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マスタリー―仕事と人生を成功に導く不思議な力―

ロバート・グリーン/著 、上野元美/訳

2,860円(税込)

発売日:2015/06/25

  • 書籍

天才や偉人には驚くべき共通項があった! 誰もが学べる「最強の法則」とは?

人生でなすべきことを見つけ、経験を積み、仕事と生き方に熟達した「究極の境地(マスタリー)」にいたる――ひと握りの天才にしかなし得ないと思われがちなそのような達成には、じつは誰にでも実践可能な方法がある。古今東西のいわゆる「偉人(マスター)」や現代の成功者たちの挫折と失敗に満ちた生き方から、「人生の主人公になる秘訣」を導き出す。

目次
はじめに
究極の力  高みにある知性――マスタリーとはなにか――マスタリーに至る三つの段階――ひらめく力――現実とつながる――だれもが持つ潜在能力
マスタリーの進化  原始時代の人間――人間の脳の進化――切り離して集中する能力――初期のヒトの社会的知性――ミラーニューロン――内側へはいりこんで考える――時間の作用――脳の自然な働き――大昔の祖先とつながる
マスタリーのためのヒント  自分の気持ちに素直にしたがうチャールズ・ダーウィン――偉人たちの特徴――独自性と心の奥からの衝動――マスタリー消滅につながる政治的障壁――天才とはなにか――マスタリー軽視の態度――マスタリーにおける欲求の役割――受け身でいることの危険性――脳の柔軟性――本書が勧める方針と偉人たちの実像
I 衝動にしたがう……人生でやるべきこと
 だれしも、人生でやるべきこと――生きているあいだに成し遂げるよう定められた務め――に向かおうとする内的エネルギーを持っている。マスタリーをめざす第一歩は、つねに心の中にある――本当の自分を見つけ、本来持っているエネルギーと結びつくことだ。それが明確になれば、自分に合った仕事が見つかるだろうし、すべては正しい位置に収まるだろう。この手順の開始がいつであっても、決して遅すぎることはない。
隠れた力  レオナルド・ダ・ヴィンチ
マスタリーのためのヒント  運命という感覚に導かれた偉人たちの例――唯一無二の自分とはなにか――自分の本当の気持ちとつながる――“使命”とはなにか――仕事を選ぶ――自分の適所を見いだす――実現に向けた努力――本当の自分を知る
人生でやるべきことを見つける方法
1 原点に帰る――幼いころの気持ちを思い出そう  アルベルト・アインシュタイン/マリー・キュリー/イングマール・ベルイマン/マーサ・グレアム/ダニエル・エヴェレット/ジョン・コルトレーン
2 自分だけの場所をさがす――選択と適応  A V・S・ラマチャンドラン B ヨーキー・マツオカ
3 誤った道を避ける――反抗しよう  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
4 過去を手放す――順応しよう  フレディ・ローチ
5 帰り道を見つける――生きるか死ぬか  バックミンスター・フラー
もう一度考えてみよう  テンプル・グランディン
II 現実を受けいれる……理想の修業期
 正規の教育を修了したのち、人生で最も重要な段階にさしかかる――第二の実践教育期間、つまり修業時代である。手遅れになる前に、経験を積み、過去や現在の偉人たちが確立した道を進もう――あらゆる分野に共通する理想的な修業時代がある。そうして修業しながら、必要な技術を修得し、精神を鍛え、独自の考え方を持つ人間へと成長してゆく。その後のマスタリーのための独創的な挑戦にそなえるのだ。
第一の変容  チャールズ・ダーウィン
マスタリーのためのヒント  理想的な修業期――修業の目的は、自分の変化
