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老後に必要なのは、感謝の気持ちとリアリズム


 今年も9月17日敬老の日に「渡る世間は鬼ばかり」三時間スペシャルが放送されます。
 7月上旬まで三カ月間ほどかけて世界一周旅行にお出かけだった橋田壽賀子さん。今回の脚本は客船「飛鳥II」のなかで書かれたとのことです。
 九十三歳にして現役脚本家の心身の健康の秘訣は、「わずらわしいことはウソをついてでも遠ざける」「年寄りは外ではあえて弱々しくふるまう」など、決して見栄をはらないこと。
 充実した、心穏やかな老後をおくる橋田さんの人生は波瀾万丈。戦争に奪われた青春、松竹に女性初の脚本家として就職するも芽が出ず、事実上のリストラに遭い退職。四十過ぎて結婚したものの望んだ子どもは恵まれず、四歳下の夫に癌で先立たれ、天涯孤独となって三十年。
 努力と苦労の末に辿りついた、徹底した現実主義にもとづく、人に期待せず、誰も恨まない老後。そのために一番大切なのは、何につけても、「させていただいた」と思う、感謝の気持ちといいます。
 1990年に連続ドラマとしてスタートした「渡鬼」は二十八周年。最初の脚本は、財団設立のための借金のカタだったなど、驚きのエピソードも満載です。

波 2018年9月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

橋田壽賀子ハシダ・スガコ

1925(大正14)年、京城(現在のソウル)生れ。日本女子大学卒業後、早稲田大学進学。在学中に松竹の入社試験に合格し、中退。脚本部に10年勤めた後、1959(昭和34)年よりフリーの脚本家となる。1966年、TBSプロデューサーの岩崎嘉一氏と結婚。1989(平成元)年、死別。「女たちの忠臣蔵」「おんな太閤記」「春日局」「いのち」「おしん」「99年の愛〜JAPANESE AMERICANS〜」「渡る世間は鬼ばかり」など多くのドラマを手がける。NHK放送文化賞、菊池寛賞、勲三等瑞宝章などを受賞・受勲。1992年橋田文化財団設立、理事長に就任。2015年、脚本家として初めて文化功労者に選出される。著書に『旅といっしょに生きてきた』(祥伝社)『渡る老後に鬼はなし』(朝日新書)『安楽死で死なせて下さい』(文春新書)などがある。

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