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リリー・フランキーは僕らの世代の哲学者!?


 昨年、「凶悪」「そして父になる」という二本の話題作に出演し、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞したリリー・フランキー。恐ろしい犯罪者と、子どもを愛するお父さん、という対照的な二つの役を演じ分けたその力量に、多くの映画ファンが唸らされました。

 すっかり「俳優」としてのイメージが定着したリリーさんですが、名作『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン―』を書いた作家として、また「おでんくん」をはじめとする愛すべきキャラクターを描くイラストレーターとしても活躍する、様々な顔を持つ才人です。

 今回ご紹介する新刊『エコラム』は、そんなリリーさんによるイラスト&コラムを集めたもの。
 担当編集者は本書を読んで、俳優が本業ではないリリーさんが、なぜあれほどまでに素晴らしい演技ができるのか、その秘密がわかったような気がしました。

 まず『エコラム』は、とにかく笑える本です。エロくて過激な下ネタや、バカバカしいエピソードが満載で、とても『東京タワー』と同じ作者が書いているとは思えません(?)。
 でもやがて気付かされるのです。本書の根底に流れているのは、「人生とは何か」という真剣な哲学だということに。

 たとえばこの本のなかでリリーさんが考えるのは、「人間はどうしたら幸福になれるのか」「“友だち”とはどういう存在なのか」「愛とはなにか」といった大きな命題ばかり。「ウ○コの長さ」や、「チ○ポの大きさ」といった下らない話に笑わされているうちに、いつのまにか「生きること」について深く考えさせられている、本当に不思議な作品です。

 エロくて、甘酸っぱくて、下らなくて、切なくて、深い。『エコラム』の魅力は一言で言い表せません。それはまるで、様々なジャンルで才能を発揮するリリー・フランキーその人を表しているかのようです。
 そして、ひたすら真剣に「人間」を見つめてきたリリーさんだからこそ、凶悪な犯罪者にも、普通の父親にも、自然になりきることができたのだろう、と思わされるのです。

 リリーさんいわく「ちんことうんこと、切なさの話」。異能の人の原点を知ることができる一冊を、どうぞお楽しみ下さい!

(新潮文庫編集部Y・O)


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2014年04月10日   今月の1冊
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