新潮文庫 感動大賞



第二回 新潮文庫感動大賞


粗筋を紹介したり、作品を分析する従来の読書感想文ではなく、読後の感動を自分の体験に引き寄せて自由に著していただく読書エッセイコンクール「新潮文庫感動大賞」。第二回を迎えた今年度は二〇〇九年九月末日締切で全国から八千六百十二編のご応募がありました。一次選考で九十作品に、二次選考で二十五作品に絞られ、選考委員の宮部みゆきさんによる最終選考では、大賞一作品、優秀賞二作品が栄えある第二回の受賞作となりました。
大賞・優秀賞の三作品は、2月27日発売の雑誌「yom yom vol.14」にも掲載しています。



大賞


大津友佳「ディズニーランドの憂鬱

(愛知教育大学附属高等学校一年生)


優秀賞


高野遵希「未来予想してみた。

(いわき秀英高校一年生)

小島由久「駅伝人生

(会社員、四十四歳)




本サイトの一部のコンテンツをご覧になるにはMacromedia Flash Playerプラグインが必要となります。
プラグインについて

選考委員


宮部みゆき ミヤベ・ミユキ

1960(昭和35)年、東京生れ。1987年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。1989(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。1993年『火車』で山本周五郎賞を受賞。1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。1999年には『理由』で直木賞を受賞。2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、2002年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞した。他の作品に『ブレイブ・ストーリー』『ぼんくら』『孤宿の人』『楽園』『英雄の書』などがある。

大極宮



「新潮文庫感動大賞」選評


宮部みゆき
 第二回目を迎えました「新潮文庫 感動大賞」。今回は八千六百十二編のご応募をいただきました。ありがとうございます。
 そのなかから選ばれた二十五編の読書感動文が私の手元に届いたのは二〇〇九年末のことで、大賞の選考は二〇一〇年が明けて早々に行いました。その結果、上記の大賞、優秀賞を選定させていただきました。
 私の世代の感覚では、二一世紀に入って十年目というのは、ほとんどSFの世界です。もう宇宙ステーションがくるくる回っているはずですし、火星旅行も実現しているはずでした。現実はそんなことはなく、二一世紀も二〇世紀と地続きで、進んでいるところは進み、停滞しているところは停滞したまま、むしろ後退したところもあったりするわけですが、しかし、嬉しいことに「本を読む歓び」に変わりはありませんでした。
 今回限りで、私は選考役から外れます。感動大賞の前身「どっかんフォーラム」から数えれば十年以上、多くの読書感動文に触れることで、ほかでは得ることのできない楽しみや、新しい視点をいただいてきました。ここであらためて、応募してくださった多くの皆様に御礼申し上げます。
○大賞「ディズニーランドの憂鬱」(対象図書 『ミッキーマウスの憂鬱』)
 一読、大賞はこれだこれだこれっきゃないと、楽しく笑いながら決めました。
「どっかんフォーラム」以来、私は、お預かりした読書感動文を読む際、対象図書を未読の場合には、まずそちらから先に読むことにしてきました。でも、この場合はそうしませんでした。
 実は私、東京ディズニーランドが大好きなのです(余談ですが、三島由紀夫も好きだったんだって。もちろん本家本元の方ね)。なのでやっぱり『ミッキーマウスの憂鬱』は読みたくなかったのですよ。〈夢の国〉もビジネスなのだから、そりゃ裏側にはいろいろあるだろうけどカンベンしてよ、という気分でした。
 それでも、この感動文は面白い! 何でしょう、このトボけた味は。こんな文章を書く十六歳を擁する三河安城の地よ、恐るべし。
 昨今、世の中でウケている〈笑い〉が、どうにも自己中心的かつ攻撃的になっているような気がして、私はユウウツになることが多かったのですが、この一文でココロが晴れました。トボけているというのは、つまり自分を客観視できているということです。締めくくりの「また一緒に行こうね」がさらにいい! うん、もういっぺん行ってみてね。私はいっぺんスガキヤに行ってみますね。
○優秀賞「未来予想してみた。」(対象図書 『さくらえび』)
 こちらもまたまた十六歳。またまた笑える読書感動文です。しかも身につまされつつ笑っちゃう。こんな文章を書く十六歳を擁するいわき市よ、恐るべし。いやはや、こうなると日本中が文章家の関ヶ原みたいに思えてきちゃいますね。
 そうだよねえ。本を読んで感動したり、勇気を得たりすることはあるけれど、ふっと我に返ると現実が(笑)。先の見えない未来にため息をついてしまうのは、いくつになっても同じですよ。でも、この文章が素敵なのは、やっぱりそういう自分からちょっと離れて、照れくさそうに(かつ温かく)、外側から眺めているところ。この呼吸を忘れなければ、大丈夫、きっといつか未来の妻に出会えますよ。うん、たぶん、まあその、おそらく。
 ああ、また身につまされちゃった。
○優秀賞「駅伝人生」(対象図書 『風が強く吹いている』)
 組織に属して仕事をするということは、その組織の次世代に襷を受け渡してゆく駅伝だ、という考え方は、思いのほか新鮮なものではないでしょうか。
「百年続く会社でも百年働いた人はいない」
 簡にして要を得た、これは至言です。
 普通は、自分がその組織で何をするか、どれだけ重要な役割を果たすかということの方に、ついつい重きを置いてしまう。つまり、理想は〈脱・部品〉。そうでないと自分が惨めだ、生き甲斐がないと思えてしまうから。
 でも、実は私たちみんな、いつでもどんな組織のなかでも〈部品〉なんですね。それは、ときどきカッコよく〈創造的な仕事〉なんて呼ばれる私みたいな小説家だって、事情はまったく同じです。文芸の世界、出版界の一部品なんです。何を失礼な、そんなことはない、それじゃ足りないとダダをこねれば、襷の受け渡しは絶えてしまう。
 大切なのは、自分が渡された襷を受けて、まず走ること。それをしっかり自覚することと、個々の人生の幸不幸とはまったく別のものです。ここんとこを混同すると、やれ勝ち組だ負け組だ、本当の自分はどこにいる――なんて、ややっこしい迷路に入ってしまう。
『風が強く吹いている』は今回の人気対象図書でして、多くの若い方々から爽やかな青春感動文が寄せられましたが、この「駅伝人生」は、人生にある程度のキャリアを積んだ読者でなければ持てない視点が嬉しく、大いに共感いたしました。お互い、これからも頑張りましょうね!


