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国の死に方

片山杜秀/著

792円(税込)

発売日:2012/12/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

日本人は、何を間違えたのか。『未完のファシズム』で話題の著者、衝撃の論考!

そんなに国を死なせたいのか? 歴史はやはり繰り返すのか? リーダー不在と官僚組織の弊害、出口の見えない不況、未曾有の震災と東北の苦境……鬱積する国民の不満を受けとめられない政治は、相次ぐ国難にも右往左往を繰り返すばかり。近年、この国の有り様は、あの戦争前後の混迷に驚くほど通底している。国家が自壊してゆくプロセスを精察し、暗雲漂う現代の「この国のかたち」を浮き彫りにする。

目次
序章 民族のトラウマ

第一章 権力は低きに流れる──猿の群れからファシズムまで
責任不在の「管領主導」
動物学者・丘浅次郎の運命論
将軍と年寄のファジーな関係
神秘のヴェールを守る元老
第二章 国家をわざと麻痺させる──ヒトラーの命がけの遊び
独裁者は非常時に生まれる
平時と非常時が不可分な文明社会
「無秩序の計画的な創出」とは何か
第三章 権力者の生まれえない構造──明治憲法という自爆装置
滅亡寸前でも肝腎な情報は藪の中
陸海軍と内閣は最後までバラバラ
タコツボ的権力分立の限界
「聖断」による大日本帝国の終焉
第四章 護憲思想栄えて国滅ぶ──勝手にがんばろう! 日本
破綻した権力多元化と阿吽の呼吸
藩閥政治ゆえの「元勲優遇ノ詔」
嫌われた天皇機関説、大差なき二大政党
頓挫した一党独裁型強力内閣
第五章 上意下達の徹底と崩壊──ロシア革命からソ連崩壊まで
運命的なチェルノブイリ原発事故
レーニン時代とスターリン大粛清時代
権力の上下を貫く一方通行のパイプ
想定外だった体制批判の無限ループ
第六章 「負け組」が怒り出す前に──国防のための保険数学
数学者・藤澤利喜太郎の『生命保険論』
思想や倫理より、生活の保障を
サラリーマンの保険加入は「国家百年の計」
政府を動かした保険国防構想
保険は大地震の防波堤ならず
第七章 震災で、近代国家は一時的に死んだ──関東大震災と朝鮮人虐殺
地震兵器、朝鮮人暴動、飛び交うデマ
秩序維持のための「流言浮説取締令」
「パニックの心理学」の常道をゆく
やり場のない被災民の怒り
第八章 いかなる非常時にも「社会公衆の安固」を──戦時特殊損害保険
保険国防に天変地異という落とし穴
犠牲的精神を以て、最大限の支払を
いつまでもできない震災の後始末
聖戦遂行、国破れて保険も残らず
第九章 舌先三寸と気分の衆愚選挙──普通選挙で国滅ぶ
五箇条の御誓文から普通選挙まで
有権者増大で買収よりも人気取り
市民としての政治的教養とは
第十章 衣食足りずして礼節を知らず──「土の怨念」が生んだテロ
政治は選挙や議論よりも暗殺で
皇道派の世直しヴィジョンと農本主義思想
「豊葦原瑞穂国」で広がる米騒動
食料安全保障のために外地米増産
第十一章 東北が叩きのめされた──国内外で捻れる産業政策
朝鮮全土に独立運動が広がる
都市ブルジョワジーか、内地農民か
外地への資本移転と貿易赤字への転落
市場を席巻した「亀の尾」
第十二章 政党が国民の信任を失う──世界大恐慌と農業恐慌
長引く不況、緊縮財政、デフレ
都市財閥の論理と政府のアリバイ作り
世界大恐慌、農業恐慌、大凶作
グローバリズムからブロック経済へ
第十三章 死に体政治に未曾有の国難が迫る──ゴジラが象徴した災厄
リーダーシップなき政治の混迷
政界再編の真空状態に『ゴジラ』封切り
地震、津波、放射能……
民間企業とボランティアに頼る国
第十四章 そんなに国を死なせたいのか──半身不随の「国体」
国の負けは国の死を意味しない
神話的現人神から国民統合の象徴へ
「君臣相和す」国体とは何だったのか
「人の命は地球より重い国」への捻転
あとがき
参考文献

書誌情報

読み仮名 クニノシニカタ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610500-5
C-CODE 0221
整理番号 500
ジャンル 政治、ノンフィクション
定価 792円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2013/06/28

著者プロフィール

片山杜秀

カタヤマ・モリヒデ

1963年宮城県仙台市生まれ。政治思想史研究者、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。大学院時代からライター生活に入り、『週刊SPA!』で1994年から2003年まで続いたコラム「ヤブを睨む」は『ゴジラと日の丸――片山杜秀の「ヤブを睨む」コラム大全』(文藝春秋)として単行本化。主な著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテスパブリッシング 吉田秀和賞・サントリー学芸賞)、『未完のファシズム――「持たざる国」日本の運命』(新潮社 司馬遼太郎賞)、『近代日本の右翼思想』(講談社選書メチエ)、『見果てぬ日本――司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦』(新潮社)、『鬼子の歌――偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)、『尊皇攘夷――水戸学の四百年』(新潮選書)など。

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