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[池澤夏樹『双頭の船』刊行記念特集]

波 2013年3月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/02/27

発売日 2013/02/27
JANコード 4910068230331
定価 105円(税込)

【川上弘美『なめらかで熱くて甘苦しくて』刊行記念インタビュー】
川上弘美/生きること、死ぬこと、セックスのこと

佐伯一麦『還れぬ家』
津島佑子/311の「段差」から

坂東眞砂子『隠された刻―Hidden Times―』
坂東眞砂子/博物館の男

[池澤夏樹『双頭の船』刊行記念特集]
いしいしんじ/遠い霧笛
池澤夏樹/小さな船はなぜ育ったか

熊谷達也『烈風のレクイエム』
土方正志/「あの日からの東北」への序曲

【葉室 麟『春風伝』刊行記念インタビュー】
葉室 麟/高杉晋作という春風

真山 仁『黙示』
西上心太/《沈黙の代償》は高くつく

嶽本野ばら『米朝快談』
松尾貴史/この『米朝快談』は傑作です。

吉野万理子『連れ猫』
北上次郎/主役はあくまで、二つの孤独

[誉田哲也『ドンナ ビアンカ』刊行記念特集]
吉田伸子/無骨な純情が、胸をしめつける
【インタビュー】誉田哲也/警察小説と恋愛小説の邂逅

神田 茜『ふたり』
藤田香織/「私」が「私」であるために

高尾長良『肉骨茶』
村田沙耶香/遠吼えが貫く未来

深沢 潮『ハンサラン 愛する人びと』
白石一文/小さな喜びのありか

杉山隆男『兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―』
杉山隆男/あの震災で隊員たちから託されたもの

東条健一『リカと3つのルール―自閉症の少女がことばを話すまで―』
神田昌典/現代の予言の書となる一冊

岩波 明『精神科医が読み解く名作の中の病』
田中和生/「病」の記録としての文学史

鍵井靖章『ダンゴウオ―海の底から見た震災と再生―』
鍵井靖章/魚の目で見た津波の海の再生物語

隈 研吾『建築家、走る』
清野由美/現在進行形の語りおろし文明論

松山ケンイチ『敗者』
川上未映子/画面には映りようもないものを

升本喜年『小津も絹代も寅さんも―城戸四郎のキネマの天地―』
迫本淳一/明治の映画人・城戸四郎の闘い

桑田真澄 平田竹男『新・野球を学問する』(新潮文庫)
平田竹男/桑田真澄の「パワーポイント」

ベルンハルト・シュリンク『夏の嘘』(新潮クレスト・ブックス)
山田太一/あなどれない人生

【訳し下ろし短篇】ドミトリイ・バーキン(秋草俊一郎訳)/出身国

今泉宜子『明治神宮―「伝統」を創った大プロジェクト―』(新潮選書)
陣内秀信/原宿、外苑前という人気スポットに潜むトポスの魅力

小谷野 敦『日本人のための世界史入門』(新潮新書)
小谷野 敦/「勉強になって面白い」の何が悪いのか

吉川英治『三国志』『宮本武蔵』(新潮文庫)
吉川英明/「宮本武蔵」と「三国志」

コラム
三橋曉の海外エンタ三つ巴

連載
桜木紫乃/モノトーン 第13回
梨木香歩/冬虫夏草 続・家守綺譚 第10回
三山 喬/トスキナの唄 流浪のキネマ屋・古海卓二伝 最終回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第36回
斎藤明美/高峰秀子の言葉 第20回
江 弘毅/有次と庖丁 第4回
鹿島田真希/少女のための秘密の聖書 第6回
吉田篤弘/ソラシド 第8回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第15回
津村節子/時のなごり 第18回

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は葉室麟さん。最新刊の『春風伝』は、高杉晋作の生涯を雄渾の筆で描いた歴史小説の名品です。今作にかけた思いは本文のインタビューで存分に語られていますが、揮毫していただいたのは下関市にある晋作の顕彰碑に、伊藤博文が書き記した碑文の冒頭です。葉室さんがパソコンに向われている写真は、久留米市のご自宅から程近い石橋文化センターの庭園の一角で撮影しました。普段は書斎で執筆するのが常の葉室さんですが、好天の日に気が向くと資料とパソコンを抱えて外出し、このベンチで文章を紡ぐのだそうです。梅や薔薇など四季折々の花の香が漂う中で激動の時代を生きた男たちを描く――春風駘蕩の形容が似合う葉室さんならではの一齣です。
◇安岡章太郎さんが逝去されました。小誌にもこれまで書評、対談、インタビュー、表紙の筆蹟など様々な形で言葉を寄せていただきましたが、その中の一本の随筆に以下のような文章があります。「私の言葉の中には、土佐訛りや、千葉の田舎訛りや、津軽弁の訛りまで、種々雑多な方言の訛りが少しずつ混り合って入っているのを、私は知らずにしゃべっていた……そんなことが分ってくるにつれて、自分が何となしに周りから浮き上ってくるような違和感と孤独を覚えるようになった……自分があやふやな人間であるという自己認識、これが私の文学を始めたもともとの動機であるような気がするのです」(一九九〇年八月号「言葉の出来かた」)。自らの精神の故郷や生の根源を探り求めるような作品を書き続けられた安岡さん。心よりご冥福をお祈りいたします。
◇今月号で三山喬さん『トスキナの唄』の連載が終了します。ご愛読、有難うございました。いずれ小社より単行本として刊行される予定です。次号からは嵐山光三郎さん「水師芭蕉(仮題)」、池上彰さん「超訳日本国憲法」の二本の新連載がスタートします。どうぞご期待ください。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。