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特集 いいぞ、応援!

考える人 2016年秋号

(季刊誌 年4回発売)

980円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/10/04

発売日 2016/10/04
JANコード 4910123051161
価格 980円(税込)

特集
いいぞ、応援!


ルポ
「ほぼ日」TOBICHI(2)の応援体質

インタビュー
松岡修造 肩書きを“応援人”に変えたい

ルポ
我武者羅應援團 自分をさらけ出して本気で生きろ!

ルポ
まだ見ぬ君に「ゴチメシ」を

エッセイ
「融資」という応援のかたち 慎泰俊


小特集
人生で大切なことはみんな
漱石先生に教わった。


向井万起男 漱石の直筆英語を見に行く
山崎正和 “消極的な”サロン主宰者――「木曜会」とは
川島幸希 漱石はどんな先生だったのか

わたしの漱石先生
漢文 高島俊男
落語 柳家小満ん
俳句 山田航
絵画 中野京子

特別企画

鼎談
糸井重里×細野晴臣×横尾忠則

ぼくらは“飛び出した”方が生きやすかった[前編]

500年の時が生み出す、虎屋の美


【第15回】
小林秀雄賞 決定発表
受賞者インタビュー
森田真生
選評
受賞作『数学する身体』抄録

特別企画

対談
山本貴光×吉川浩満
生き延びるための人文3
モードチェンジは「驚き」から始まる

新連載
千葉望 風流人をさがして

コラム
考える秋 廣瀬通孝

連載
graphic special

都築響一 圏外写真家
田原桂一 光の意志

high thinking
細野晴臣 地球の音
若松英輔 岡倉天心 日本近代絵画を創った描かぬ巨匠(最終回)
安藤忠雄 だから私は木を植える(最終回)
養老孟司 森の残響を聴く
糸井重里 いまさらだけど、マンガっていいなぁ。
向井万起男のどんな本、こんな本
杉本圭司 小林秀雄の時 ある冬の夜のモオツァルト
苅部直 「文明」との遭遇
マイケル・エメリック 行ったり来たり
宮沢章夫 牛でいきましょう