修業期――三つのステップと姿勢
 ステップ1:じっくりと観察する――受動的姿勢  自分の色を消し――その場の法則を観察し――力関係を確認する――チャールズ・ダーウィンの実体験の解釈――環境を知る
 ステップ2:技術修得――実習期  不言の知識――中世の修業システム――加速サイクル――退屈を受容する――前頭皮質と学習――脳内接続――一万時間という魔法の数字
 ステップ3:実験――積極的な姿勢  徐々に自己主張しながら実験する――不安を克服――現代における技術修得――修業の関連性――手と脳の連結――職人になれ
理想的な修業期にするための戦略
1 金銭よりも学ぶことを重んじる  ベンジャミン・フランクリン/アルベルト・アインシュタイン/マーサ・グレアム/フレディ・ローチ
2 視野を広げ続ける  ゾラ・ニール・ハーストン
3 劣等感を呼び覚ます  ダニエル・エヴェレット
4 過程を信じる  シザー・ロドリゲス
5 抵抗と苦痛の方へ動く  A ビル・ブラッドリー B ジョン・キーツ
6 失敗を活かす  ヘンリー・フォード
7 “仕組み”と“見かけ”とを結びつける  サンティアゴ・カラトラバ
8 試行錯誤しながら前進する  ポール・グレアム
もう一度考えてみよう  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/アルベルト・アインシュタイン
III 達人の力を吸収する……師(メンター)が持つ力
 人生は短い。学んだり創造したりする時間は限られている。しかるべき指導がなければ、さまざまな方面から知識や技術を得ようとして貴重な時間を無駄にしてしまうかもしれない。だから、達人の例にならって、ふさわしい師を見つけよう。自分のニーズにぴったりの、そして、一生の仕事に結びつく師を選ぶ。師の知識を吸収したら、その陰に甘んじることなく、前進しなくてはならない。目的はつねに、業績と知識で師を超越することである。
知識を黄金に変える  マイケル・ファラデー
マスタリーのためのヒント  謙虚さが大切――師の価値――師-弟子の力学――平凡なものを価値あるものに変化させるための学習――マイケル・ファラデーの実体験の解釈――アレクサンドロス大王――個人的交流の価値――師を見つけ、惹きつける――師としての著名人または書物――父親的存在としての師――師との別れ時
師(メンター)との関係を深めるための方法
1 自分の欲求と志向に一致する師を選ぶ  フランク・ロイド・ライト/カール・ユング/V・S・ラマチャンドラン/ヨーキー・マツオカ
2 師の鏡の奥をのぞきこむ  白隠禅師
3 師の理論や主義を焼き直す  グレン・グールド
4 相乗効果を生みだす  フレディ・ローチ
もう一度考えてみよう  トーマス・エジソン
IV あるがままに人を見る……社会的知性
 マスタリーを追求するときの最大の障害は、周囲の人々の抵抗やごまかしに対処することで感情的に疲弊してしまうことである。彼らの意図を読みまちがえて行動すれば、混乱や衝突をまねいてしまう。社会的知性とは、可能なかぎりの現実的観点から人々を見る能力のことをいう。社会環境内を円滑に泳げれば、知識や技術を得ることに時間とエネルギーを注ぐことができる。この知性を欠いたまま成功したとしても、それは真のマスタリーではないし、長続きはしない。
内側へはいりこんで考える  ベンジャミン・フランクリン
マスタリーのためのヒント  社会的動物である人間――進歩を妨げる“経験不足の見方”――ベンジャミン・フランクリンの実体験の解釈――自分のやり方を変える
 個々の人間性を知る――人心を読む  言葉に頼らないコミュニケーション――仕草に注目する――共通の感情体験をさがす――直観的に人の心を読む――パターンをさがす――第一印象の危険性