最終選考通過者

最終選考結果 学校名・職業 氏名 感動文タイトル
大賞 愛知県 愛知教育大学附属高等学校 大津友佳 ディズニーランドの憂鬱
優秀賞 福島県 いわき秀英高校 高野遵希 未来予想してみた。
優秀賞 静岡県 会社員 小島由久 駅伝人生

二次選考通過者

氏名 感動文タイトル
埼玉県   岩野和奈 たいせつなことは、目では見えない。
    関根菜帆 十二歳のキミへ
    小松加奈 私の生きること


東京都   柘植慧子 「きみの友だち」を読んで
  湯川沙和子 蘇った過去
    末安りえ 下人と私の違い
    関口舞 本が繋ぐ
    田村郁 パパが居た


富山県   宗田千奈 片想い


静岡県   右田恵 文学から数学を感じる


愛知県   鈴木杏奈 悲しい音楽会とやさしい音楽会


大阪府   平岡朋子
    吉田莉子 ナスを食べてくれたお兄ちゃん


兵庫県   今西麻友 プチシューの記憶
    北浦和季 私たち、ぶらんこ乗り
    浅野早紀子 「博士の愛した数式」を読んで
    伊藤陽子 足長おじさんは、どこにいる
    谷古悠 塩狩峠から学んだこと


奈良県   小川千秋 かなしいは、いとしい


福岡県   倉岡遼 走れ自分
    山口倫加 読書特効薬
    児玉大地 人生のギャップ

一次選考通過者

氏名
北海道   舘石宏子


秋田県   加藤賢人


福島県   松本薫/鈴木清花/加藤葵/大内七月


茨城県   森田正恵


埼玉県   櫛谷冴香/岡島聡央理/石松万里奈/島田友佳理


東京都   小林菜那/坂口夏澄/梅崎太郎/広田響子/松浦佑美/入江彰子/幸田早紀/飯田綾/友田美紗/伊藤英里奈/柏俣茜/樋口歩実


神奈川県   野村舞/片山陽絵/高橋俊樹


静岡県   石川萌依


愛知県   渡邊綾乃/生川遼太/大地沙也奈/後祥緒/徳井彩水/岡本薫/小嶋みゆき


三重県   河村莉奈


京都府   山﨑慎也


大阪府   宇都山遥/田村高敏/鈴木絢子/丹原悠貴


兵庫県   長岡恒平/小林理雄/守家英斗/酒井かおり/川上薫/中村建五/山田千恵


奈良県   嶋田梨良


鳥取県   太田知奈美/吉田早紀


島根県   升田尚世


岡山県   天羽舞


広島県   稲田聖菜/荒木希望/内田愛/丸亀智美


山口県   伊藤弘恵/霜川能理子


福岡県   井手誠也


長崎県   福留麗那/荒木優貴子/入里直樹/冨永めぐみ


大分県   首藤紘子


鹿児島県   井出真結



ページの先頭へ戻る