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受賞作品
「ミサキへ」 榊邦彦(『100万分の1の恋人』に改題)


受賞のことば

言葉を紡ぐということ 『ミサキへ』のストーリー・登場人物・団体は、いずれもフィクションであるが、ハンチントン病という病気は実在し、現代医学でも不治の難病である。
この難病の発病のリスクを背負った女性を題材に、小説を書くことについて、執筆前・執筆中、そして執筆後も、自分の中で、いくつもの煩悶があった。
自分のように、ハンチントン病と、まったく関係のない立場のものが、単に「書きたい」という動機で、この病気に苦しむ人を題材に小説を書くなどということは、ひどく不遜なことなのではないか。実際に、この病気に苦しむ方々にとっては、モデルにされること自体、とても不愉快で、許しがたいことなのではないか。自己嫌悪にも近い、疑問や悩みが、いくつもいくつも自分の中で、巡り続けた。
その過程で、自分が思った一つ目の覚悟は、
「病気を背景にしてはいけない」
ということだった。
病気について、真摯にまっすぐに見つめることからしか、この小説を書くことは始まらないと思った。軽々しい気持ちで、この病気を作品に描くことは、決して許されることではない。



選評

浅田次郎

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