茂木 梨木さんがアンと出会ったのは何歳ぐらいのときですか? 梨木 十五、六歳ぐらいでしょうか。 茂木 きっかけは何で。 梨木 小学校のときも機会はあったのですが、アンのあのハイテンションが自分では受けとめきれない感じがして、これはちょっとペンディングと思い、普通の本好きが辿るような読書コースに入っていきました。高校生になるころ本当に疲れてしまった時期があり、そのときに読み始めたのが始まりです。 茂木 第一印象はどうでしたか。 梨木 それまでも、ちらちらとは見ていたんです。だからこれが自分にどういう影響を与えるだろうかというのは、うすうす分かっていました。 茂木 僕が初めて『赤毛のアン』を読んだのは、小学校五年か六年のときでした。 梨木 それは早いですね。 茂木 読み出したらとまらなくなって、シリーズ全部を繰り返し読みました。それで中学校一年ぐらいのときには、頭の中が完全にアンに染まっていたんです。僕にとって異文化というか西洋文化との、最初の出会いでした。で、それからは非合法活動になるわけですよ。恥ずかしいから友達には絶対に悟られないようにしようと……(笑)。だって、中学生男子にとって、そういうものに興味があると悟られるのはかなりまずい。でも心の中では、校舎脇のあの森はオーチャード・スロープで……(笑)。
高校生のときに語学研修でカナダに行ったんです。お店にアンという名札をつけている人がいて、今考えると本当に恥ずかしいんですが、“Your name does not have a spell of e.”とか何とか話しかけて――。そのとき買ったのが“Anne of Green Gables”で、また一気呵成に読みました。どきどきして、胸の中に蝶が一匹飛んでいるようでした。 梨木 素敵な表現ですね。