワーカーの役割/日本人女性スタッフが見た独居者専用住宅/貧しい独居者でも餓死しない理由/孤独死した人たちにも人間的な尊厳を/一人で亡くなっても「孤独死」とは限らない
第三章 不幸な結婚生活による「同居の寂しさ」
離婚の寂しさでうつ病になった中年男性/寂しさが健康被害の原因となる/「リビング・トゥゲザー・ロンリネス」/結婚前のお試し同棲は「間違い」である/独身と既婚者どちらが健康的で幸せか/老後の不安で離婚できない日本人の場合
第四章 100歳を過ぎても働き続けたい
社員の平均年齢74歳の高成長企業/正確で丁寧な仕事ぶり/必要とされているから懸命に働く/シニアセンターのダンス講師は98歳/いくつになっても頭と体を使うことが大切
第五章 独居者の孤立を防ぐ地域支援体制
独居高齢者の自立を支援するシニアセンター/食事、買い物などの支援サービス/家事や買い物、通院支援などをする自治体/自宅で突然意識を失ってしまったら……/独居者に安否確認の電話をするボランティア/独居高齢者の話し相手をするボランティア/NPO運営の資金源
第六章 コーハウジングという住み方
単身世帯と家族世帯が共存する集合住宅/助け合うだけでなく楽しむ場所/コーハウジングを広めた2人の建築家/独居者が住みやすい生活環境づくり/「米国の方が住みやすい」と言う日本人被爆者
第七章 「おひとりさま」の不安を取り除くために
遺品整理屋は見た/日本人の社会的孤立度は先進国で最悪/先進各国の取り組み/餓死や孤独死を防ぐのは政府の仕事/東京都大田区の試み/家族代行支援サービス/本人の意識改革も必要
エピローグ
主要参考文献

インタビュー/対談/エッセイ

波 2012年3月号より 「孤独死」から「自立死」へ

矢部武

日本の武士道精神をテーマにした映画「ラストサムライ」の最後に、日米の死生観の違いを表現した印象的なシーンがある。天皇がオルグレン大尉(トム・クルーズ)に、政府軍との死闘の末に死んだ勝元(渡辺謙)について、「どんな死に方をしたのか教えてくれ」と尋ねると、大尉は「どう生きたかを申し上げましょう」と答えた。
今回、私は日本と米国で孤独死の取材をしながら、この場面を何度も思い出した。なぜなら、日本人は「どう死ぬか(死んだか)」にこだわるが、米国人はいつも「最後までどう生きるか(生きたか)」を考えるからだ。そして、この違いが両国の孤独死に対する考え方や対応の仕方にも現れているように感じた。
日本では、誰にも看取られずに亡くなるのは“最大の不幸”のように考えられているが、それは違うと思う。そもそも誰かに看取られて死ぬことが幸せとは限らない。所詮、人間は一人で生まれ、一人で死んでいくものだ。日本のメディアは「孤独死、孤独死……」と大騒ぎするが、要は一人で死ぬことが問題なのではない。孤立して死後何週間も発見されずに遺体が腐敗し、周りに迷惑をかけてしまうことが問題なのだ。メディアは悲惨な実態を報じるだけでなく、その原因を分析し、独居者の孤立を防ぐ対策なども示すべきではないか。そう考え、私は本書の取材を始めた。
米国でも単身世帯が増え、一人で死んでいく人は多いが、日本のような悲惨な孤独死はあまり起きていない。米国では自由と自立を大切にし、友人や社会とつながりをたもちながら、一人暮らしを楽しんだ末に亡くなる人が多い。これは孤独死とは異なるので、私は自立しながら死んでいくという意味を込めて、「自立死」と呼ぶことにした。
米国ではなぜ、「自立死」が可能なのか。米国人にとって自由と自立は非常に重要な価値観である。そのため、多くは歳をとって病気や障害などをかかえていても、子供夫婦や孫たちと一緒に住もうとは思わない。私が取材した車椅子の女性、盲人、左半身麻痺の人でも子供に頼らず、自治体やNPOなどから必要な支援を受けながら自立生活を続けている。いざという時のために緊急通報用ペンダントなどを身につけているので、孤独死の心配はない。米国は一人で生きることを前提にした社会だからこそ、一人暮らしの不安や問題点をよく認識し、独居者の孤立や孤独死を防ぐ支援策を積極的に実施しているといえる。
日本人は元々、家族以外の人との付き合いが少なく、孤立しやすいことは国際比較調査などでも示されている。それに最近は家族の絆や職場でのつながりも急速に失われている。これに対応するには、従来の家族世帯を前提にした社会システムから、単身世帯を前提にしたものに設計し直す必要があるが、本書ではその具体的な方法も提案している。

(やべ・たけし ジャーナリスト)

蘊蓄倉庫

都会の自殺率は低く、田舎は高い

 意外なようですが、アメリカでの自殺率は都会よりも田舎の方が高いそうです。ニューヨーク州の自殺率は全米で二番目の低さで、ニューヨーク市に限ればさらに低くなる。ニューヨーク市のマンハッタン区では全世帯の半数以上が単身世帯だそうですが、彼らは社会的に活発に活動しており、ほとんど「孤立」はしていない。一方、自殺率が高いのは、モンタナ、ネバダ、アラスカ、ニューメキシコ、ワイオミングといった田舎の州です。
 家族を含めた「社会的つながり」をどれだけ確保できるか。「孤独」が「問題」に転じるのを防ぐカギは、そこにあるようです。
掲載:2012年2月24日

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