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はじめに この世の中には、男と女しか存在しないことはよくわかっています。 多くの女性は男性を好きになり、戸惑いながらも、その性の違いを愛しく思い、時には、一生を共にしたいと決心することもあるでしょう。 けれども、なぜ、その人でなければならないのか、という問いを改めて自分に向けてみると、明確な答えはなかなか出て来ません。 たとえば「優しいから」「私を心から愛してくれるから」「夢のある人だから」「経済力があるから」「将来性があるから」「価値観が同じだから」etc. それらも確かに、答えと言えるでしょう。 けれど、それだけではないはずです。それだけの男なら、何も彼でなくても、他にもいるはずです。なのに、多くの男たちの中から彼に恋をしてしまうわけです。 その、何かわからない部分、それこそが恋というものなのでしょう。 けれども、そこに大きな落し穴が隠されていることも、あなたはもう知っているはずです。 彼の何もかもを知っていたつもりでいたのに、何も見えていなかった。 恋に目が眩んでいるうちはよかったものの、冷静になってみると「彼はこんな男だったんだ」と、霧が晴れるように彼の本質が見えてしまうことがあります(もちろん逆に見直すこともあるでしょうけど)。 時には、いちばん愛しかった部分が、どうしても許せない部分になってしまうこともあります。 それもまた、恋の不思議なところです。 今回、さまざまな男たちを登場させました。 あまりいいことを書いていないので、男の悪口言いたい放題、みたいに思われてしまうかも知れません。そんなつもりは決してなかったのですが……なんて、取り繕うのはやめましょう。 そう、これは男の悪口です。 男の悪口を言えるほどおまえはりっぱな女か、と言われたら、消えてなくなるしかありません。男の悪口を並べ立てるほどモテない女なんだ、と思われてもしょうがありません。 それでも私は、一度は言いたかった。 「こんな男はいらない!」 恋に失敗はつきものです。 私も何度失敗したことか。情けない思い、みじめな思い、枕を涙で濡らしたことも、食事が喉を通らなかったこともあります。 けれど、だからこそやっとわかったのです。恋に失敗しても、自分を責めることはないんだということ。反省しても、後悔する必要はないんだということ。 この本は、一種のエールのつもりで書きました。 今までに、あなたの前から消えて行った男なんかとっとと忘れてしまいましょう。彼はあなたにふさわしくない男だったのです。 今度こそ、いい男を見つけて、最高の恋をしなくては。 もしかしたら、明日、その彼はあなたの前に現われるかもしれません。 面倒なことから逃げ出すのはなぜ? 恋の情熱をストレートに出そうとしない ――淡白男 私は雑誌でちょこっと恋愛相談みたいなことをやっていたせいもあるのか、いろいろと女性たちから恋の悩みを打ち明けられます。 悩みは本当にさまざまですが、突き詰めると、どれも似たようなものだということがわかります。基本的に、 「私はこんなに彼が好きなのに、彼の気持ちがわからない」 というバージョンがいちばん多いわけです。 いつ電話しても忙しいとしか答えない。留守電に入れておいても返事がない。部屋の前で待っていたら叱られた。 なんていうのは、ほとんどの場合、すでに女がいるか、心が離れている証拠です。 だから私としては、 「思い切ってぶつかって、それでダメなら諦めた方がいい」 なんて言っていました。 でも、最近になって、何なのかよくわからない男、というのが存在することを知るようになりました。 これを言って来たのはクミコです。彼女の話を聞いて、私はハタと考え込んでしまいました。うーん、わからん。いったいこの男は何なのだ。 とにかく、クミコの話をまとめてみましょうか。 彼と付き合い始めて三ヵ月弱。それくらいだと、まだデートするのが楽しくてしょうがない時期です。でも、彼はそうじゃないらしいのです。 会えない週末が二度も続いて、今週は会えるかなと思っていました。前もって約束をしてなかったので、いつ電話がかかってもいいように、クミコはずっと待ってました。でもかかって来ません。それで思い切って、自分から電話することにしたのです。 彼は部屋にいました。いたってことに、ちょっと驚きました。だって、いるなら連絡ぐらいくれたっていいじゃないですか。 でも、あんまり責めるようなことは言いたくなかったから、さり気ない口調で、 「今、何してたの?」 と尋ねました。すると彼からは、 「ヒマだったからビデオ観てたんだ」 との返事です。当然のことながらクミコは「えっ」と思いました。ヒマでビデオなんか観てるぐらいなら、どうして私を誘わないの。