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がんとの賢い闘い方―「近藤誠理論」徹底批判―

大場大/著

858円(税込)

発売日:2015/08/12

  • 新書
  • 電子書籍あり

「放置がベスト」「抗がん剤は毒」「検診はムダ」全部、大嘘です。「2人に1人はがん」時代の必読書。

がん治療に関する妄言が蔓延している。「放置するべき」「抗がん剤は毒だ」「早期発見なんて無意味」――動揺し弱っている患者や家族は、ついこうした言葉に吸い寄せられてしまう。だが、それで苦しむのは、他ならぬ患者や家族である。外科医であり腫瘍内科医でもある立場から、冷静かつ科学的に「近藤誠理論」の嘘を見破り、誤りを徹底批判。そのうえで私たちが知っておくべき「がんとの賢い闘い方」をやさしく説く。

目次
まえがき
第一章 近藤誠医師を徹底批判する
1 大いなる違和感
詭弁と危うさ/現場で本当に診ていたのか/診療実績の謎/放置患者を「看取って」きたのか/乳がん温存のパイオニア/過去の乳がん手術は犯罪?/フィッシャー理論の模倣/放射線科医が主役?/手術の質に疑問あり/切り刻みたいからではない/外科医の苦悩
2 逸見氏のケースが教えてくれたこととは
命を縮めた手術/逸した早期発見/早期胃がんは切除するべき/後出しジャンケン
3 がんもどき論の罪
根拠薄弱/転移するしないは運命ではない/転移=絶望とは限らない/都合のよい無敵論/なぜこの論文を?/早期胃がんは放置で進行する/放置を悔やんだ患者/10年「も」ではない
4 日本の医師はレベルが低い?
恐怖を煽る記述の数々/倫理的理由からデータが無い/がんは自然に消えない/進行胃がんの手術/海外手術データの正体/後に明らかとなった追加データ/日本のお家芸を大切に/「下に凸」しか認めない?/「上に凸」は日本の実力
5 「抗がん剤が命を縮める」というウソ
リスクとベネフィット/副作用で恐怖を煽る/飛躍的な進歩/すでに否定されている放置療法/エビデンス解釈の不勉強/決定的な見落とし/人為的な操作は不可能/有効性に裏付けあり
6 疑惑だらけのデータ作成
都合のよいデータ工作/リード・タイム・バイアスのお手本
7 放置で楽にはなれない
ゼロリスクは不可能/放置でピンピンコロリという暴言/放置150人? のバイアス
8 がん検診不要論の問題点
検診は意味がある/胃がんの死亡者は減っている/「検診をやめた村」の本当の話/子宮頸がんへの無理解/近藤氏の思考のクセ
第二章 がんと賢く闘うには
1 正解は一つではない
「遺伝する」は少数派/2ヒットセオリー/共通の正解はない
2 「治らない」は敗北ではない
ミラクルは期待できない/二択で考えない/がんのステージ/進行がん=絶望ではない/完治が無理でも共存はできる/抗がん剤の利益を知る
3 インフォームド・コンセントを知る
インフォームド・コンセントの歴史/パターナリズム/「父親」役の限界/問われる告知の「質」/負の面もある/患者の心構えは
4 標準治療はベストな羅針盤
並の治療ではない/先端医療の正体/メディアは騒ぎすぎ/昔の医療倫理にご用心/患者も勉強を/エビデンスの格付け
5 3大治療と第4、第5の治療
治療の出番で言うと/手術否定の精神病理/放射線治療の利益/中村勘三郎氏のケース/世界が羨む内視鏡治療/緩和ケアへの誤解
6 手術には明らかなメリットがある
手術の意味とは/ゴッドハンドに価値はあるか/外科医のレベルもさまざま
7 抗がん剤が「効く」とはどういうことか
抗がん剤の役割/がん縮小のメリット/進行を遅らせる意味/「悪」と決めつけない/医師の社会的責任/目覚ましい抗がん剤の進歩/思考停止のワナ
8 日本のがん医療は海外よりも遅れてはいない
日本は遅れているか/米国の医療格差/治療成績は世界トップクラス/若い医師への懸念/ドラッグ・ラグ/時間差ばかりを気にしなくてもいい/腫瘍内科医の必要性
9 乳がん治療の特殊性を理解する
乳がんの特性/抗がん剤を有効に使う/アンジェリーナ・ジョリーのケース/遺伝子検査の注意点
10 バイアスだらけのメディア報道
仮説レベルで騒ぐクセ/真の特効薬報道/NHKスペシャルの報道バイアス
11 クリニックがん治療には要注意
免疫療法看板の乱立/肩書に騙されるな/巷の免疫療法のリスク/エセ医学の範疇/本物の免疫療法とは/民間療法の実態/「医の倫理」が行き届いていない世代/がん患者に対して有効性が認められたものはない
あとがき

書誌情報

読み仮名 ガントノカシコイタタカイカタコンドウマコトリロンテッテイヒハン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610632-3
C-CODE 0247
整理番号 632
ジャンル 暮らし・健康・料理
定価 858円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2016/02/12

蘊蓄倉庫

「標準治療」は並の治療ではない

「標準治療」といった言葉を耳にするようになりました。何となくその響きから「フツーの治療」をイメージしがちですが、それは勘違いというもの。標準治療の本来の意味は「世界中どこの先進国に行っても通用する、推奨レベルのもっとも高い『最善治療』」ということです。あのスティーブ・ジョブズ氏も様々な治療を試して最終的には標準治療の元に戻ってきました。『がんとの賢い闘い方』には、こうした患者や家族が知っておくべき最新の知見が詰まっています。
掲載:2015年8月25日

担当編集者のひとこと

一人の意見を鵜呑みにする前に

 専門的な話を理解するのは面倒なので、ついつい断言する人にそのままついていきたくなるものです。
 がんに関して言えば、近藤誠氏の影響力は相当なものでしょう。
 何せ歯切れがいい。わかりやすい。
「がんになったら下手に治療をするよりは放置したほうがいい」
 こうしたアドバイスは患者の立場からすると、とても魅力的です。シンプルで力強い。そもそも何もしないほうが結果がいいなんて耳寄りです。
 もしかすると、それは事実なのかもしれません。素人には判定できません。
 でも、そこでそのままついていってしまっていいのか。
 他のアドバイスにも耳を傾けてからでもいいのではないか。
 そう思う方は、ぜひこの『がんとの賢い闘い方―「近藤誠理論」徹底批判―』を読んでみていただきたいと思います。身近な方で悩んでいる方にも勧めていただきたいと思います。
 私自身はこの本の担当をして、もしもがんになったら、きちんと治療をしたいという考えが強くなりました。

2015/08/25

著者プロフィール

大場大

オオバ・マサル

1972(昭和47)年、石川県生まれ。外科医・腫瘍内科医。医学博士。金沢大学医学部卒業後、がん研有明病院等を経て東京大学医学部附属病院肝胆膵外科助教。2015年退職し、セカンドオピニオン外来を主とした「東京オンコロジークリニック」を開設。

東京オンコロジークリニック (外部リンク)

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