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「発売たちまち重版決定! 単行本刊行時に大きな反響を呼んだ作品が待望の文庫化」

「"母娘"という切っても切れない絆で、がんじがらめになっている人に読んでほしい」「痛いけれど、慰められた本」――。 30代~50代の読者から、こんな切実な声が寄せられています。発売直後から売れ行き好調で、早々に重版が決定し、 ベストセラーの予感を漂わせている『長女たち』(篠田節子著・新潮文庫)。 他人事とは思えない介護の実情が3つの物語に描かれ、母親の介護に人生を費やす娘たちの言葉にならない思いが胸にせまってきます。
「空々しい救いは書かなかった」と、著者はあるインタビューで語っています。その言葉通り、母を世話する娘の心情は息を呑むほど切実で、ときに憎しみと苦しみが言葉になって噴出します。
 そこまでして私の人生を邪魔したかったの――。恋人と別れ、仕事のキャリアも諦めて介護する直美の抑えがたい心情。孤独死した父への悔恨に苛まれる頼子。 糖尿病の母に腎臓を提供すべきか苦悩する慧子。老親の呪縛から逃れるすべもなく、周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い娘たち。そのつらい日々であっても、著者は微かな希望を描きだしていきます。 みずからも老母を世話しつつ執筆する著者ならではの、真実にあふれた物語です。
 

吉本興業105年。草創期は『花のれん』、マンザイブームから世界制覇を目論む現在までは『よしもと血風録』で。
 2017年は大手芸能プロダクションの吉本興業さんが創業から105年という年にあたるそうです。この秋からはじまったNHKの朝の連続テレビ小説「わろてんか」が吉本興業の創設者吉本せいをモデルにしたドラマになっています。
 鈴木福くんがめちゃめちゃいい味出してるなと思ったら、濱田岳さんに変わって、これがまたいいんです。主人公のてんちゃんからは歯牙にも引っかけられない遠縁の従業員ですが。
 山崎豊子さんの記念すべき直木賞受賞作『花のれん』(新潮文庫)は、吉本せいの物語になっています。 商家出身のお嬢さん河島多加は好いた男と結婚したものの、これが働かない。だめんず亭主の道楽は寄席通い。多加は、寄席の経営をやってみたら、さすがの亭主も興味を持って働くのではないか......と考えたのです。事業開始から10年ほどで亭主は没し、彼女の細腕に興業の命運がのしかかってきます。女興行師多加の機転と度胸で数々の艱難辛苦を乗り越えていく草創期がドラマチックに、感動的に描かれています。

 時は過ぎて、昭和50年代。ちゃらんぽらんな大学生がふとしたきっかけで吉本興業に入社します。大崎洋という若者です。常松裕明著『よしもと血風録―吉本興業社長・大崎洋物語―』(新潮文庫)の紹介に突入しております。大崎は寝坊に遅刻にダブルブッキングにミスだらけ。どういうわけかミスター吉本と呼ばれた敏腕のベテランマネージャー木村政雄氏に引っ張られ、2人で東京に乗り込みます。
 しかし、折からのマンザイブームで目の回るような忙しさ。紳助竜介、ザ・ぼんち、のりおよしお、B&B......次々スターになっていきます。不眠不休の数年を経て、誰に睨まれたのか、突如の帰阪命令。大阪では仕事も与えられず、事務所前を掃除する日々。
 そんな中、芸人養成所NSCに光る才能を見つけたのでした。同期のハイヒール、トミーズが売れていく中、その2人には仕事が来ません。コンクールに出ても芸が新しすぎるのか審査員から酷評されるばかり。「もうやめよか」。
 しかし、大崎はその2人の才能を信じていました。「絶対売れる、自分ら最高やもん」。おしかけマネージャーを買って出たのでした。そしてその2人、ダウンタウンの躍進がはじまります。
 吉本興業の東京進出、アジア進出、コンテンツ事業、映画事業参入など今日の発展までを後に社長となる大崎洋の視点で描く痛快無比のノンフィクションです。

 読書の秋、お笑いの秋。元気になる2冊です。
 

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2017年10月13日   今月の1冊
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