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特集 12人の、『考える人』たち。

考える人 2016年春号

(季刊誌 年4回発売)

980円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/04/04

発売日 2016/04/04
JANコード 4910123050560
価格 980円(税込)
特集
12人の、『考える人』たち。

巻頭エッセイ
鷲田清一
濃霧の中の方向感覚

スペシャルエッセイ
最果タヒ
わからないぐらいがちょうどいい

スペシャルインタビュー

志村ふくみ 新しき原点 聞き手:若松英輔

津田大介〝メディア変換〟しながら世の中に一石を投じる

アリアナ・ハフィントン成功を再定義しよう

伊勢﨑賢治「社会の生意気さ」の背を押す

スペシャル対談

内藤礼×池上高志 生命の「かたち」を考える

鈴木健×森田真生「チューリング部屋」をつくる

山本貴光×吉川浩満 生き延びるための人文① 「知のサヴァイヴァル・キット」を更新せよ!
新連載


圏外写真家(1)
オカダキサラ
都築響一

小林秀雄の時(1)
止まって了った時間
杉本圭司

糸井重里のいまさらだけど、マンガっていいなぁ。(1)
みんなが歌おうとしている。

ここがぼくらのホームタウン(1)
広島県尾道市向島
近藤雄生

光の意志(1)
夜の逆説
田原桂一

エッセイ
翻訳家というのは……
金原瑞人

考える春
おっさんと「かわいい」
宮田珠己

しつもん、考える人
弥生文化はなかったってホントですか!?
松木武彦
連載


向井万起男のどんな本、こんな本(9)
『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ著
向井万起男

だから私は木を植える(2)
OSAKA 参加する遺伝子
安藤忠雄

いまヒマラヤに登ること(5)
チョモランマ[5]
石川直樹

ヨーロッパ墓地めぐり(最終回)
感覚の優位
養老孟司

謎のアジア納豆(最終回)
幻の雪納豆
高野秀行

科学する心(4)
進化と絶滅と愛惜
池澤夏樹

超越と実存 私流仏教史(最終回)
中国浄土教と禅の思想
南直哉

「文明」との遭遇(4)
大坂のヴォルテール
苅部直

行ったり来たり(25)
冷蔵庫
マイケル・エメリック

牛でいきましょう(4)
鳩でいきましょう
宮沢章夫

暮らしのサウンドスケイプ(7)
美しい声とは
三宮麻由子

空の虫かご(3)
故郷
是枝裕和

◉若松英輔「岡倉天心 日本近代絵画を創った描かぬ巨匠」、平松洋子「日本のすごい味」は今号休載いたします。

「波」から
コミュニティづくり宣言

この号の誌面

編集部の手帖

表紙は真新しいスニーカーのイラストです。箱から取り出し、あのかぐわしい匂いをふかく吸って、はやる気持ちを抑えながらヒモを通します……。この夏で創刊十五年目を迎える「考える人」を、さぁ少しリフレッシュしよう、という気持ちを、武政諒さんがこの絵で表現してくれました。
 雑誌のリニューアルは、一九九八年三月に手がけた経験があります。それは幸い成功しました。いまも元気なその雑誌の姿を見ると、大きな手術を執刀したドクターの心境を思います。自分の力? いえいえ、あらゆる意味で幸運の神さまが味方してくれたと思うのです。
「考える人」は二〇〇二年七月にplain living & high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)を理念に掲げ誕生しました。創刊編集長を務めた作家・編集者の松家仁之さんは「創刊にあたって」を次の言葉で締めくくっています。
〈たまにはテレビを消して、身の回りも整理して、一人の「わたし」に戻り、自分の言葉と生活を取り戻したい。溢れるモノや情報をいったんせき止めて、ひと息つきたい。思考する頭に新鮮な空気を送り込みたい。そんなあなたのために用意する、小ぶりの静かな部屋に季刊誌「考える人」はなりたい、と考えています〉
 二〇一〇年七月からそのバトンを受け継いだ私ですが、いまもこの言葉を大切にしています。ただ状況に変化があったとすれば、「テレビ」ではなく、「スマホ」の画面からいったん目を離し、というところでしょう。そして、十五年目の新たな一歩を刻もうとすれば、小ぶりの静かな部屋から出ること、人に会いに行くことを、より積極的に心がける時期ではないか、という点です。その意味で、シンボルマークの椅子は、そこに坐ってひと息つく場であるだけでなく、そこを離れ、〝考える人〟に会いに出かける行動の起点でもあるのです。
