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【百田尚樹『フォルトゥナの瞳』刊行記念 書店員座談会】新井見枝香×狩野大樹×今井麻夕美/読み終えた後に、残るもの

波 2014年10月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/09/27

発売日 2014/09/27
JANコード 4910068231048
定価 102円(税込)

【『私家本 椿説弓張月』刊行記念インタビュー】
平岩弓枝/すべては人の心を描くため

長谷川郁夫『吉田健一』
青山真治/マレビトの余生

田野武裕『夢見の丘』
南木佳士/ひとの一生と永遠の相

イアン・マキューアン『甘美なる作戦』(新潮クレスト・ブックス)
松田青子/陶然とするほど甘い味

【百田尚樹『フォルトゥナの瞳』刊行記念 書店員座談会】
新井見枝香×狩野大樹×今井麻夕美/読み終えた後に、残るもの

重松 清『一人っ子同盟』
吉田伸子/絶妙すぎる「語りの塩梅」

嶽本野ばら『傲慢な婚活』
嶽本野ばら/主人公は100%僕――金がないから結婚しよう!

梨木香歩『丹生都比売 梨木香歩作品集』
瀧 晴巳/懐しいあの場所へ。

本多孝好『魔術師の視線』
三浦天紗子/信を置くことができるか

新城カズマ『島津戦記』
細谷正充/鬼才が創造した奇想横溢の戦国史

乾 緑郎『機巧のイヴ』
大森 望/半村良を超えた、時代SFの金字塔

【〈トマス・ピンチョン全小説〉『重力の虹』刊行記念インタビュー】
佐藤良明/永遠の虹――翻訳を終えて

村上春樹/編訳『セロニアス・モンクのいた風景』
大西順子/友達にはなりたくない、ワン・アンド・オンリーの人

朝香 式『マンガ肉と僕』
藤田香織/溢れ出す「旨味」にリピート確定!

はるな檸檬『れもん、よむもん!』
柚木麻子/最高に贅沢な読書体験記

雨宮まみ はるな檸檬『タカラヅカ・ハンドブック』
中井美穂/分析力光る、タカラヅカ星への案内書

池田清彦『世間のカラクリ』
池田清彦/威勢のよいスローガンの下で行われていること

京の町家 暮らしの意匠会議編『京都西陣 イケズで明るい交際術』
井上章一/「少々イケズな書評ですが……。」

早野龍五 糸井重里『知ろうとすること。』(新潮文庫)
早野龍五/ゼロからプラスを生むために

「山崎豊子全集」第二期(全四巻)『運命の人』『約束の海』
矢代新一郎/「山崎文学」への旅が、今、始まる!

上田正昭『日本古代史をいかに学ぶか』(新潮選書)
白江恒夫/巨視・微視兼備の眼差しとつながりの古代史

鈴木孝夫『日本の感性が世界を変える―言語生態学的文明論―』(新潮選書)
山田孝男/日本人の世界観が人類の破局を食い止める

阿古智子『貧者を喰らう国―中国格差社会からの警告【増補新版】―』(新潮選書)
津上俊哉/中国の不条理を「内部」から描く

岩波 明『心の病が職場を潰す』(新潮新書)
岩波 明/心の病から「労働」の本質を考える

[とんぼの本 フェア]
【対談】三浦しをん×山口 晃/わたしの気になるとんぼの本

コラム
考える人―音楽の原点を考える
三橋曉の海外エンタ三つ巴

小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞 決定発表

連載
嵐山光三郎/芭蕉という修羅 第19回
末盛千枝子/父と母の娘 第7回
藤野千夜/D菩薩峠漫研夏合宿 第13回
津村記久子/やりなおし世界文学 第5回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第55回
石原千秋/漱石と日本の近代 第16回
木皿 泉/カゲロボ日記 第6回
池上 彰/超訳 日本国憲法 第19回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第14回
森 まゆみ/子規の音 第9回
久間十義/デス・エンジェル 第15回
津村節子/時のなごり 第37回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は、百田尚樹さんです。新刊『フォルトゥナの瞳』は、『夢を売る男』(太田出版)以来、およそ一年半ぶりに著者が満を持して放つ長篇小説です。主人公の木山慎一郎は二十八歳の孤独な男性で、友人も恋人もなく、勤務する自動車工場での「車磨き」の腕は確かなものの、同僚に金をせびられるような日々を送っています。そんな彼がある日、自らに潜む思いもよらぬ異能に気づきます。出会った人の運命を否応もなく感知してしまう説明不能な力。それは彼自身の人生をも激変させていく、幸福と危険の諸刃の剣でした。他人の運命を変えることは許されるのか。その行為の代償とは――抜群のリーダビリティを帯びた文章で物語に瞬時に引き込まれ、時を忘れて読書の秋を堪能できること請け合いの快作です。作品の主舞台は川崎市で、写真は慎一郎に決定的な出来事をもたらすJR川崎―蒲田間を走行中の電車を撮影しました。なお、刊行記念の著者サイン会が以下の日程で行われますので、ぜひご参加ください。十月三日(金)紀伊國屋書店梅田本店/六日(月)三省堂書店有楽町店/七日(火)紀伊國屋書店新宿本店
◇八月に刊行した新潮新書『日本の風俗嬢』が好評で、たちまち六刷に到達しました。全国に一万三千軒と推定される性風俗店の経営の実態から、そこに勤務する約三十五万人の女性たちの背景と生活ぶりまでをつぶさにルポした類似本がありそうでない一冊です。著者の中村淳彦氏は性風俗の取材を長年行ってきた一方で、近年は老人介護の現場でも活動しているノンフィクションライターです。本書の中にも「なぜ介護職員は風俗に転職するのか」という章を設けて、老人介護の苛酷な労働環境のために女性たちが風俗業界に流れ込んでいく現状を赤裸々に描き出しています。カラダを売る女性たちは社会を敏感に映す鏡である、と著者は語っていますが、志望者が殺到しているという風俗嬢の世界を通して日本社会の病巣が浮き彫りにされています。

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。