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プロローグ 結婚して幸せになる自信がありますか こんなはずじゃ……
「あなた、どうして彼女と結婚したんですか?」 「お茶の水女子大卒業だったから」 「えっ、それが本当の理由?!」 「はい……」 「じゃあ奥さん、あなたはどうして?」 「はい……どうしても二十三歳までに結婚したかったんです。彼を逃したら二十三歳で結婚できなかったから……」 あいた口がふさがらないとはこのことです。初めからとうてい結婚するべきでない二人が、勢いで結婚してしまったとしか言いようがありません。 恋愛結婚で結ばれたこの二人。お互いに「この人が理想」と思っていたと言います。 「その時はそう思った」のだそうです。 しかしほとんどのカップルが結婚を決める時はそう思っているのです。 結婚する前から、「この人って最低! でも私は平成のおしんになるわ。耐えて耐えて耐えぬいて、最後まで現代のおしんを演じてやるのよ~!」などとは、まともな神経の持ち主なら考えていません。 この二人の場合もそうです。大恋愛の末のスピード結婚。都内のチャペルで式を挙げ、めでたく一分に一組の結婚組の仲間入りを果たしたのです。ところが三年もたたないうちに破局を迎えてしまいました。彼女は言います。 「あんな男最低よ! あんな男につかまっちゃったから、私の人生は狂ったんだわ! 私の三年を返せ!」 別居を申し出たのは彼女の方でした。話を聞いてみると出るわ出るわ、いろいろな話が飛び出しました。 彼は大学を七年かけて結婚前にやっと卒業したばかり。当然のことながら社会人一年生と結婚一年目が重なった訳です。共働きでなければとても食べていけません。入居した郊外のマンションは新婚にはちょっと高めの十五万円。 彼女にしてみると、職場からは遠く、狭いわりには家賃が高いと思っていたけれども、彼との愛の巣に値段はつけられないと、小さな不満は心に閉じこめて、新婚生活をスタートさせたのでした。ところが結婚直後に発覚したのは、自立心に乏しい夫の実態でした。その現実に彼女は結婚直後から愕然とさせられたのです。 共働きできゅうきゅうのところを、何とか彼女が家計のやりくりをしていました。それにもかかわらず、彼ときたら、やれ疲れた、やれ具合が悪いだのと、何かと理由をつけてすぐ仕事を休んで、家でごろごろしています。たまに外食すれば、彼女は節約して安いものを注文するのに、彼はといえば、値段なんかお構いなしで、コーヒーやデザートまで何でもかんでも無神経に注文する。一口ちょうだいと甘えてみれば「お前の一口は大きいからあげない」などと意地悪を言われる。独身の時に使っていた化粧品は高くつくから買えなくなり、彼女が少しずつ貯めたへそくりまで、彼のビール代に消えていく。 ところが、突然新車を購入した彼に、まだ買い換えなくてもよかったのにというと「俺の金で車を買って何が悪い!」とひどい剣幕でまくし立てる。荷物がどんなに重くても絶対に持ってくれない。彼女がどんなに疲れていても家事を手伝うことなんか決してない。おまけに彼は癇癪持ちで、彼女を平手でぶったりするというおまけまで付いている、というのです。 「私の人生はこれで終わりなのかと思うと悲しくてしかたなかった。誰かに知ってもらいたかった。だけど、誰にも言えないと思っていた。恥ずかしいし、自分の責任も半分はあるから……」 あなただったらきっと、こう尋ねたくなるでしょう。 「結婚前に、彼がそういう人だって分からなかったの?」 核心をついていますね。けれども、この手の質問には決まってこのような答が返ってきます。 「ある程度はわかっていたけど、結婚したら変わると思った……」 実はここに問題の本質が潜んでいます。結婚さえしてしまえば何とかなるという思いこみから、ひたすら結婚式という儀式を通過してしまうことに一生懸命になるのです。実に多くのカップルが、同じコースをたどっています。多くの人が、結婚式のために準備をし、莫大なお金とエネルギーを注ぎこむのです。しかし、そこから始まる長い結婚生活のための準備ときたら、いったい何をどうしていいのかさえわかっていないのです。 二人はほどなく協議離婚の道を選択しました。不幸にして、約一分四十秒に一組の離婚組の仲間入りを果たしてしまったのです。結婚生活の準備をしてこなかったことの悲劇です。こんなことになるのなら、初めから結婚しなければよかったのに……。 もちろん人は離婚からも多くを学びます。離婚という悲劇を未来への教訓とすることもできます。しかし、離婚に伴う精神的苦痛や、傷の深さ、犠牲となる子ども……このようなあまりにも高い代償を支払わなくても十分に学ぶことができるのです。未来への教訓のために結婚するよりも、未来への希望のために結婚する二人であってほしいものです。 |