配偶者や子供など、最愛の人を亡くしたときに感じる喪失感は、一体どのようなものなのでしょうか。そして、その死を受け入れられるまでには、どのくらいの歳月がかかるのでしょうか――。
『
妻を看取る日』は、日本のがん医療の最高峰である国立がんセンターの名誉総長・垣添忠生さんが、最愛の妻を亡くした後に辿った道のりを記しています。がんの専門医であり、これまで多数の患者さんを見送った体験がある垣添さんですが、妻亡き後に襲ってきた喪失感は想像を絶するものでした。酒をあびるほど飲み、自殺する気力がないから生きているという、どん底の状態が続いたのです。しかし、時の経過とともに少しずつ気力が戻り、再生への道を歩み始めます。そして、自分の経験が役に立てば、と本書を執筆しました。
本書で、垣添さんは、今後のがん医療の課題の一つとして「グリーフケア(悲嘆の回復)」の研究を挙げています。グリーフケアとは、最愛の人を失った人が陥る心理状態を把握し、それぞれの症状に応じた支援や対処を行うことで苦しみを軽減させ、再生させる手助けをする学問です。
これまで、がんについては、いかに防ぐか、もしくは、いかに治すか、ばかりに目が向けられてきました。しかし、年間34万人もが「がん」で亡くなっている今、その家族の悲しみにも対処する医療が必要になっているのではないでしょうか。著者の壮絶な体験を通じ、様々なことを考えさせられる一冊です。
(2010年3月18日)