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新潮文庫でディズニー三昧

 新潮文庫にはディズニーリゾート関連本がいくつかあります。以下、順に紹介して参りましょう。

 まずは、TDR研究会議ディズニーリゾート150の秘密』です。TDR研究会議さんがガンガン雑学を集めた名著です。最初は『ディズニーランド101の謎』(TDL研究会議著)として、「新潮OH!文庫」で出たのですが、その後、「ディズニーシー」の雑学も増補して、表題の書名になりました。「東京ディズニーシーは実はアメリカのボツ企画だった/絶対に別の場所で同時出演しないミッキー驚異のスケジュール管理の真相」などなど、どうやって調べたのかちょっと怖いようなディープな雑学が満載の一冊です。

 続いて、堀井憲一郎ディズニーから勝手に学んだ51の教訓』です。これもすごいです。堀井さんは長く週刊誌で「ホリイのずんずん調査」を連載されてきた、実地調査の鬼です。調査対象はスキー場や『巨人の星』や落語など、バラエティに富んでいるのですが、ここ20年、東京ディズニーランド&シーをずっと調査されています。トイレの個室の数や各アトラクションの時間帯による待ち時間の変化や花火がもっとも美しく見られる場所の研究など、常人には到底調査できない事象を早大漫研の後輩たちを調査員に従え、調査し続けています。その成果は、単行本の『東京ディズニーリゾート便利帖』(新潮社)に集められていますからそちらを読んでいただくとして、この『ディズニーから勝手に学んだ51の教訓』は、そうやって毎週のようにディズニーに何百回も通った堀井さんが見た光景の中からディズニーをより楽しめる、あるいは人生をより有意義にできる、そういうエピソードを思い出していただいて、教訓風味にまとめてもらったものです。若い女子たちの感動的な光景や温度差の激しいカップルの悲劇や親心が徒になった幼子の爆発などなど、人生を生き抜く上での重要な教訓が語られた名著です。

 続いて。すごいのが、この夏に出ました。

 同じく堀井憲一郎『TDLレストランぜんぶ食べたガイト 全土産店紹介付』『TDSレストランぜんぶ食べたガイト 全土産店紹介付』の2冊です。東京ディズニーランドとシーとそれぞれの全レストランのほぼ全メニューを自ら食べて回った集大成です。ついでに土産物店全店の棚の調査も敢行しています。「ほぼ」全メニューとしたのはメニューがころころ変わるから、「全」と言い切れないのです。堀井さんは人様の作った料理に対して、まずいだの辛いだのいうグルメライターではありません。単なる好き嫌いのあるおっさんとして、しかもディズニーリゾート特有の魔法にかかった状態を勘案して、豪華なコース料理のレストランから、チュロス屋台までレポートしています。堀井さん的なおすすめレストランランキングも発表しています。

 以上が非文芸的ディズニー本です。文芸的なディズニー本は、小説が1点、詩集が1点あります。

 まずは小説から。松岡圭祐ミッキーマウスの憂鬱』。


 松岡さんといえば、『万能鑑定士Qの謎解き』『探偵の探偵』『千里眼』などのミステリーの大ヒットメーカーとして知られていますが、本書は、ディズニーランドのアルバイトスタッフ(キャスト)としてバックステージに飛び込んだ若者の活躍を描くさわやかな青春小説になっています。興味深いディズニーランドの舞台裏を舞台に21歳の青年が、友情、トラブル、恋愛と様々な体験を経て成長していくという、心温まる傑作です。元気をもらえます。

 最後は大御所の詩集です。

 谷川俊太郎夜のミッキーマウス』。これをディズニー本としていいのかどうか、難しいところですが、まあ入れちゃいましょう。現代の詩人として巨星といっていい谷川さんの詩集です。表題の作品の他、「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」といったタイトルの詩が30編収録されています。「百三歳になったアトム」という作品もあります。ディズニーのキャラクターたちが詩人の心の中でどう躍動するのか、ぜひぜひ、声に出して読んでみてください。思わぬ発見がありますよ。ただ、「なんでもおまんこ」という詩は、黙読をオススメします。

 以上が新潮文庫のディズニー本です。漏れているのもあるかもしれませんが。9月の長雨が終われば、待ちに待った秋です。ディズニーの季節です。シルバーウィークもあります。ハロウィンもあります。しっかり、上掲書を読んで予習して、気持ちのボルテージをぎんぎんに高めて、舞浜に乗り込みましょう。浦安でもいいです。

 ではでは。よいディズニーを!


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2015年09月15日   お知らせ / 文庫セレクト
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