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心配するのは一日一時間でいい。患者と家族3000人との対話から生まれた「ことばの処方箋」。

がん哲学外来へようこそ

樋野興夫/著

756円(税込)

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発売日:2016/02/17

読み仮名 ガンテツガクガイライヘヨウコソ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 188ページ
ISBN 978-4-10-610655-2
C-CODE 0247
整理番号 655
ジャンル 家庭医学・健康
定価 756円
電子書籍 価格 756円
電子書籍 配信開始日 2016/05/27

がん患者が次々入っては、笑顔で出てくる外来がある――その名は「がん哲学外来」。治療の不安から人間関係の悩みまで、主治医には打ち明けづらいあらゆる相談に著者は答え続けてきた。「自分を心配するのは一日一時間でいい」「冷たい医師にもいい医師がいる」「がん細胞は不良息子と同じ」「何を望むか、よりも何を残すかが大切」……貴重な個人面談録をもとに綴る、患者と家族の心に効く「ことばの処方箋」。

著者プロフィール

樋野興夫 ヒノ・オキオ

1954(昭和29)年島根県生まれ。順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授、医学博士。米国フォックスチェイスがんセンター、がん研実験病理部部長等を経て現職。2008年「がん哲学外来」を開設。高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。著書に『いい覚悟で生きる』ほか。

目次

はじめに
1章 「がん哲学外来」とはどんな場所?
「いまだに気持ちが整理できません」/「病気」であっても「病人」ではない/自分を心配するのは一日一時間でいい/「がんをいじめないで終わりにしたい」/患者に必要なのは覚悟/「立ち入った話をしておいて良かった」
2章 がんより悩ましいのは「人間関係」
「患者会に行けなくなりました」/夫の冷たさと妻のよけいなお節介/「お母さんのがん、誰にも言わないでね」/がんは感情のひだを繊細にする/「私が、父を殺してしまいました」/困難にある人の笑顔は、周囲を慰める/人生の目的は、品性を完成すること
3章 治療を邪魔しているのは何か
「東大の先生がやっているプロポリス」/「黄金のワラ」を求めてセカンドオピニオンへ/がんは治療でしか「消え」ない/抗がん剤は、苦しかったらやめてもいい/「検査の同意書に、サインできませんでした」/冷たい医師にもいい医者がいる
4章 医療の「すき間」に、誰か一人がいればいい
病理医は遺体に教えられる/転機となった「クボタショック」/キャンセル待ちの五十組のために/お金をとったら窮屈になる/私自身に起きた意外な変化/医師と患者には距離が要る
5章 がん細胞に人間が学ぶ
永遠に生きようとする「生命力」/正常細胞が「白」で、がん細胞が「黒」?/どんな場所でも生きぬく「厚かましさ」/がん細胞も人間も、悪い者ほど「たくましい」/がん細胞を「更生」させるには/天寿をまっとうしてがんで死ぬ
6章 「何を望むか」より「何を残すか」が大切
「死ぬという大事な仕事が残っている」/「余命は知らせないでください」/マイナスかけるマイナスはプラス/「これが今の自分の生きがいですね」/人間は、最後の五年間が勝負
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