 一般的な人間性を知る――恐ろしい七つの本性  嫉妬/迎合主義/頑迷/自分勝手/怠惰/気まぐれ/消極的攻撃性
  社会的知性と創造性
社会的知性を獲得する方法
1 仕事を介して発信する  A イグナーツ・ゼンメルワイス B ウィリアム・ハーヴィ
2 適切なペルソナを作りあげる  テレジータ・フェルナンデス
3 他人の目で自分を見る  テンプル・グランディン
4 ばかげたことに寛大になる  ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ/ジョセフ・フォン・スタンバーグ/ダニエル・エヴェレット
もう一度考えてみよう  ポール・グレアム
Ⅴ 多元的精神を目覚めさせる……創造的活動期
 より多くの技術を修得し、専門分野を支配しているルールを自分のものにすれば、あなたの精神は、より活発に活動したいと望み、あなたの意向に沿う方法で、その知識を使いたがるようになる。いまある知識に自己満足するのでなく、関連する分野へと関心を広げ、知識を吸収し、異なる考え方と新たなつながりを作るための燃料を精神に送ろう。最終的には、自分の中に取りこんだルールに背を向け、自分の本分に合うように作りかえるのだ。そういった独創性が、気力の充実をもたらしてくれる。
第二の変容  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
マスタリーのためのヒント  原初の精神――型にはまった精神――多元的精神――モーツァルトの創作の解釈――重要な三つのステップ
ステップ1:創造的作業  創造性の概念を変える――白鯨をさがす――トーマス・エジソン、レンブラント、マルセル・プルースト、究極の創造性を発揮する――創造性の力学の第一法則――反抗する相手(もの)を見つける――現実に即した立場を変えない――安心感を手放す
ステップ2:創造的戦略
 A 消極的受容力を養う  キーツの創造的プロセス――消極的受容力とはなにか――モーツァルトとバッハ――アインシュタインと消極的受容力――理想的人物としてのシェイクスピア――謙遜家のファラデー――心をひらき、新しい考えを受けいれるためのツールとしての消極的受容力
 B セレンディピティをうながす  脳の二層処理システム――“セレンディピティ”とはなにか――ウィリアム・ジェイムズのいう精神的な勢い――開かれた精神状態を維持する――ルイ・パスツールとセレンディピティ――トーマス・エジソンとセレンディピティと録音――しなやかな精神――アントニー・バージェスとマックス・エルンストのセレンディピティ戦略――セレンディピティを育てる――類推的思考法とガリレオ
 C “流れ”によって力を蓄える  チャールズ・ダーウィンと流れ――“流れ”とはなにか――原始時代の人間と流れ――流れを断ち切る――バックミンスター・フラーと工芸品――目標をたてることの重要性――循環
 D 見方を変える  典型的思考パターンを変える
   “仕組み”ではなく“外観”を見ている  単純化を避ける――構造に注目する――全体像をつかむ――科学における関係の重要性
   一般論に飛びつき、細部を無視する  マクロからミクロへ――チャールズ・ダーウィンとフジツボの研究――レオナルド・ダ・ヴィンチは絵を描くときに、ごく細かい部分にこだわった
   理論的枠組みを固めて、例外を無視する  パラダイムに依存しすぎること――特異なものの価値――マリー・キュリーと放射能――グーグル創業者と変則的事項――進化を促進する変異体
   あるものに集中し、ないもののことは考えない  シャーロック・ホームズと受動的ヒント――フレデリック・ガウランド・ホプキンズと受動的ヒントと壊血病――必要を満たす――ヘンリー・フォードと受動的ヒントと組み立てライン――感情的な視点を逆転させる――挫折をチャンスに
