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非婚・少子化×超高齢化で生まれた“新しい社会問題”。すべてを一人で抱え込む「見えざる人々」に光を当てる。

ルポ 介護独身

山村基毅/著

778円(税込)

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発売日:2014/06/14

読み仮名 ルポカイゴドクシン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-610574-6
C-CODE 0236
整理番号 574
ジャンル 社会学、福祉
定価 778円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2014/12/19

自分のことだけを考えていれば良かった生活に、ある日突然、親の介護が立ちはだかる──。非婚・少子化と超高齢化が同時進行する中で、「介護独身」とでも呼ぶしかない人々が今、急激に増えている。他に家庭を持つきょうだいはあてにならず、「何でも一人」に慣れているが故に、介護も一人で抱え込んでしまう彼ら。孤立と無理解の中でもがく日々に、自身、介護問題に直面しているルポライターが向き合う。

著者プロフィール

山村基毅 ヤマムラ・モトキ

1960(昭和35)年生まれ。北海道苫小牧市出身。獨協大学外国語学部卒業。ルポライター。人物インタビューを基軸としたルポルタージュを執筆している。著書に『民謡酒場という青春』『戦争拒否 11人の日本人』『森の仕事と木遣り唄』『はじめの日本アルプス』など。

目次

プロローグ 超高齢化と非婚化の結節点
第一章 独身貴族の落とし穴
認知症になっても生きたい/仕事を離れた途端に介護/意図的にガス抜きを/峠を越えて見えてきたもの/かつては母を、いまは父を介護する/亡くなった途端に周囲の見る目が変わる/父の介護にも携わる/「私の人生、終わったな」/倒れた母を放置した父/貧乏くじを引いてしまったのか/仕事観、結婚観の変容/一度離職するとなかなか戻れない
第二章 仕事は足枷、仕事は救い
仕事との両立の難しさ/男手ひとつで介護/帰宅するとまずおむつ交換/いくら尽くしても後悔は残る/仕事に熱中し過ぎて親が目に入らない/突然の認知症診断/わがままな性格から結婚せずに/急に良くなってきた母に戸惑いも/バランスの大切さ
第三章 家族が認知症になったとき
睡眠導入剤が手放せない/自らの介護体験から介護福祉士に/さまざまな施設とサービス/振り込め詐欺未遂がきっかけに/少しずつ記憶が薄れていく/「このままいけば、母を殺すかも」/複雑な家庭環境に育って/グループホームにたどり着くまで/介護殺人の「ちょっとした一線」/独身であるからこそ、自らの老後も気がかりに
第四章 「介護」の周りには、なぜ「独身者」が多いのか
匿名を通す「介護独身者」/要介護の母、認知症の父/結婚と介護に関係はないと思いつつ/家族がいても孤立していく/幻視により病気が判明/暗闇の中を手探りで/脚の骨折後、特別養護老人ホームへ/一対一の関係が孤立の温床/プロの介護者の孤独/妻は娘の介護に精一杯だった/プロの介護者にも独身は多い
第五章 「在宅化」の最前線
自宅を望む男、施設を拒否しない女/どこで、誰が担うのか/在宅医療の現場にて/時間をかけた訪問診療が可能/それぞれの病、それぞれの死/生活指導にも注意を払う/家族それぞれの対応
エピローグ 「事実婚」という希望
コラム 介護に直面したら/在宅を選ぶか、施設を選ぶか

