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百人一首の謎を解く

草野隆/著

836円(税込)

発売日:2016/01/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

定家の企み、見破ったり。長年未解決だった謎に明快な解答を示す、百人一首の見方が変わる快作。

「百人一首」には数多くの謎がある。誰が何のために作ったのか? 不幸な歌人が多いのはなぜか? 歌人の代表作が撰ばれていないのはなぜか? 神様、仏様の歌が一首もないのはなぜか? その答えは、そもそもこの撰歌を発注した者の意図と、その歌が飾られた場所に着目することで見えてくる。長年、解かれぬままになっていた様々な謎に対して、明快で説得力に満ちた「解答」を示す、百人一首の見方が一変する一冊。

目次
第一章 実は謎の多い『百人一首』
誰でも知っているが/十二の謎/誰が何のために作ったのか/本当に名歌の集成か
第二章 もう一つの『百人一首』
『明月記』の記事に見える和歌の色紙/『百人秀歌』は何のために誰が作ったのか/施主に見せた覚え書きの冊子/百首か百一首か、はたまた百三首か
第三章 撰歌方針の謎
質素な庵ではない/障子にふさわしい歌とは/神様の歌が撰ばれないのはなぜか/仏様の歌が撰ばれないのはなぜか/釈教の歌がないのはなぜか/賀の歌もない/「幸福な」歌人は撰ばれにくい/不幸な歌人たち/不幸な歌人はまだいる/和歌史に残る歌人が撰ばれていない/「よみ人しらず」の歌がない/代表作が撰ばれないのはなぜか/さらなる疑問/撰ばれる歌人、撰ばれない歌人/施主と撰者の立場
第四章 クライアント・蓮生の素顔
三つの顔/武人蓮生/僧侶蓮生/蓮生の寺院建立/歌人蓮生と藤原定家
第五章 山荘の造りが謎を解く鍵だった
障子のありか/阿弥陀如来の世界/部屋を隔てる障子/障子に描かれるもの/阿弥陀如来を望む空間/阿弥陀堂の内部/浄土教の世界観/蓮生の山荘の中の極楽と現世/苦しむ人々
第六章 定家の密かな「シカケ」
当惑する定家/ほおかむりする定家/サービスする定家/暴走する定家/「シカケ」をする定家/さらに「シカケ」をする定家
第七章 『百人秀歌』から『百人一首』へ
控えから完成品へ/後鳥羽・順徳両院の歌の追加/俊頼の和歌を入れ替える/世に出された障子和歌と内容の調整/定子皇后の歌が取り除かれる/二人の中納言が削除される/歌順が全面的に変更される/『百人秀歌』から『百人一首』へ/昇進を反映/通説の矛盾点
第八章 歌人たちの苦しみ
苦の中の風景/蝉丸――生まれながらの苦しみ/道因法師――老醜/定子皇后、三条院――病苦/実朝――突然の死
第九章 ベストセラー『百人一首』の誕生
定家の死・蓮生の死/障子色紙の持ち主/冊子にされた障子色紙和歌/『百人一首』の発見/異種百人一首の流行/撰歌集からカルタへ/明治のカルタ会/『百人秀歌』の発見/『百人一首』の現在
蓮生嵯峨中院山荘障子和歌(復元)
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 ヒャクニンイッシュノナゾヲトク
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610653-8
C-CODE 0295
整理番号 653
ジャンル 古典
定価 836円
電子書籍 価格 814円
電子書籍 配信開始日 2016/05/27

蘊蓄倉庫

「百人一首」は結構暗い

 誰でも一度はカルタで楽しんだことがある「百人一首」。古今の名歌を集めた撰歌集だと思われがちですが、どうもいろいろ不思議な偏向があるようです。たとえば、いわゆる「賀の歌」、めでたい歌が一首も撰ばれていないのです。また、島流しにあったとか、地獄に墜ちたとされているとか、不幸な人生を送った歌人の比率が非常に高いのも特徴的です。なぜそんなことになるのか。説明が長くなるので、そのへんは『百人一首の謎を解く』(草野隆・著)をお読みください。
掲載:2016年1月25日

担当編集者のひとこと

ミステリのような面白さ

歴史の謎、古典に隠された暗号を解く、という分野の本は数多くあります。その中には、真相に迫る新説もあれば、妄想スレスレのトンデモ話もあります(どれがどうとは言えませんが)。
 この『百人一首の謎を解く』は、前者であると確信しております。
 ここで取り扱っている謎は、以下のようなものです。

・いつできたのか?
・誰が作ったのか?
・何のために作られたのか?
・神様や神話時代の歌、また仏様、高僧の歌がないのはなぜか?
・賀の歌、釈教の歌がないのはなぜか?
・不幸な歌人の歌が多いのはなぜか?
・和歌史に残るような実績のない歌人の歌が見えるのはなぜか?
・「よみ人知らず」の歌がないのはなぜか?
・その歌人の代表作が撰ばれていないのはなぜか?
 等々。

 これら、長年明快な答えが出されていなかった謎を、著者は一挙にこの一冊で解決してしまいました。
 謎を解く鍵は、クライアント、つまりこの撰歌集を作るように藤原定家に依頼した人物と、その歌を飾る場所にあった、というのが著者の見立てです。
 そのロジックは極めて精緻で、かつ説得力に満ちています。
 なるほど、なるほどと読み進めて、最後には「その説しかないのでは」という風に思わされてしまいます。
 和歌好きだけではなく、ミステリ好きでも楽しめる内容ではないかと思います。

2016/01/25

著者プロフィール

草野隆

クサノ・タカシ

1957(昭和32)年神奈川県生まれ。上智大学文学部国文学科卒、同大学院文学研究科博士課程後期中退。修士(国文学)。跡見学園女子大学、立正大学等で非常勤講師。星美学園短期大学国文学科および人間文化学科の教授を経て、2016年1月現在は名誉教授。

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