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特集 開講! 読みたい授業

考える人 2017年春号

(季刊誌 年4回発売)

980円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2017/04/04

発売日 2017/04/04
JANコード 4910123050577
価格 980円(税込)
特集
開講! 読みたい授業


グラフ
1時間目【工作】
信濃八太郎 「木の本」の作り方

インタビュー
2時間目【人工知能】
新井紀子 「ダメなAI」にならないために

インタビュー
3時間目【からだ】
田中泯 細胞の一個一個に生を与えたい

インタビュー
4時間目【生物】
本川達雄 ゾウの時間、ネズミの時間、ヒトの時間

インタビュー
5時間目【芸術】
酒井邦嘉 考える脳は創造する

インタビュー
6時間目【働く】
三井淳平 好きを貫く生き方

特別企画
志村洋子 色という奇跡
母娘伝承・三代目の染織作家が紡ぐ「伝統美の世界」をたずねる

グラフィックスペシャル
アマゾン・アンデス 森の中の森 高野潤

特別企画
特別寄稿
玉村豊男 死を想う日

ルポ
シチリア、マフィアと闘う島 島村菜津

グラフィックスペシャル
ガラパゴス諸島 岩合光昭

永久保存版
「考える人」の15年

コラム
考える春 陳天璽

インタビュー
しつもん、考える人 早野龍五

連載
graphic special
都築響一 圏外写真家
田原桂一 光の意志

high thinking
細野晴臣 地球の音
養老孟司 森の残響を聴く
石川直樹 いまヒマラヤに登ること
千葉望 風流人をさがして
田中ゆかり 読み解き 方言キャラ
糸井重里 いまさらだけど、マンガっていいなぁ。
池澤夏樹 科学する心
向井万起男のどんな本、こんな本
苅部直 「文明」との遭遇
マイケル・エメリック 行ったり来たり
宮沢章夫 牛でいきましょう

plain living
三宮麻由子 暮らしのサウンドスケイプ
村井理子 村井さんちの生活
是枝裕和 空の虫かご
近藤雄生 ここがぼくらのホームタウン

この号の誌面

編集部の手帖

 季刊誌「考える人」は二〇〇二年七月に、plain living & high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)を編集理念に掲げて創刊されました。情報とモノが溢れかえる日常のなかで、本質を見失わないものの考え方、“個”を取り戻す暮らしのありようを提案する独自の生活文化総合誌として、知の領域を新たに広げる試みを続けてまいりました。
 創刊からちょうど十五年が経過し、今号が通巻六十号にあたります。同時に、これが最終号となります。誠に残念なご報告をしなければなりません。
 昨年四月には「創刊十五年目の、新たなる一歩」としてリニューアルを行いました。定価をそれまでの千四百四十円から九百八十円に思い切って値下げし、全体の頁数をスリム化しました。雑誌はコミュニティ・ビジネスの一つであると位置づけ、「考える人」が創り出す空間により多くの人が参加するには入場料は安いに越したことはない、そのためのギリギリの努力をします、と宣言しました。これまでの愛読者にも、まだ見ぬこれからの読者にも、「考える人」の誌面を通じて、さらに「考える」きっかけとの出会い、知の対話を楽しんでいただきたいと願いました。そして、「Webでも考える人」を立ち上げ、ライブ・イベントをより積極的に開催していく方針を打ち出しました。従来よりも窓を大きく開け放っていきたいと考えたからです。
 おかげさまで、その甲斐あって前年に比べて実売数も伸び、当初の予想を大きく上回る定期購読の新規申し込みを頂戴しました。ウェブ版も筆者、関係者の多大なご協力を得て、順調に週日毎日の更新を継続しております。各種イベントにも手応えを感じ、そのつど新しい読者と出会う喜びを感じてまいりました。
 しかしながら、時代の趨勢として雑誌市場は加速度的に縮小を続けており、こうした厳しい環境の中、将来的に「季刊雑誌として維持することが困難」「創刊から十五年の実績をもって一定の役割を終えた」という社の判断のもと、「休刊」の決定が下されました。今後はウェブ版を存続し、そこで新たな可能性を摸索する方針です。
     *
 これまでご愛読下さいました読者の皆様には、まずもって厚く御礼申し上げます。「考える人」にとって幸せだったのは、温かく雑誌を見守る多くの根強いファンに恵まれていたことだと思います。「情報やモノがあふれる時代だからこそ、本質的なことをじっくり考えたいと思う読者がいるのではないか」――創刊当時、初代編集長の松家仁之さんが語っています。そういう読者に向けて、「地に足をつけて物事を考えるにはどうしたらいいか、日常生活を見直してみよう、という呼びかけ」をしたい、と(毎日新聞、二〇〇二年七月九日夕刊)。
 まさに、ここに想定された読者に支えられながら、季刊という落ち着いたサイクルで、雑誌を維持・発展させることができました。plain living & high thinkingのコンセプトをこれまでいささかも揺るがすことなく継承できたのは、編集の現場を取り巻くゆるやかな共感の広がりを、私たちが実感できたからに他なりません。
 多くの筆者の方々については申し上げるまでもありません。多岐にわたる幅広いジャンルの皆様に、力のこもった原稿をお寄せいただき、ここから多くの魅力ある書籍が誕生しました。良書ではあるが売れない、と嘆くのではなく、多くの人に親しまれる良書が生まれる喜びをともにすることができました。
 写真、イラストなどビジュアル面でお力添えいただいた皆様にも感謝申し上げます。ビジュアル雑誌が後退していく時代において、皆さんと一緒にお仕事できたことは本当に貴重な経験でした。とりわけ表紙をイラストに変えたこの一年、毎号どなたに依頼するかを考える緊張感は、たまらない魅力でした。最後の表紙は、波多野光さんに春にふさわしいイラストを描いていただきました。
 創刊以来、雑誌全体のデザインをお願いしてきた島田隆さんには、この間、簡単には言いつくせないお力添えをいただきました。一七二ページからの「総目次」を眺めながら、一号一号に心血を注いでいただいたことを痛感します。感謝の言葉もありません。
 休刊のニュースが流れた後、「どうしてですか?」「もったいないじゃないですか」とお電話下さった書店主の皆様をはじめ、日頃、店頭で丁寧に弊誌をケアして下さった書店員の方々には、この号をもって退場していくことをお許し下さい。これまでどうもありがとうございました。
 また創刊以来、単独スポンサーとしてご支援いただきました株式会社ファーストリテイリングには、一貫したご支援と理想的なスポンサーシップに対して、厚く御礼申し上げます。ユニクロの商品広告ではなく、製品づくりに関わる人たちの肉声を伝えるという広告展開は、やがてユニクロのCSR活動(社会貢献活動)を紹介するページとして定着しました。それに対して、二〇一五年、第五十八回日本雑誌広告賞金賞(タイアップ広告部門)が授与されたことは、私たちにとっても望外の喜びでした。
 最後になりますが、編集長としてはこの雑誌に関わってくれたすべてのスタッフにも感謝を述べたいと思います。新潮社という百年余の歴史を持つ基盤の上で、多くの人たちの協力によって、ここまで号を重ねることができました。これほどの幸運はありません。
 なお、弊誌を発表舞台としてきました小林秀雄賞は、次回から月刊誌「新潮」に移管されます。また、河合隼雄物語賞・学芸賞の発表も同様になります。
 今号の内容については詳しい紹介ができませんでしたが、「考える人」らしいフィナーレであるようにと、ご登場の皆様には格別のご高配をたまわりました。限られた時間内で、いろいろ無理なお願いをしたにもかかわらず、快くお聞き届け下さいました。厚く御礼申し上げます。
「考える人」の幕は引かれますが、この雑誌が日本の読書界、いや日本文化全体に果たした役割は決して小さくないと自負しております。十五年、六十号の記憶とともに、引き続き、誰かが、どこかで、この雑誌が蒔いた種子を芽生えさせ、必ずや根づかせてくれるものと信じております。
 存続するウェブサイト「Webでも考える人」は、「新潮」副編集長の松村正樹が引き継ぎます。これまでご愛読下さった皆様の引き続きのご指導、ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
     *
 なお、私事になりますが、この最終号が発売になる前に、私は新潮社を退社いたします。二〇一〇年七月からこの職にあって、かけがえのない時間を過ごすことができました。お世話になったすべての方々に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。 (河野通和)