私はあなたと付き合ってるんじゃないの。 でも、それをグッと押さえ、クミコは言ったのです。 「だったら一緒にご飯を食べない? ひとりで夕食するのつまんないから」 すると「ああ、いいよ」と彼はあっさり言いました。何だかそれで二度目の茫然です。そんな簡単なの。そんな簡単なのに、自分からは誘おうとしなかったの。 ここまで聞いた時、やっぱりこれもいつものパターンに違いないと思いました。他に女がいるか、クミコに飽きてしまったか。 でも、そうじゃないんです。彼は本当に、ヒマでビデオを観ていただけらしいのです。 よく聞いてみると、彼は今まで付き合って来たどの女性に対しても、そんな接し方をして来たらしいのです。もちろんちゃんと約束をする時もありますが、どちらかというと、積極的ではない。会わなくても平気。 「家でひとりでテレビゲームしたりビデオ観たりするのも楽しいから」 これが彼の言い分です。それは彼の趣味なのであって、他の女とデートしてるわけじゃないのだし、彼のプライベートな時間として、余計な口出しをするべきじゃないとは思います。思うのだけど……私は思わずため息をもらしてしまいました。 これが恋愛している男のセリフだろうかって。 会いたい、声を聞きたい、恋愛ってこういうものじゃないですか。そりゃあ一年も二年も付き合っているなら、こんな週末の過ごし方もいいかもしれないけれど、まだ三ヵ月なんですよ。 それとも、私が恋愛に対して期待を持ち過ぎなのでしょうか。ヒマだからビデオを観るということと、恋人と食事をするということは、所詮、同じライン上に並ぶ娯楽のひとつでしかないということなのでしょうか。 私はその彼の心理がよくわからず、きっと特殊な男に違いないと思うようにしました。たとえば真のオタクであるとか。 けれど、仲間うちでそんなことを話していると、 「そう言えば、近ごろ、恋愛に淡白な男って多くなったような気がする」 と、彼女たちは言い始めました。これはその中のひとりの告白です。 「私ね、今、付き合ってる彼がいるんだけど、まあ、優しいのね。私の言うことなら何でも聞いてくれるの。ある時、取引先の人からしつこくデートに誘われたの。私としては行く気はなかったんだけど、ちょっと妬かせるつもりもあって、彼に聞いたのね。誘われたんだけど行ってもいいかって。そしたら『いいよ』って言うの。それで頭に来ちゃって、あなたは私が他の男とデートしても平気なのねって怒ったら『俺、モメるのいやだから』ってこうなのよ。それ、どう考えても優しさとは違うわよね。聞いた時、何だか気が抜けちゃった」 私も気が抜けちゃいました。 また、こんな話をしてくれた女性もいました。 彼女は結構仲良く付き合ってた男友達と、夜遅くまで飲んでいました。何となく気分も盛り上がり、電車がなくなりそうな頃、彼から「泊まろうか」とのお誘い。彼女の方も「彼なら」という気分になっていたのでOKしました。 ふたりはホテルに入り、バスを使い、そして、キス。いざ、これから……という時になって、男は「それじゃ、おやすみ」と言ってベッドに入り、すぐに眠ってしまったのです。 えっ、えっ、ええっ! 何なんだ、これは。 「茫然としちゃったわよ。据え膳食わぬは男の恥、なんて嘘ね。恥かいたのは私の方。もちろん頭に来ちゃったから、着替えてタクシー乗って家まで帰ったわ」 彼は、彼女がそのつもりであることを十分わかっていたはず。だからこそ誘ったのではなかったの。 それは、面倒なことにはなりたくなかったから? 途中で気が変わったから? それとも実は始めからその気がなかったってこと? もしかして、男を情熱的にさせられないのは、自分がその程度の女性だからかもしれない。違う女性だったら、彼はもっと積極的に迫るのかも。だとしたら、彼ばかりを責めることはできないけれど。 また、最近、パワフルな女性が多く、そんな女性を見て男がゲンナリしてしまう、という場合もあるかもしれません。男が「男」であることを要求されることにうんざりしてることもあるかも。 男というものが、実はとてもデリケートな生きものであるということはわかっているつもりです。 でも、もし面倒なことに足を突っ込みたくないと思っているなら、「恋愛なんかするな!」と言いたい。 恋愛なんて、面倒の権化みたいなものなんだから。それこそが醍醐味なんだから。 そんな男に恋したら、さぞかし大変でしょうね。イライラ、悶々、カッカッ。自分も淡白な女になるしか方法はないでしょう。それとも、めくるめく恋の味というものを根気よく手ほどきするエネルギーをいっぱい持つか。 できることなら、私はそんな男とは知り合いたくありません。だって出会った時から、茶飲み友達なんていらないもの。 まあ、当然のことながら、私みたいなのは、あちらもイヤでしょうけど。 |