 今号の特集は「12人の、『考える人』たち。」です。誌名と同語反復になるわけですが、「デジタルエデンの園」(アリアナ・ハフィントン)の中で生きることを余儀なくされているこの時代に、「考える」という行為をそれぞれの「現場」で持続している「人」に焦点を絞り、その人ならではのテーマ、その思考スタイルを紹介していきたいと考えました。12人という数に特に意味があるわけではなく、「自分の頭で考える」際の貴重な示唆を与えてくれる人物を、老若男女、私たちが選んだ結果です。
 多岐にわたる方々ですが、それぞれの「いま、ほんとうに大切なこと」を語っていただきました。今後の弊誌がどういう〝考える人〟たちとともに歩んでいこうとしているか、その一端を示したつもりです。
 さて、この号から雑誌の定価を九百八十円にしました。思い切った値下げです。「この時代、千四百四十円の雑誌を買うのは躊躇してしまう」という読者の声を受けたことに加えて、私は雑誌を究極のコミュニティ・ビジネスと考えています。「考える人」という〝雑誌〟が生み出す空間に多くの人が参加する入場料は安いに越したことはないのです。そのためのギリギリの努力をいたしました。年間で四冊三千九百二十円という価格設定は、SMAPのファンクラブの年会費四千円を下回ります(だからどうした、と言われそうですが)。是非「考える人」の誌面を通して、いろいろ「考える」きっかけと出会い、知の対話をしていただきたいと願います。これまでの愛読者の方にも、これからの読者の方々にも。
 最後に―。「Webでも考える人」を同時に立ち上げます。「考える人」という存在により頻繁に接していただくための、窓を大きく開きたいと思うからです。そして、ライブのイベントも定期的に行っていこうと思います。ほぼ日替わりのサイトと、月一ペースのイベントと、従来通りの季刊誌と、三つの流れの総体として、十五年目の「考える人」は歩き出します。スニーカーのヒモをしっかり結んで、軽快に出かけてみたいと思います。
(河野通和)

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

考える人とは?

産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースは plain living, high thinking(=シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)という言葉を書き遺しました。工業化と都市化の急速な進展のなかで、イギリス人が本来持っていたはずの plain living, high thinking を人々が失いつつあるのではないか、とワーズワースは感じ、嘆いたのです。

 ちょうどその頃、ロンドンに留学していた夏目漱石も、イギリス人が環境汚染に悩まされ、都市生活がもたらす不安とストレスにさらされる様子を見て、そこに日本人の未来像を予感していました。

 私たちの暮らしも生き方も、産業革命後の世界の上に成り立っています。さらに、IT革命という新しい大きな変革の波の上に私たちは浮遊しています。漱石の予感を上回る変化のなかで、私たちは生きているのです。

 暮らしにはモノも情報も溢れている。私たちが日々のなかで「考えている」のは、ほんとうに自分が考えたことなのか、疑い始めるとなんだか怪しくなってくることもあります。溢れる情報の何を選択し、何を捨てるのか。暮らしに大切なこと、不要なモノをどう判断すればいいのか。大きな変革の波は、私たちの生活に、頭のなかに、じわじわとしみこみ始めています。その大きな波のなかで自分の船をどのように漕ぎ出せばいいのか、途方に暮れることも少なくありません。

 ものの考え方と暮らしはウラとオモテのようなもの。暮らしぶり、生き方と無縁の「ものの考え方」はないはずですし、「ものの考え方」はその人の日常から切り離すことはできないはずです。plain living があってこその high thinking であり、high thinking あってこその plain living なのです。

 私たちは今ふたたび、ワーズワースの言葉を頼りにして、自分の頭で考える力を問い、シンプルな暮らしを考えるべき時間と場所へたどり着いたのかもしれません。

 たまにはテレビを消して、身の回りも整理して、一人の「わたし」に戻り、自分の言葉と生活を取り戻したい。溢れるモノや情報をいったんせき止めて、ひと息つきたい。思考する頭に新鮮な空気を送り込みたい。そんなあなたのために用意する、小ぶりの静かな部屋に季刊誌「考える人」はなりたい、と考えています。

創刊編集長 松家仁之(まついえ・まさし)