その人物とは、竜崎、伊丹とキャリア組同期ながら、警察庁「長官官房総括審議官」と出世レースのトップを走る上條貴仁。演じるのは、これまた曲者俳優の生瀬勝久。というわけで、竜崎・伊丹と上條とのバチバチとした火花の散らしあいも見どころとなりそうです。竜崎の妻・冴子役は、“イイ女度”ますます上昇中の女優・鈴木砂羽。血を吐いて緊急入院しても「家のことは私に任せる、あなたは国の仕事をする。いつもそう言ってたじゃない」と、事件を抱える夫を職場に追い返す気丈さは、この変人夫にして、この妻あり、でしょうか。

　警察官の階級は、下から巡査・巡査部長・警部補・警部・警視・警視正・警視長・警視監・警視総監の9つに分かれますが、キャリア組の竜崎の階級は、上から3つ目の「警視長」。さる事情で大森署の署長に降格された竜崎が、ささいなことで怒鳴り込んできた方面本部管理官（階級は2階級下の警視）を、顔色ひとつ変えず撃退する場面など、さながら「水戸黄門」印籠シーンの趣きです。

　さて、原作である今野敏「隠蔽捜査」シリーズ（『隠蔽捜査』『果断―隠蔽捜査2―』『疑心―隠蔽捜査3―』『初陣―隠蔽捜査3.5―』『転迷―隠蔽捜査4―』『宰領―隠蔽捜査5―』）は、すでに累計140万部を突破した人気シリーズ。もちろん、その魅力は警察組織の権力闘争や人間模様だけではありません。見落とされがちな事実に着目した竜崎らが少しずつ事件の真相に迫っていく、手に汗にぎるストーリーは、まさに警察小説の王道です。ドラマを愉しむ前に、まずはこの「今野ワールド」にたっぷり浸ってみてはいかが。