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年7月号より 泣くがいやさに笑ってござる

山村基毅

北海道に住む、明治生まれの祖母が八十四歳で亡くなったのは十七年前のことだった。
青森の貧しい漁村に生まれた祖母は、文盲であった。かろうじてカタカナが読める程度の祖母を、私は軽んじ、心のどこかで蔑んでいた。だから、葬儀の折、隣家のじいさんから「ばあちゃん、お前の書いた本を嬉しそうに見せびらかしてたぞ」と聞いたときは、思わず涙してしまった。
親と離れて暮らしていては孝行などできやしない。何とか「孝行もどき」ができないか。そんな思いからホームヘルパー3級を取った(家庭介護向けの資格で五年前に廃止)。当時、住んでいた東京都新宿区で有償ボランティアにも登録し、仕事の合間、何人かのお年寄りの世話をした。
しかし、二年後に転居すると、そんな殊勝な思いはすっかり忘れ去ってしまったのだから情けない。介護とは無縁の暮らしに戻ってしまった。
女性ばかりの編集プロダクション「オフィス朔」の深井敦子さんが「独身者による介護というテーマで取材をしてみない?」と声をかけてきたのは、そんな私の来歴を知ってのことだったかどうか。
初めはハウツー色の強い企画だったと思う。ただ、話を聞くうちに、私はかつて抱いた悔いを思い返していた。介護する者の心の襞に染み込んでいる苛立ちや無念を聞き出せれば、私なりのルポルタージュが可能かもしれない。深井さんにそう告げ、引き受けることにした。「朔」と共に企画を進めていた「ヒルダ」の中田紀一さんが加わり、そこから独り身で介護をしている人たちを探す歩みがはじまったのである。
十数人の方々に会い、じっくりと話を聞くことができた。「独身」といっても、性別、年齢、職業(の有無)、本当にいろいろである。
しかし、みな一様に明るかった。「泣くがいやさに笑ってござる」ということだろうか。ままならない親の体調、未来への展望のなさ、ときに不眠症に襲われ、自ら体調を崩す者もいる。ならば「笑うしかない」と思い定めたかのようであった。
彼や彼女との対話から本書『ルポ 介護独身』は生まれたのだが、その歩みの最中、田舎に住む私の父が死に、本書に登場する二人の方の親が亡くなった。「生」とは流れ行く川のようなものだと、つくづく感じ入ってしまった。
おまけに……
今年の五月、父が死んでから一人暮らしとなった私の母が、脳梗塞で倒れてしまう。集中治療室に入れられ、そばに住む兄が付き添った。「厄払いでもしなくちゃな」、兄はそう笑っていた。
数日前の夜半のことだ。携帯電話が震えた。母の容体が変わったか、とすぐさま電話に出た。
「びょういんの……ごはん……まずくてねえ」
呂律の怪しい言葉。母だった。一般病室に移ったという。私に向け、ぼやくこと、ぼやくこと。
「贅沢いうな!」
そう怒鳴った私の顔は、まさに「泣くがいやさに笑って」いたはずである。

(やまむら・もとき ルポライター)

担当編集者のひとこと

新しい社会問題

「介護独身」は、本書が初めて使用した造語です。文字通り、独身のまま、主として親の介護に携わっている人たちのことです。
 彼らに関する統計的な数字があるわけではありませんが、その存在はいろいろな数字から推察することはできます。平均初婚年齢が30歳(男性)を、生涯未婚率が20%(同)を超えていること。2010年以降は単身世帯が夫婦と子どもからなる標準世帯を上回っていること。平均寿命が伸び続け、現在、男性で79・94歳、女性で86・41歳になっていること。これに加え、2000年に介護保険がスタートし、介護の「在宅化」の流れが加速していること。必然的に、自分のことだけを考えていれば良かった独身生活から、全く予期せぬままに突然、介護生活に追い込まれていく人が増えているだろうことは想像できるのです。つまり「介護独身」は、晩婚・少子化と超高齢化が出会って生まれた「必然の存在」とも言えるわけです。
 ただ、介護者が「非婚」に傾くのには、別の理由もあります。介護を担う者はしばしば、すべてを一人で抱え込むことになります。なんでも一人でやることに慣れている独身者の場合はなおさらです。すると、「どうせ理解して貰えないから」と他人とのコミュニケーションが滞りがちになってしまいます。いわば、介護という営みが「孤立」への傾向を内包しているとも言えます。本書で語られる介護独身者たちの声からは、そんな事情も透けて見えてきます。
 本書は、これまでに日の当たらなかった「新しい社会問題」に初めて光を当てる試みです。「介護なんて他人事」と感じている方にこそ、手にとって頂きたいと思います。

2014/06/25

蘊蓄倉庫

自宅を望む男、施設を拒まない女

 平成19年度の内閣府による「高齢者の健康に関する意識調査」によると、「介護が必要になった場合どこで介護を受けたいか」との質問に対し、男女ともに「自宅」との解答が最多となっています。しかし、中身をよく見ると、男女差が顕著です。男性の場合、「自宅」50.7%に対し2位の「介護老人福祉施設」17.0%とかなりの差がある一方、女性は「自宅」35.1%に対し、2位「病院」19.6%、3位「介護老人福祉施設」19.5%とその差は小さめ。「施設」全般を見れば、女性の過半数(54.5%)が「入所・利用したい」と答えており、男性の41.7%とかなりの差が出てきます。
掲載:2014年6月25日

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