plain living
三宮麻由子 暮らしのサウンドスケイプ
村井理子 村井さんちの生活
是枝裕和 空の虫かご
近藤雄生 ここがぼくらのホームタウン

○石川直樹「いまヒマラヤに登ること」、池澤夏樹「科学する心」、「しつもん、考える人」は今号休載いたします。

この号の誌面

編集部の手帖

 今号の表紙はリスです。レジメンタルのタイも凜々しく、「いいぞ、応援!」という特集にエールを送っています。伊藤彰剛さんのイラストです。
 応援といえば、リオ五輪・パラリンピックの観戦には、やはり力が入りました。メダリストたちの栄光だけでなく、敗者たちの躍動にも強い印象を与えられました。またパラリンピックが日本でこれほどクローズアップされるのも、二〇二〇年の東京大会がいよいよ視界に入ってきたからでしょう。過剰な「国威発揚」のメダル獲得合戦だけでなく、パラリンピアン個々人に対する敬意、共感の輪が広がることで、本来オリンピックがめざしていた国際協調、世界の相互理解が再び理念として重視されればよいと思います。新しい風を期待しています。
 ところで、ここしばらく、公的な場での暴言や、ネット上の心ない誹謗中傷、いじめの横行が目につきます。礼節や品格などにはお構いなしで、人を罵倒し、傷つけることを愉しむかのような言葉の暴力が氾濫しています。世の中に広がる不安や怒り、孤独感をそうしたバッシングで解消、穴埋めしているのでは、という見方もされています。
 このようなイライラ、いじめが顕在化する一方で、困難に見舞われた人や、「すごい」人たち――本人がしかとは気づいていない「才能」を秘めた人を目にすると、思わず手を差し伸べ、背中を押したくなるのも人情です。手助けしなくてはという善意の発露ではありますが、それにもましてそうすることが純粋に楽しくて、うまくいけば一緒に「やったぁ!」と快哉を叫ぶ快感をすでに知っていることも理由のひとつです。
 人はなぜ応援したいと思うのか。何を見ると応援したくなるのだろう? どういう応援が心に響くのか? 悩んだことのある人は少なくないでしょう。私たち編集者の仕事というのも、これに尽きると言えそうです。胸にもやもやを抱えている人に、表現のための道すじを用意して、道中を一緒に歩きます。うまくいけば二人でバンザイ! 人のためか、自分のためか、問うてみても分かりません。
 そんなことを考えながら、今回の特集を思い立ちました。直接的には、春号の「考える人」リニューアルを三日通しの大イベントで後押ししてくれた「ほぼ日」TOBICHI(2)のスタッフに私たちが応援されたからでした。さりげない、それでいて繊細で行き届いた応援は、大きな勇気を与えてくれました。そんな東京糸井重里事務所の「応援力」を、ミクロで観察して、その「応援体質」を応援したい――そんな特集を組みました。
     *
 本年度の小林秀雄賞森田真生さんの『数学する身体』(小社刊)に決まりました。二〇一三年夏号の「数学は美しいか」の特集に「数学と情緒」というエッセイを寄稿していただいたのが最初のお付き合い。そして一五年春号の「数学の言葉」の特集では、三週間の濃密なヨーロッパ数学紀行に基づいて「計算の風景」というレポートをまとめていただきました。三十一歳の若い受賞者の誕生を、心から歓迎したいと思います。
 若松英輔さんの「岡倉天心」、安藤忠雄さんの「だから私は木を植える」の連載は今回が最終回です。代わって千葉望さんの新連載「風流人をさがして」が始まりました。初回は日本のインターネットサービスの先駆者であり、東京・上野の春の恒例「東京・春・音楽祭」実行委員会の委員長であり、その大パトロンでもある鈴木幸一さんにご登場願いました。
 夏目漱石の小特集は前号に続くものですが、今回は教師としての漱石の足どりを追いました。東北大学附属図書館に所蔵されている漱石の蔵書に圧倒されながら、「木曜会」を運営した“サロン主宰者”としての横顔に迫ります。
 また、『言葉を離れる』でこの度講談社エッセイ賞を受賞し、いま横尾忠則現代美術館(神戸)で「ヨコオ・マニアリスムvol.1」(十一月二十七日まで)を開催中の横尾忠則さんを囲んだ、糸井重里さん、細野晴臣さんの鼎談(前編)を掲載しました。あのYMOに入る寸前だった横尾さんが、なぜそうしなかったのか。真相が直接語られます。(和)

次号予告

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

考える人とは?

産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースは plain living, high thinking(=シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)という言葉を書き遺しました。工業化と都市化の急速な進展のなかで、イギリス人が本来持っていたはずの plain living, high thinking を人々が失いつつあるのではないか、とワーズワースは感じ、嘆いたのです。

 ちょうどその頃、ロンドンに留学していた夏目漱石も、イギリス人が環境汚染に悩まされ、都市生活がもたらす不安とストレスにさらされる様子を見て、そこに日本人の未来像を予感していました。

 私たちの暮らしも生き方も、産業革命後の世界の上に成り立っています。さらに、IT革命という新しい大きな変革の波の上に私たちは浮遊しています。漱石の予感を上回る変化のなかで、私たちは生きているのです。

 暮らしにはモノも情報も溢れている。私たちが日々のなかで「考えている」のは、ほんとうに自分が考えたことなのか、疑い始めるとなんだか怪しくなってくることもあります。溢れる情報の何を選択し、何を捨てるのか。暮らしに大切なこと、不要なモノをどう判断すればいいのか。大きな変革の波は、私たちの生活に、頭のなかに、じわじわとしみこみ始めています。その大きな波のなかで自分の船をどのように漕ぎ出せばいいのか、途方に暮れることも少なくありません。

 ものの考え方と暮らしはウラとオモテのようなもの。暮らしぶり、生き方と無縁の「ものの考え方」はないはずですし、「ものの考え方」はその人の日常から切り離すことはできないはずです。plain living があってこその high thinking であり、high thinking あってこその plain living なのです。

 私たちは今ふたたび、ワーズワースの言葉を頼りにして、自分の頭で考える力を問い、シンプルな暮らしを考えるべき時間と場所へたどり着いたのかもしれません。

 たまにはテレビを消して、身の回りも整理して、一人の「わたし」に戻り、自分の言葉と生活を取り戻したい。溢れるモノや情報をいったんせき止めて、ひと息つきたい。思考する頭に新鮮な空気を送り込みたい。そんなあなたのために用意する、小ぶりの静かな部屋に季刊誌「考える人」はなりたい、と考えています。

創刊編集長 松家仁之(まついえ・まさし)

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞

考える人

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