 E 知性の最初の形態に戻る  原始時代の人間の知性――多目的ツールとしての人間の脳――文法の限界――言葉を超えて考える――イメージで思考した偉人の例――記憶の限界――図形と模型――シラー、アインシュタイン、サミュエル・ジョンソン、共感覚
ステップ3:創造力の壁を突破する――緊張と洞察力  偉人たち自身の高い基準――あきらめる――アインシュタイン、あきらめること、相対性理論の発見――夢の中でオペラを完成させたリヒャルト・ワグナー――創造力のピークに達する脳のしくみ――悟りにいたる前の閉塞状態――エヴァリスト・ガロアが突如爆発させた才能――緊張の必要性――期限をもうける――トーマス・エジソンの重圧の作り方
感情の落とし穴  自己満足/保守的傾向/依存/短気/自尊心肥大/硬直
創造的活動期のための戦略
 1 本物の声  ジョン・コルトレーン
 2 大きな収穫が得られそうなテーマ  V・S・ラマチャンドラン
 3 機械操作能力  ライト兄弟
 4 自然の力  サンティアゴ・カラトラバ
 5 境界のない領域  マーサ・グレアム
 6 高級志向  ヨーキー・マツオカ
 7 進化の乗っ取り  ポール・グレアム
 8 多元的思考  ジャン=フランソワ・シャンポリオン
 9 錬金術的創造性と無意識  テレジータ・フェルナンデス
もう一度考えてみよう  ジョン・コルトレーン/アウグスト・ストリンドベリ
Ⅵ 理性と直感との融合……マスタリー
 私たち全員に、より高い知性を手に入れる可能性がひらけている。より大きな世界を見たり、なりゆきを予想したり、あらゆる状況にすばやく正確に対応したりできるような知性である。この知性は、ある分野を深く没頭して研究し、かつ、他人からはどれほど荒唐無稽に思われようとも、自分の気持ちに忠実に進んでいくことによって育まれるものだ。私たちの脳は、この力を獲得するように作られているため、自分の意向にしたがって最終目標に向かっていくのなら、このタイプの知性が自然と身につく。
第三の変容 マルセル・プルースト
マスタリーのためのヒント  多くを見通す偉人の例――指先の感覚――不可解な力――高水準の直感――ダイナミック――全体像を直感でとらえる能力――ジェーン・グドールのチンパンジーに対する感覚――エルヴィン・ロンメルの戦闘感覚――理性と直感との融合――二万時間で習熟――時間は重大な要素――研究期間の内容を濃くする――プルーストの実体験の解釈
達人級直感の原点  ジガバチ――直感と原始時代の人間――脳の記憶ネットワーク――ボビー・フィッシャーと記憶の回路――複雑さに対処する――混乱に対する忍耐力をつける――記憶力向上――高水準の直感と若さ
現実に立ち返れ  進化の概観――すべての生命の相関性――究極の現実――現代のルネサンス――全体に戻る――変貌した偉人の脳
マスタリーに達するための戦略
 1 環境とつながる――根本的な力  カロリン諸島の島民たち
 2 長所を引きだす――最大の集中 A アルベルト・アインシュタイン B テンプル・グランディン
 3 訓練して自分を変える――指先の感覚  シザー・ロドリゲス
 4 細部を自分のものにする――生命の躍動  レオナルド・ダ・ヴィンチ
 5 視野を広げる――全体的な見方  フレディ・ローチ
 6 他者に従う――内側から見る  ダニエル・エヴェレット
 7 あらゆる形態の知識を統合する――万能人間  ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
もう一度考えてみよう  偽(いつわ)りの自分――本当の自分――神秘の皮をはがれた天才――人生の目的――自分の可能性を認める
現代の偉人たち
謝辞 主要参考文献 索引

