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日本文化の美しさを教えてくれた“語り部”の全貌を明らかにする、初の全集。

白洲正子全集 第十巻

白洲正子/著

6,156円(税込)

本の仕様

発売日:2002/04/10

読み仮名 シラスマサコゼンシュウ10
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 白洲正子全集
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 550ページ
ISBN 978-4-10-646610-6
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,156円

ゆかりの人や物を愛情深く描いた「縁あって」、たんぽぽ、つくしなど野の草への思いを工芸品にたくした日本人の心を詠む「草づくし」、新古今集に挑んだ「花にもの思う春」など、円熟を増す時期。

著者プロフィール

白洲正子 シラス・マサコ

(1910-1998)1910年東京生まれ。幼い頃より能を学び、14歳で女性として初めて能輝台に立ち、米国留学へ。1928年帰国、翌年白洲次郎(1902〜1985)と結婚。古典文学、工芸、骨董、自然などについて随筆を執筆。『能面』『かくれ里』『日本のたくみ』『西行』など著書多数。1998年没。

書評

波 2002年11月号より 「白洲正子全集」の魅力  「白洲正子全集」

青柳恵介

個人全集を読む楽しみは、その代表的な述作に混じった小篇を読み、この人はこんなことも考えたり感じていたのかと、些細かもしれないけれども思わぬ発見をするところにある。
たとえば「白洲正子全集」第十四巻には文字通り「ささやかな発見」という短いエッセイがあり、そこにこんな話が書かれている。十歳の頃、学習院の遠足でお浜離宮に出かけ、少女正子は沖行く蒸気船を眺め「お前はえらいよ、西郷さんだよ、蒸気ははしるよ、オナラは臭いよ」と歌ったという。そんなことはすっかり忘れていたが、それから七十年以上が経って白洲正子は友人に、「わたしはその歌に一生救われたのよ。それだけに頼って生きてこられたの」と言われてキョトンとする。友人は、わがままな亭主の勝手なふるまいに接する度に「お前はえらいよ、西郷さんだよ」と歌って気を紛らかしていたらしい。八十六歳の白洲正子は「考えてみればとるにもたらぬ話だが、案外とるにもたらぬささやかなものの中に人生にとって大事なことがかくされている場合は多い」と書いている。
もちろん、こんな話は『白洲正子自伝』には出て来ない。子供の頃の思い出と言えば、無口で不機嫌で自閉症に近かったと『自伝』には記している。しかし、一方では大きな声で「蒸気ははしるよ、オナラは臭いよ」と歌って友達を笑わせる、何か彼女の生涯を貫いて発散した天衣無縫の明るさのようなものが感じられるだろう。彼女自身が気づいていない己の気質を「ささやかな発見」と呼んでいるように思われる。長生きをした人の全集ならでは味わえぬ読書の醍醐味である。
全集は歌で言えば私家集に相当する。一首の名歌が生れるまでに、いかに沢山の類歌がよまれ、モチーフを温める過程を必要としたか、それは私家集を読む者の共通した感慨であろう。全集も同じだ。
「白洲正子全集」には何度も繰り返し語られる話題がいくつもある。小学校に上る前、母親と共に維新前に大久保利通が逼塞していた京都の暗い家で暮したこと、結婚してまだ間もない頃に初めて大和の聖林寺を訪れ、そこで眺めた十一面観音のこと、苦労して手に入れた高価な紅志野の香炉を手放したときのこと、青山二郎と初めて出会ったときのこと、並べられた盃の値をつけてみろと小林秀雄に迫られたときのこと、そして西国巡礼の経験。あげて行けばまだまだあるが、それらの経験を、一つの器物をあちらから眺め、こちらから眺め、そして光の強弱を調整して眺めるが如く、白洲正子は繰り返し語っている。
一人の人間が一つのモチーフを生涯の中でどのように温めるか、言わばそれこそが作家の秘密であろう。その秘密に接近しようとすれば、全集を読むことから始める以外に道はない。

(あおやぎ・けいすけ 白洲正子全集編集委員)

▼「白洲正子全集」全十四巻/別巻一は、発売中

目次

縁あって
能面についての感想
景色
信楽・伊賀のやきもの
萩の咲くころ
狂言面 乙
茶碗 天啓赤絵
螺鈿 煙硝入
大鉢 むさし野
絞り 十字文
書見台 蝶
牟田洞人の生活と人間
先代梅若實翁のこと
梅若六之丞
芸事をたしなむ女性に
「初心忘るべからず」
老木の花
桁はずれの粋人
シャッターの音
黒田清輝の女人像
愚公山を移す
美術ははやっているのか
川瀬敏郎の『風姿花伝』
「人が見たら蛙になれ」
黒田辰秋 人と作品
坂のある風景
私のお茶
飼犬に手を噛まれる
水上勉『土を喰う日々』
谷口吉郎『せせらぎ日記』
天着連
三宅一生の服
滝に想う
坂本の門前町
思うこと
春近し/豊かな不便を/国際人/「兵は勢なり」/真にせまる/良識について/物の両面/「目ききの眼」/誤解について/嵐のあと/職人/年の暮れに憶う/心にくきこと/無駄のある家/語感/「すい場」
草づくし
草のいろいろ
わかな
春の七草
春蘭
たんぽぽ
すみれ
わらび
つくし
しょうじょうばかま
かたかご
かたばみ
おきなぐさ
てっせん
がんぴ
かきつばた
つた
ねこじゃらし
あざみ
おもだか
天道花

ささゆり
くろゆり
草染め
高峰高原にて
秋の七草
夕顔
武蔵野
秋の味覚
ひがんばな
八重むぐら
花にもの思う春
万葉集と古今集
新古今和歌集の誕生
歌合とその周辺
新古今集の歌
枕詞と歌枕と本歌取り
後鳥羽院
良経
俊成
定家
式子内親王
頼政
家隆
西行
あとがきにかえて
解説・解題

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