次号予告

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

考える人とは?

産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースは plain living, high thinking(=シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)という言葉を書き遺しました。工業化と都市化の急速な進展のなかで、イギリス人が本来持っていたはずの plain living, high thinking を人々が失いつつあるのではないか、とワーズワースは感じ、嘆いたのです。

 ちょうどその頃、ロンドンに留学していた夏目漱石も、イギリス人が環境汚染に悩まされ、都市生活がもたらす不安とストレスにさらされる様子を見て、そこに日本人の未来像を予感していました。

 私たちの暮らしも生き方も、産業革命後の世界の上に成り立っています。さらに、IT革命という新しい大きな変革の波の上に私たちは浮遊しています。漱石の予感を上回る変化のなかで、私たちは生きているのです。

 暮らしにはモノも情報も溢れている。私たちが日々のなかで「考えている」のは、ほんとうに自分が考えたことなのか、疑い始めるとなんだか怪しくなってくることもあります。溢れる情報の何を選択し、何を捨てるのか。暮らしに大切なこと、不要なモノをどう判断すればいいのか。大きな変革の波は、私たちの生活に、頭のなかに、じわじわとしみこみ始めています。その大きな波のなかで自分の船をどのように漕ぎ出せばいいのか、途方に暮れることも少なくありません。

 ものの考え方と暮らしはウラとオモテのようなもの。暮らしぶり、生き方と無縁の「ものの考え方」はないはずですし、「ものの考え方」はその人の日常から切り離すことはできないはずです。plain living があってこその high thinking であり、high thinking あってこその plain living なのです。

 私たちは今ふたたび、ワーズワースの言葉を頼りにして、自分の頭で考える力を問い、シンプルな暮らしを考えるべき時間と場所へたどり着いたのかもしれません。

 たまにはテレビを消して、身の回りも整理して、一人の「わたし」に戻り、自分の言葉と生活を取り戻したい。溢れるモノや情報をいったんせき止めて、ひと息つきたい。思考する頭に新鮮な空気を送り込みたい。そんなあなたのために用意する、小ぶりの静かな部屋に季刊誌「考える人」はなりたい、と考えています。

創刊編集長 松家仁之(まついえ・まさし)

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞

考える人

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