書誌情報

読み仮名 マスタリーシゴトトジンセイヲセイコウニミチビクフシギナチカラ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 464ページ
ISBN 978-4-10-506911-7
C-CODE 0098
ジャンル 倫理学・道徳、教育・自己啓発、趣味・実用
定価 2,860円

書評

凡百の自己啓発を超えた、「未来を変えたい人」の必読書

成毛眞

 著者のロバート・グリーンはアメリカの作家。現在56歳の熟年イケメンである。大学卒業後は建設労働者や雑誌編集者など80もの仕事を経験した。1998年に“The 48 laws of power”(邦訳『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則』)で作家デビュー。この処女作はアメリカ国内だけでも120万部のベストセラーになり、24ヶ国語に翻訳されている。
『マスタリー』はグリーン5冊目の最新作だ。グリーンの作品の特徴は自己啓発書でもないし、ビジネス書でもない。歴史読み物でもないし、評伝エッセイでもない。制御された薀蓄ともいうべき、独特なスタイルを持つところにある。歴史上の人物の生きざまなどから、読者の未来をより良く変えることができるエッセンスを抽出するのが眼目だ。
 原著のタイトルになっているmasteryは名詞である。熟達や精通と翻訳されることが多い。訳者は「奥義をきわめること」と翻訳している。辞書を調べるとmasteryには別の意味もある。「~に対する勝利」「~の支配権」などだ。軍事用語である制空権の英訳はmastery of the airだ。著者はmasteryになることが勝利への近道であり、状況をコントロールするための要件であると考えているようだ。
 著者はほとんどの人が知性のひらめきを感じた経験があるはずだという。そのひらめきはある種の緊張状態、たとえば締め切りが迫っているとか、なんらかの危機に直面しているときなどに感じることが多いという。不断の努力で仕事を続けた結果、ひらめくこともあるという。
 私がこの原稿を書いているのは締め切りの2日前。それまではまったく筆が進まなかった。しかし、切羽詰まってくると頭が冴え、テレビを見ながらでも文章が湧いてくる。まさに知性のひらめきが降臨してくる感覚だ。しかし、それではいつかは紙面に穴をあけてしまいそうだ。いつでも必要なときに頭が冴えわたるようになれば、もっと楽な人生になりそうだし、なによりも良い仕事を残すことができると思うのだ。
 レオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタイン、ダーウィンやモーツァルトなどにとっては、その知性のひらめきは一瞬のことではなく、生活様式であり世界観だったという。まさに究極の力である。わたしたちがその何割かでも手に入れることができれば、人生は大きく開けてくるに違いない。
 かれら天才たちはどのようにしてその境地に達したのだろうか。著者はその最初の過程が修業だという。学習でも自己研鑽でもない。修業だ。師の姿をじっくり見ること、時間をかけて技術を習得すること、そして恐る恐る自分を試してみることだ。その結果として、そのスキルの特定要素が脳に固定され、目の前の細目ではなく、全体の鳥瞰図をみることができるようになるというのだ。
 モーツァルトが作曲をはじめてから、アインシュタインが思考実験をはじめてから、それぞれ十年後に大作や相対性理論を発表している。著者によれば彼らが早熟の天才に見えるのは、じつは修業を始めたのが非常に若かったからだという。もちろん、彼らは真の天才であり、ある意味で神の領域に近づいた人々だ。しかし、一般人でもいまが修業期間であることを認識して、飽きずに十分な時間を一つのことにかければ、マスタリーの域に近づくことができるかもしれないのだ。
 私は書評をまとめた本をこれまでに数冊上梓しているのだが、よく読者から「面白い本を選ぶ方法」について聞かれる。そのたびに絶句する。書店をブラブラしていると、この本は絶対面白いと、表紙を見るだけで確信を持つことがある、などというのは答えになっていないからだ。
 ビジネスマン時代に大量の本を読んでいた。二十年間にわたり毎日最低でも二時間だ。結果的に著者がいう一万時間というハードルをどこかで超えたに違いない。結果的に本に関してはある意味でマスタリーのとば口に辿り着いたに違いない。いつの間にか書評も練習なしで書けるようになっていた。
 本書のレビューも感覚的にお引き受けした。ゲラをちらっと見せていただいて、凡百の自己啓発書ではなく、多くのマスタリーたちの人生から、体感として生き方を学ぶことができる書であると確信したのだ。それは自分のためでもあった。前述した修業とはマスタリーになるための、最初の過程にすぎない。著者はさらに創造的活動期、理性と直感との融合などの過程があるのだという。なるほど、自分はまだまだだ。伸びしろがあるのだ。これからの人生が楽しみだ。それゆえに、本書は若者から中高年まで、自分の未来をより良く変えたい人にとって格好の読み物だ。親子で読める熟達の書だ。

(なるけ・まこと 書評サイト〈HONZ〉代表)
波 2015年7月号より

著者プロフィール

1959年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。翻訳者、雑誌編集者などを経て執筆業に。邦訳は『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則』(角川書店)、『恐怖を克服すれば野望は現実のものとなる』(トランスワールドジャパン)など。『マスタリー―仕事と人生を成功に導く不思議な力―』は5冊目の著書。

上野元美

ウエノ・モトミ

英米文学翻訳家。訳書はウィンタース『カウントダウン・シティ』、バー=ゾウハー/ミシャル『モサド・ファイル イスラエル最強スパイ列伝』、カーソン『シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち』(以上、早川書房)、スアレース『デーモン』(講談社)、ハンプトン『F-16 エース・パイロット 戦いの実録』(柏書房)、バフ『深海の雷鳴』(ヴィレッジブックス)など多数。

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