レベル4の東海村臨界事故の記録、これがレベル7ならば……
3月11日の東日本大震災以来、これほど注目されている本はないだろう。
1999年9月、茨城県東海村の核燃料加工施設(JCO)でレベル4の臨界事故が起こった。作業員2名が6から20シーベルトの放射線を被曝し、亡くなるまでの83日間を追った迫真のドキュメントが『
朽ちていった命』。
忘れ去られていたこの事故が、福島第一原発の事故で俄然身近なものとなった。しかも福島はレベル7。震災後4万3千部増刷したことからも、関心の高さがうかがえる。
放射線障害の恐ろしさは、筆舌に尽くしがたいものがある。まさに葉をいっぱいに茂らせていた大木が内側から外側から蝕まれ、朽ち果てていく姿に等しい。免疫を司るリンパ球はゼロ、腸の粘膜は全くなくなり、大胸筋の細胞は細胞膜しか残っていない。全身の表皮が失われ、体液と血液がとめどなく滲みだす。
そんな患者を前にして、手をこまねいているしかない医師団。「放射線障害の広がりと強さに虚無感すら感じた」とある医師は述懐している。
本書のなかで「原子力防災の施策のなかで、人命軽視がはなはだしい。……責任のある立場の方々の猛省を促したい」という言葉が紹介されている。果たして東海村臨界事故の教訓は生かされたのだろうか。福島第一原発を見る限り、“人命尊重”、“安全神話”などという言葉は案の定、お題目に過ぎなかったようだ。
(2011年5月13日)