情報はいくら集めても終わりがない

樋野興夫

「○○の習慣でがんが消えた」
「▲▲はダメ、□□を毎日食べなさい」
 こうしたメッセージが週刊誌や書籍に溢れています。健康なときには目に入らなくても、自分や家族ががんになるとついアンテナが立ち、読みたくなるものでしょう。しかし、ほとんどはあまり意味のない情報だ、と私は思っています。
 私はがん専門の病理医として順天堂大学医学部に籍を置く傍ら、「がん哲学外来」の担当医を務めています。どうして「がん」と「哲学」、さらに「外来」が結びつくのかと不思議に思われる方も多いでしょうが、この外来はがんにまつわるあらゆる相談に乗ることを目的としています。相談は無料、2008年の開設以来、活動は全国80か所に広がりました。ある日は、ご主人が大腸がんで入院しているという女性がみえました。
「毎日病院に通って主人の様子を見ているのですが、退院した後のことが気になってきました。いま色々な記事が出ていて、読むと『これを食べなさい』『野菜ジュースを摂りなさい』『冷えを防ぎなさい』って、限りがなくて。どれを信用したらいいのか、分からなくなってきました」
――そういう情報に期待しすぎると、あなたもご主人も、疲れてしまいますよ。
「そうですよね。子どもたちも一喜一憂するなと言うんです。いまは知人から、がんを消すっていうプロポリスを勧められています。東大病院でやってるものだからって。でも本当に効くのかなと」
――東大の誰がやっているんですか?
「それは分からないです。東大の先生だって」
――本当に関心があるのなら、何という先生が研究しているものか、確かめるのがいいですよ。ただし、情報はいくら集めても終わりがありません。集めること自体が目的になってしまうのです。それよりもゆっくりご主人に寄り添う時間のほうが、大切ではありませんか。退院後の食事については主治医の先生とじっくり話してみたらいいですよ。
「本当にそうですね。そうしてみようと思います」
 こうしたサプリメントや食事療法の相談は日に日に増えています。主治医には言い出しづらい面もあるのでしょう。心配なのは、情報ばかりに目がいって、本来の治療が手つかずになっているケースがあることです。セカンドオピニオン・ショッピングを続けるだけで、治療法を決められない患者も実際にいます。
 なぜそんなことになるのでしょうか。理由のひとつは、その患者や家族ががんと診断されたショックの只中にいるからでしょう。がんを告知されるのは「人生の大地震」であり、右往左往したり、うつ的症状が出るのは当然のこと。しかしその不条理を認めて、治療に向き合うことが先決です。
「病気」であっても、「病人」ではない。これは私の持論です。本書『がん哲学外来へようこそ』では、先に紹介したような個人面談の模様を盛り込みながら、「がんの優先度」を下げつつ今まで通りの生活を送る秘訣をお伝えします。

(ひの・おきお 順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授)
波 2016年3月号より

担当編集者のひとこと

「がん哲学外来」は無料です

 確実な診断やよりよい治療のため、セカンドオピニオンを得ることが珍しくなくなりました。しかしセカンドオピニオンは「相談」に当たり、費用は全額自己負担が原則です。すると幾ら掛かるのか? 検索すると30分2万~3万円が相場のようで、講師や准教授、教授という先生のランクで値段が変わるところもありました。
 樋野先生は順天堂大学医学部の教授ですが、「がん哲学外来」では一切お金を取りません。「料金を取ったら窮屈になる」と、2008年の開設以来、方針を貫いています。これにはさるお役所から、「お金は取らないんですか」と問い合わせがあったとか。
 また、がん哲学外来の個人面談では、「はい、時間なので終わりです」と言われることはありません。樋野先生は相談者と30分から1時間じっくり向き合い、最後には相談者が「ありがとうございました」と席を立っていきます。本書『がん哲学外来へようこそ』の編集のために立ち合わせてもらったのですが、主治医や家族にも打ち明けづらい不安を吐露して、涙を見せた相談者も、笑顔でそう仰っていました。
 がんには悩みがつきものです。不安や迷いをできるだけ少なくすることは、いい治療にもつながります。興味を持たれた方はぜひ「がん哲学外来」ホームページをご覧ください。全国約80か所に活動が広がっています。
 まずは様子を知りたいという方、様々な事情で行かれない方はぜひ本書を開いてみてください。樋野先生とテーブルを挟んで向かい合った気持ちになって頂けるはずです。

2016/02/25

蘊蓄倉庫

「がん哲学外来」担当医の本業は?

「がん哲学外来」の活動で注目される樋野興夫・順天堂大学医学部教授の本業は、がん専門の病理医です。しかし医学部卒業後には、大学病院の外科で研修医をしていた時期もありました。外科医になるのを諦めたのは、「人と話すことや患者の問診があまりにも苦手で、悩んだ末に」だそうです。その後は難治性のがんである中皮腫の研究を続け、これを早期に発見できる腫瘍マーカー(ERC)も開発しています。そして2005年、「クボタショック」と呼ばれるアスベスト被害を契機に、樋野氏は「あまりにも苦手」としていた患者たちにじかに向き合うことになるのですから奇遇なことです。
掲載:2016年2月25日

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