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[尾崎 豊『NOTES』刊行記念特別寄稿]須藤 晃/「卒業」の輪郭──尾崎豊について

波 2012年5月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/04/27

発売日 2012/04/27
JANコード 4910068230522
定価 105円(税込)

【高橋源一郎『さよならクリストファー・ロビン』刊行記念インタビュー】
高橋源一郎/ぼくが『さよならクリストファー・ロビン』を書いたわけ

曽野綾子『堕落と文学―作家の日常、私の仕事場―』
曽野綾子/金色の光を放つ明るみの中で

西村賢太『西村賢太対話集』
豊崎由美/私小説の伝統芸をそのまま生きる

西村賢太編『藤澤清造短篇集』(新潮文庫)
西村賢太/新発見作も付して

古川日出男『ドッグマザー』
陣野俊史/京都、西の「聖家族」

[尾崎 豊『NOTES』刊行記念特別寄稿]
須藤 晃/「卒業」の輪郭──尾崎豊について


【『あした―慶次郎縁側日記―』刊行記念インタビュー】
北原亞以子/隣人の悩みを描き続けて

トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(トマス・ピンチョン全小説)
池上冬樹/探偵が探り当てた「欠陥」

笹沢 信『ひさし伝』
村田雅幸/「伝」という言葉に込められた思い

鴻巣友季子『熟成する物語たち』
野崎 歓/ワインと文学の華麗なる饗宴

仁木英之『鋼の魂―僕僕先生―』
福田和代/今回は、中華版インディ・ジョーンズ!

長崎尚志『闇の伴走者―醍醐真司の猟奇事件ファイル―』
有栖川有栖/漫画にも描けない面白さ
【保阪正康『日本の原爆―その開発と挫折の道程―』刊行記念対談】
吉岡 斉×保阪正康/原爆製造計画と原子力発電の狭間

児玉 清『すべては今日から』
佐伯泰英/児玉清さんの「遺言」

牧山圭男『白洲家の日々―娘婿が見た次郎と正子―』
青柳恵介/台風の目に入る

福岡伸一『せいめいのはなし』
鵜飼哲夫/グルグル回ること
【インタビュー『大山倍達の遺言』刊行にあたって】
小島一志・塚本佳子/極真会館、大分裂騒動の真相

佐藤卓己『天下無敵のメディア人間―喧嘩ジャーナリスト・野依秀市―』(新潮選書)
松本健一/メディア人間の出現

烏賀陽弘道『報道の脳死』(新潮新書)
烏賀陽弘道/もういい加減にしてくれ

コラム
考える人─東北の多様な魅力を
三橋曉の海外エンタ三つ巴

連載
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第26回
【短期集中連載エッセイ】海堂 尊/キューバ・ラブワゴン 最終回
斎藤明美/高峰秀子の言葉 第10回
蓮池 薫/拉致と決断 第25回
中村うさぎ×池谷裕二/オトナのための脳科学 第8回
桜木紫乃/モノトーン 第3回
永田和宏/河野裕子と私 歌と闘病の十年 最終回
三山 喬/トスキナの唄 流浪のキネマ屋・古海卓二伝 第3回
椎名 誠/ぼくがいま、死について思うこと 第9回
津村節子/時のなごり 第8回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第5回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は、今からちょうど二十年前の一九九二年四月二十五日に夭折したミュージシャンの尾崎豊です。先月号のこの欄でもご紹介したように、彼の創作の過程が綴られた自筆のノートが遺されており、それを活字化した『NOTES―僕を知らない僕 1981-1992―』がこのほど刊行されました。ノートの背後に写っているのはデビューアルバム「十七歳の地図」のジャケットですが、アマチュア時代の十六歳頃から書き始められたノートの数は五十数冊。そこにあるのは本の監修を行った須藤晃氏が言うように「言葉の噴射」です。強烈な孤独感や渇望感が伝わってくる言葉が溢れ出るように書き連ねられており、その一部は後にヒット曲の歌詞として世に出ました。「僕を知らない僕」は繰り返し書かれたフレーズで、死後に発表されたアルバムに収録されている「太陽の瞳」という曲に織り込まれています。
◇太平洋戦争に従軍した軍医たちの軌跡を描く帚木蓬生氏の連作小説『蠅の帝国―軍医たちの黙示録―』『蛍の航跡―軍医たちの黙示録―』が、「第一回日本医療小説大賞」を受賞しました。この賞は「医療に対する国民の関心を喚起する」ために日本医師会の主催で今年から設けられた文学賞で、選考委員は渡辺淳一、篠田節子、久間十義の三氏。受賞作は医療という新たな観点から苛酷な戦場を描いた戦記小説の労作です。
◇増田俊也氏の『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』が第四十三回大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれました。一人の格闘家の生涯を克明にたどった七百頁を超える大部な作品ですが、内容は「業」とも呼ぶべき凄まじい人間の情念が描き出されており、まさに巻を措く能わざる面白さです。発売以来、格闘技の世界に関心がなかったという読者からも絶賛の声が寄せられ、版を重ね続けています。ノンフィクションという文芸がもつ魅力を再認識させる傑作がこのように顕彰されたことは、版元としても大きな喜びです。

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。