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「自分」の壁

養老孟司/著

880円(税込)

発売日:2014/06/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

「自分探し」なんてムダなこと! 『バカの壁』のその先へ――最初から最後まで目からウロコの1冊。

「自分探し」なんてムダなこと。「本当の自分」を探すよりも、「本物の自信」を育てたほうがいい。脳、人生、医療、死、情報、仕事など、あらゆるテーマについて、頭の中にある「壁」を超えたときに、新たな思考の次元が見えてくる。「自分とは地図の中の矢印である」「自分以外の存在を意識せよ」「仕事とは厄介な状況ごと背負うこと」――『バカの壁』から十一年、最初から最後まで目からウロコの指摘が詰まった一冊。

目次
まえがき
第1章 「自分」は矢印に過ぎない
自分よりも他人を知ったほうがいい/理想像を持ったことがない/地図の中の矢印/溶けていく自分/臨死体験はなぜ気持ちいいのか/意識は自分をえこひいきする/生首はなぜ怖い/誰もが幽体離脱可能/どっちでもいい
第2章 本当の自分は最後に残る
弟子は師匠になれない/オリジナリティと学問/恋をしていた「自分」は別人/世間の本質は変わらない/思想は自由/脳は顔色をうかがう
第3章 私の体は私だけのものではない
体内の他者/チョウと幼虫は同じ生きものか/体内はウイルスだらけ/共生の強み/シロアリとアメーバ/私は環境の一部/田んぼは私
第4章 エネルギー問題は自分自身の問題
原発も世界の一部/エネルギーは一長一短/成長を疑う/エネルギーの限界/長期的な議論をする場が必要
第5章 日本のシステムは生きている
デモをどう考えるか/デモへの違和感/連帯は怪しい/馴染めないから考える/政治問題化の弊害/安保の頃/思想は無意識の中にある/世間の暗黙のルール/江戸の不思議な人材登用/変人もまたよい/日本の自殺は多いか/世間といじめ
第6章 絆には良し悪しがある
絆のいい面を見る/個人主義は馴染まない/不信は高くつく/橋下市長を信用するか/あこぎはできない
第7章 政治は現実を動かさない
選挙はおまじないである/世界はオレオレ詐欺だらけ/言葉は現実を動かさない/「やったつもり」でことを進める/やはり参勤交代/官僚の頭を変える/知的生産とはホラの集積である/医学は科学か/闇雲に動く意味/政治は生活と関係ない/無関心もまたよし/リーダー次第ではない/フラフラしていていい
第8章 「自分」以外の存在を意識する
ゼンメルワイスの発見/「がんと闘わない」は正解か/小渕首相の賭け/待機的が正解とは限らない/身内の問題/臨終間際の治療は不要か/「私の死」は存在しない/親孝行の本当の意味/福沢諭吉の勘違い/「我」はいらない/意識外を意識せよ
第9章 あふれる情報に左右されないために
純粋さの危うさ/排外デモの純粋さ/情報過多の問題/メタメッセージの怖さ/医学の勘違い/なぜ政治が一面なのか/軍国主義の誕生/生きていることは危ないこと/テヘランの死神/柳の下にいつもドジョウはいない/鎖国の効能/適切な情報量とは/ツールは面倒くさい/地に足をつけよ
第10章 自信は「自分」で育てるもの
一次産業と情報/脳は楽をしたがる/厄介だから生きている/仕事は状況込みのもの/人生はゴツゴツしたもの/自分の胃袋を知る/自信を育てるのは自分
あとがき

書誌情報

読み仮名 ジブンノカベ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610576-0
C-CODE 0210
整理番号 576
ジャンル エッセー・随筆、倫理学・道徳、教育・自己啓発、趣味・実用
定価 880円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/12/19

蘊蓄倉庫

シロアリはなぜ木を食べられるか

『「自分」の壁』の中に、シロアリについてのこんな話が紹介されています。
 シロアリが木材を食べることができるのは、胃の中に木材のセルロースを分解できるアメーバを持っているからである。このアメーバはシロアリよりも熱に弱いため、実験で温度を上げていくと、アメーバだけが死んで、シロアリは生きているという状態になる。しかし、そうなると木材を消化できなくなるので、結局シロアリもすぐに死んでしまう。
 この話が、なぜ「自分」とつながってくるのか。話せば長くなるので、本書をお読みください。
掲載:2014年6月25日

担当編集者のひとこと

なぜ「バカ」の先は「自分」なのか

 本書は、『バカの壁』『死の壁』『超バカの壁』に続く、養老孟司さんの「壁」シリーズの最新刊です。
 なぜ「自分」なのか。
 私がくだくだ説明するよりも、「まえがき」にある文章をお読みください。

『自分』という話題は、以前から考えていました。変に聞こえるかもしれませんが、幼稚園のころからです。
 自分とはなんだとか、自分はどんな個性の人間だとか、そういうことを考えたわけではありません。自分がなんだか世間と折り合いが悪いけど、いったいなにが問題なんだろう、というようなことです。幼稚園の時には、病気がちでしたから、休むことがあります。そうなるともうすぐに登園拒否です。あらためて行くのが、なんだかはずかしいのです。つまり行ったときに周りがどう思うのか、それを考えると、イヤなのです。そんなこと、だれも気にしてないよ。それが大人の反応でしょうね。でも私はそれが気になってしょうがないから、行きたくなかったわけです。
 そのさらに裏には、どんな気持ちがあったのでしょうか。家族はともかく、自分以外の人たちでできている世間、そこで安心して行動していいのかどうか、それがわからなかったのです。この気持ちはかなりの歳になるまで、ずっと続いていました。いわば自分の天性みたいになっていたわけです

 本の中では、何度もこうした「世間における居心地の悪さ」がテーマとして語られています。
 私自身、いい年をしていまだに人見知りで、他人とうまくやることが苦手なところがあります。無駄に人目を気にする癖も抜けません。だから世間に慣れている人を見ると、すごいなあと感心し、同時に、なぜ俺にはできないのかと考えてしまいます。
 そういう人間にとって、本書はとても救いになるような内容でした。何らかの居心地悪さを抱えている方は、ぜひお読みください。

2014/06/25

著者プロフィール

養老孟司

ヨウロウ・タケシ

1937(昭和12)年、鎌倉生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。1989(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。著書に『唯脳論』『バカの壁』『手入れという思想』『遺言。』『ヒトの壁』など多数。池田清彦との共著に『ほんとうの環境問題』『正義で地球は救えない』など。

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