新潮社

吉本ばなな『キッチン』刊行30周年 『キッチン』と私 思い出・エピソード大募集

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う──

あなたと『キッチン』をめぐる物語をお寄せください。
吉本ばななは、皮膚やかたちではなく、
はじめから人のこころを見ているような気がする。
糸井重里
あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。
出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。
綿矢りさ
ただ生きている。
それだけの事を、こんなにも褒めてくれるのは、
この物語だけだと思う。
木村文乃

私が「キッチン」を読んだのは、中学生のころです。その頃の私はバスの中で駄々をこねる子供と一緒で、その時間がどんなに貴重かをわからずにいました。
42歳になった今、「キッチン」を読み返すと、あのバスのシーンが胸にしみます。
みかげが田辺くんの家で大量に料理をするシーンが特に好きで、みかげに憧れ、多分それがきっかけで料理の仕事をしようと決めたのだと思います。料理人とは言い切れずモゴモゴ言っていますが、私の料理の道は「キッチン」と民宿(子供の頃実家でやっていた)の手伝いから始まったのだと思います。

こうめどん

四年前母は病気で亡くなった。遺品整理と一人暮らしの父の安否確認も兼ねて時々実家に訪れる。つては四人家族の食事を賄っていたキッチン用品は、父と私の食事を作るにはどれもこれもが大き過ぎる。
ガタがきた扉や、年季の入った電化製品も思い出があり、よほどの事が無い限り買い換えもせずにいる。
ある日一番高い棚の奥からご飯を炊く文化鍋が出てきた。
幼い頃、夕飯の支度をする母を横で見るのが好きだった。
ご飯が炊き上がるとお焦げを一口サイズの塩握りにして食べさせてくれた。夕飯前の秘密のご馳走だ。
次に実家に行ったら、文化鍋でご飯を炊こう。上手にお焦げができたら父に塩握りをご馳走してあげよう。

botchi

その本を手にした時、私は12歳でした。
学校図書館で、司書の先生に勧められ手に取ったのが「始まり」でした。
何だろう、面白い。
おそらく、最初に読んだ「大人向け」の本だったのです。
だから新鮮さが半端なかった。
私はどっぷり吉本ばななにハマりました。
初めて自分のお小遣いで買った文庫は『キッチン』です。お小遣いの少ない子供に単行本は買えなかった。それ以降、作品が文庫化されるたびに買い集めてきた吉本作品は今も実家に保管してあります。
ああ、家を出る時に連れて来れば良かった!
ものすごく読み返したい!
今なら単行本買えるだろ、自分で買えよ!
という無粋なツッコミは優しい吉本先生と出版社様は仰らないと信じております。
言い訳をすると、実家を出てから出版された吉本作品は手元にございます。懐具合は子供の頃と大して変わりませんが。
書いてくれてありがとう。
本という形にしてくれてありがとう。

ふみ

こんな大人達が何処かにいるのなら、もう少し生きてみてもいいのかもしれない。ちょっと複雑な家庭環境にいた当時中学一年生の田舎の生意気な小娘は、真冬の布団のなかでモソモソと何度も何度もページをめくり、大人になり切っていない身体で、夜な夜な小説の世界に紛れ込み、生きる輝かしさと力をもらっていました。
人生の色々な節目を通り過ぎても、未だ手元ににあり、30年経った今でも決して色褪せないピカピカのキッチン。
ページを開くと、孤独で悲しくて、少し壊れているうんとやさしい愛しい登場人物達が、変わらず生きることの切なさと美しさを教えてくれます。
どれだけ時代を経ても、
変わらない場所。
譲れない場所。
キッチン
30周年おめでとうございます。
更なるこの先の未来へ。

live a life

母の作るお弁当が男弁当なので「もっと皆んなかわいいお弁当なんだよ!こんなのやだー!」て言った私に母は「じゃぁ明日から自分で作りなさい!」てキレられて中学1年から高校卒業するまで6年間、朝5時起きをしてキッチンに立つことになりました。毎日の献立を考えて買い物をし料理を作り片付けをする母の大変さを理解しました。喫茶店でアルバイトして私の料理の腕は上がり休みの日のお昼もチャチャっとエビピラフホワイトソースがけを家族の分まで作るようになってしまいました。「お母さん今までお弁当を作ってくれてありがとう」と言う友達が羨ましかったです。

@7575mika

私が『キッチン』と出会ったのは小学6年生のときでした。20代後半になった今でも面白かったなと本屋さんで見かける度思い出します。心にずっと暖かい気持ちで残っている大切な本…。毎回友達に勧めています。これを機会に改めて読み直します!ばなな先生大好きです!

アミーゴ

「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う」という一文に心を奪われたのは高校生の頃。とにかくみずみずしくて、切なくて悲しくて、でも救いと希望があって。家族、生と死、どん底とそこからの回復など、人生において大切なことが詰まった作品だと思う。そして、本の装丁もオシャレで素敵だった。控え目だけど、その美しさ故に本屋さんで、キッチンは目立っていた。

Tatetoukoku

中学校の国技の先生に勧められて読んだキッチンは、初めて本を読む事の楽しさを教えてくれた本でした。友達の少なかった私に、本の中の人には仲間がいると教えてくれました。寂しさの感情をばななさんはこんな風に言葉で現せられるんだと驚きました。

Milo

初めて吉本ばななさんの本に触れたのは、わたしが10歳のころでした。さくらももこさんの「ちびまる子ちゃん」の単行本を読んでいたら、おまけのページにばななさんとのエピソードが書いてあり、その「ばなな」というかわった名前に興味を持ったのでした。
母にきいたところ「キッチン」が代表作だと思う、とのことだったので、さっそく買ってきて読みました。
最初の1行目から、文字がこちらへせまってくるような印象でした。それは、ほかの本では経験したことがないもので、しかもわたしが「こういう感じの本があったらな」と探していたものでした。
キッチンという、日常的でもありすこしふしぎな雰囲気もある場所が題材になっているのも素敵だと思ったし、男の子がやさしいのも、主人公がよく考えて行動しているのも魅力に感じました。カツ丼もすごくおいしそうでした。
それから25年間、ばななさんの作品はいつもわたしの本棚に並んでいます。

きょうこ

中学生のときに父に買ってもらった文庫本を何度も何度も読みました。映画も好きでビデオも買いました。えり子さん役の橋爪功さんが最高ではしゃいでスイカを洗うシーンがなぜか泣けました。大人になってまた買って、前に読んだときには特別注意しなかった、路地に隠れて泣いて中華料理屋の匂いがするシーンにはっとしました。それからまた何年か経って、私は台湾にいて、中国語の勉強のために何度も読んだ「キッチン」を手に取りました。今度は飛行船が飛ぶシーンを新鮮な気持ちで読んだのでした。何回読んでも初めて読むような文に出会えます。きっとまた読んでまたはっとする。どこでいつどの言葉で読んでもはっとする。私にとっていつでもいつまでも新しい本です。

ムレハウス

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