新潮エンターテインメント大賞



第二回新潮エンターテインメント大賞




受賞作品


「ミサキへ」 榊邦彦
(『100万分の1の恋人』に改題)



受賞のことば


言葉を紡ぐということ
『ミサキへ』のストーリー・登場人物・団体は、いずれもフィクションであるが、ハンチントン病という病気は実在し、現代医学でも不治の難病である。

 この難病の発病のリスクを背負った女性を題材に、小説を書くことについて、執筆前・執筆中、そして執筆後も、自分の中で、いくつもの煩悶があった。
 自分のように、ハンチントン病と、まったく関係のない立場のものが、単に「書きたい」という動機で、この病気に苦しむ人を題材に小説を書くなどということは、ひどく不遜なことなのではないか。実際に、この病気に苦しむ方々にとっては、モデルにされること自体、とても不愉快で、許しがたいことなのではないか。自己嫌悪にも近い、疑問や悩みが、いくつもいくつも自分の中で、巡り続けた。

 その過程で、自分が思った一つ目の覚悟は、
「病気を背景にしてはいけない」
 ということだった。
 病気について、真摯にまっすぐに見つめることからしか、この小説を書くことは始まらないと思った。軽々しい気持ちで、この病気を作品に描くことは、決して許されることではない。


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選評


浅田次郎



候補作品


ミサキへ

※「100万分の1の恋人」に改題
榊邦彦
夢屋 岡崎多加志
元禄仇討ち異聞 神室磐司
金沢城下才川有情 早瀬徹

選考委員


浅田次郎 アサダ・ジロウ

1951(昭和26)年、東京生れ。1995(平成7)年『地下鉄(メトロ)に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2007年『お腹召しませ』で司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞した。『蒼穹の昴』『椿山課長の七日間』『薔薇盗人』『憑神』『夕映え天使』など多彩な作品があり、幅広い読者を獲得している。




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